□ジャパンインターナショナルコマース・中村貞彦社長
日本の製造業が国内に回帰しつつある。円安の定着のほか、中国などでの人件費の高騰により国内と海外の一部で生産コストの逆転現象も見られる。キヤノンやパナソニック、シャープなども生産の一部を国内に移している。家電輸入商社からメーカーへの転換を図っているジャパンインターナショナルコマースは、新商品の製造を従来の中国から国内に切り替えている。中村貞彦社長は「日本の製造業は立て直すことができると確信している」と力強く語る。
--国内で製造する新商品はどのようなものか
「マグカップや水筒、ボトルなどのさまざまな容器の洗い物が楽にできる食器洗い用電動ブラシだ。『ソニックスクラバー 電動キッチンブラシ』は毎分8000回の高速で、一方向だけでなく反復回転するので、両方向から汚れを落とすことができ、効果的に洗える。また電池式で完全防水のため、漏電や感電の心配もない。わずか220グラムと軽量なので、持ち運びも簡単にできる。販売価格は2916円。年間20万台を販売する計画だ」
--日本製を前面に打ち出している
「製造を委託するため見積もりを取ると、中国より日本の方が安かった。以前は中国で製造していたので意外だった。委託先を視察したところ、工場は全て自動化されていて人がいない。2時間ごとに社長が隣の自宅から見に来るだけ。これならば海外に太刀打ちできる。日本の製造業の厳しさが言われているが、先見性のある経営者は思い切ったロボット化を推し進めている。差別化を図るためパッケージには『日本製』と明記している」
--なぜ自社商品を販売するようになったのか
「もともと商社で欧米の家電や家庭用品の輸入を担当していた。その後独立して世界中の見本市などを巡って輸入する商品を探しているが、1年間全く見つけられないこともある。また最近、英国の衣料品ブランドのバーバリーが三陽商会との提携を解消して日本で直営店を展開することを決めた。輸入販売に依存することは危険だと思い自社商品の製造販売に事業をシフトしている。2006年に米国の会社と共同で台所用電動掃除ブラシを開発し、輸入販売を始めた。これまでに累計50万本を売るヒット商品となっている。13年には運動靴用の電動掃除ブラシを当社単独でつくっている」
--次の商品開発は
「これまでに掃除用ブラシを製造し、ノウハウを蓄積した。これを生かして美容用品に進出する。企業価値とブランド力を高めて、高付加価値で高収益の商品を展開する。国内生産で日本の製造業の復権にも貢献したい」(佐竹一秀)
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【プロフィル】中村貞彦
なかむら・さだひこ 慶大経卒。1968年安宅産業入社。73年9月ジャパンインターナショナルコマースを創業し、社長。69歳。福島県出身。
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【会社概要】ジャパンインターナショナルコマース
▽本社=東京都渋谷区神泉町21-3 渋谷YTビル02 5階 ▽設立=1974年1月 ▽資本金=3000万円 ▽従業員=20人 ▽事業内容=日本市場向けの製品企画、製造、輸入
「フジサンケイビジネスアイ」