中学校の卓球部を訪れ、アスリートストーリーズのサービス内容について説明する新井田徹さん(右端)
携帯電話やスマートフォン向けのコンテンツ配信などを手掛けるインフォコムが、トップアスリートやプロを目指す選手向けの支援サービス「アスリートストーリーズ」を開発し、試用版の提供を始めた。選手が無料のアプリケーションを使って練習内容などをデータ化して競技力向上につなげる一方、蓄積された膨大なビッグデータを企業に提供することで料金を得るなどのビジネスモデルを構築する。2020年東京五輪をめどに、同サービスで売上高40億円、ユーザー数100万人を目指す。
サービスの対象は、プロを目指す選手や五輪候補選手のほか、強豪校・一般のクラブチームに所属する選手など。試用版では、選手が練習内容を記録したり、自己の体調をグラフで表示できたりするほか、指導者が選手の状況をデータで把握したり、練習などのスケジュール管理ができたりする。中長期的には、コミュニティーやアルバム、心拍数などを計測するウエアラブルなどのアプリ機能を増やす。現在、サッカー、水泳、陸上、卓球、体操の5競技に対応しており、1、2年かけて40競技まで広げる予定だ。
このサービスで構築するビジネスモデルは主に3つあり、同社が最も期待するのは「就業支援」だ。
同社は、体育会系学生の割合は全学生の8%程度で年間約5万人いると分析。ただ、体育会系学生は一般学生に比べて就職活動に割く時間が短いことから、企業側との接触が少ないことや、学生の情報収集に人的コストがかかることなどが課題だった。そこで、現役時代に蓄積された選手の練習内容などの膨大なデータから、ビジネスに必要なスキルがあるかどうかを分析し、企業の採用活動に役立ててもらう。
このほか、選手にスポーツ商品を提供し、商品評価の「生の声」をコミュニティーに書き込んでもらい、メーカーの開発にフィードバックする。ユーザーごとに興味のありそうな情報を表示するレコメンド機能を活用し、価値のある広告を提供する。さらに、栄養士やスポーツドクターなどと連係し、選手の成長につながる情報を提供する考えだ。バナー広告やクラウドファンディングで調達した財源を基に、選手への活動資金援助のサービスも展開する予定だ。
同社は17年度までの中長期経営計画で、連結売上高目標を1000億円と掲げる。「目標達成のためには、新しいビジネスを生み出す発想がほしい」(同社広報・IR室)として、昨年から社員を対象に新事業創出支援プログラム「スタートアップバトル」を実施している。
アスリートストーリーズは第1回の優秀賞に選ばれた。発案者の新井田徹さんは「自己管理意識の向上や競技人口の増加などに貢献し、スポーツ全体を活性化させたい」と意気込んでいる。(鈴木正行)
【会社概要】インフォコム
▽本社=東京都渋谷区神宮前2-34-17
▽設立=1983年2月
▽資本金=15億9000万円
▽連結売上高=391億3000万円(2014年3月期)
▽事業内容=情報システムの企画・開発などの各種ITソリューションの提供。携帯電話やスマートフォン向けのコンテンツ配信やeコマース(電子商取引)などのサービス提供
「フジサンケイビジネスアイ」