写真や動画、イラスト素材の取引プラットフォームを運営するピクスタが、自治体などと提携して新しい働き方を提案する地方創生事業を本格化させている。10月に鹿児島県奄美市と連携協定を締結、同市内での写真撮影を支援し、商用ストック素材としての販売を容易にする取り組みを進めている。
ピクスタが鹿児島県奄美市で開催した撮影ワークショップの参加者(同社提供)
ピクスタは登録クリエーターが撮影または制作した素材をオンライン上で販売する。クリエーターはプロ・アマ問わないが、素材は広告やニュースサイト、企業のプレゼン資料など商用利用されるため、撮影場所の許可を申請する必要があり、初心者には参入ハードルの一つとなっていた。奄美市との提携では、市が管理する観光スポットなどをあらかじめ撮影許可済みとすることで、クリエーターを支援する。
ピクスタではこれまでにも、地方との連携事業で撮影ワークショップなどを開催してきたが、今回のように自治体が継続的に撮影支援に乗り出すのは初めて。同社で地方創生推進事業を担当する滝紀子さんは「自治体側から撮影許可を出してくれたのは大きい。今後、他の地方にもこういった動きが広がってくれれば」と期待を込める。
写真素材では、「富士山」や「京都」といった人気のテーマに撮影者が集中する傾向があるため、幅広い地域の写真を集め素材の網羅性を高めたいとの同社の狙いもある。とくに奄美は世界自然遺産への登録が近いと目され、写真素材の需要が急増する可能性がある。
一方、奄美市は「フリーランスが最も働きやすい島化計画」と銘打って、情報通信技術を活用した新しい働き方支援に取り組んでおり、ピクスタとの提携はその一環。仕事の機会や働きがいを提供し同市への移住や定住を促すほか、撮影による地域の魅力再発見や撮影旅行での観光誘致につなげたい考え。10月に開かれた撮影セミナーには幅広い年齢層の市民が集まった。
同市が撮影を事前許可するのは「マングローブパーク」や「奄美市本場奄美大島紬(つむぎ)泥染公園」など17カ所で、今後は地元の商店や飲食店なども含め拡大していく予定。撮影者は同市ウェブサイトからプロパティーリリース(権利保有者が撮影を許可する同意書)をダウンロードすることができる。
来年3月にはピクスタとクラブツーリズムの共催で奄美大島でのストックフォト撮影旅行が企画されている。
「フジサンケイビジネスアイ」