サーキュレーション 代表取締役 久保田雅俊氏
従来型の雇用では、東京圏の人材と地方の中小企業を結びつけることは難しい。「大手企業に勤める35歳の男性。年収1200万円。子供は2人。武蔵小杉に5500万円のマンションを所有」。こんなステータスの人が、地方に移住して働くだろうか?
地方企業を元気にするためには、優秀な人材が必要だ。もちろん地元の人材を雇用することも必要だが、それだけでは足りない。
可能性があるのは、大企業で重要ポジションを務め、定年退職したエグゼクティブ・シニア。または自身のスキル・経験を生かして複数企業に貢献する個人事業主や経営者。そして、ライフステージの変化の中でなかなか実力を生かしきれずにいる女性。こうした方々に多様な働き方を提案し、東京圏と地方の間で人材を循環させていくことが大切だ。
シニアを経営顧問として迎え入れる動きは以前からあり、それを主軸にした人材ビジネスを展開する企業も存在している。当社では、ここに高い職能を有する個人事業主や経営者、女性プロフェッショナル人材を加えて、新しい働き方を提案している。
私たちの事業を簡単に説明するなら、経営強化を考える地方の企業に対して「プロフェッショナル人材の経験や知見をシェアする」ということ。その地方企業に転職してフルタイムで働くことはできないので、経験や知見をシェアする形で、「月に1週間だけ来てもらう」といったような働き方で貢献してもらっている。自身の力を発揮できる場が広がるため、この働き方はプロフェッショナル人材にとっても魅力的だ。
このマッチングを実現するために、私たちはプロフェッショナル人材の経験や知見を、独自の指標で定義している。さまざまな分野のプロフェッショナルが、その経験と知見を必要とする複数の企業のプロジェクトで働く。そうして、同時に3社の企業で働く。こうした新しい働き方を実現し、提供している。
昨今ではAI(人工知能)やロボットなどのテクノロジーの進化によって、人間の仕事がどんどん減っていくのではないかといわれている。しかし、物事を決断して責任を取るためには、人の頭の中にある経験や知見が必要不可欠だ。この部分はロボットには継承できないし、どんなに検索エンジンが発達しても人の頭の中までは探せない。私たちは「世界中の経験と知見を循環させる」事業で、このニーズに応えている。
◇【プロフィル】
久保田雅俊くぼた・まさとし
サーキュレーション代表取締役。1982年生まれ。総合人材サービス大手を経て2014年にサーキュレーションを設立。設立2年半で、国内最大規模となる1万人の独立専門家ネットワークを構築、経営支援実績1000件を突破。15年、「北尾賞」を受賞。オープン・イノベーションコンサルタントとして講演多数。