SELTECH・江川将偉社長
2020年には全世界で500億の“端末”がインターネットとつながるとされる。パソコンや携帯電話だけでなく、家電製品や自動車などあらゆるものがネットを通じて情報をやりとりできる世界が来るが、コンピューターウイルスや不正アクセスなどへの対策強化も急務だ。システム開発を手がけるSELTECH(セルテック)の江川将偉社長は「新技術『フェザー・オックス』は従来とは違う方法で不正アクセスから重要な情報を守る」と自信をみせている。
--フェザー・オックスとはどんな技術か
「システム内の重要部分へのアクセスを制御できるようにする。もしもウイルス感染や不正アクセスによってシステムが乗っ取られてしまうようなことになっても、重要部分へのアクセスを制限することができる。これまでとは全く違う概念のセキュリティー技術だ」
--具体的には
「通常、パソコンなどの端末には1つの基本ソフト(OS)が存在する。これまでのシステムあるいは従来の技術では、OSがウイルスに感染した外部からの不正なアタックで侵入を許してしまった場合、システム全てが乗っ取られてしまう。フェザー・オックスは、通常のOSに加えてもう一つの『隠された安全なOS(セキュアOS)』を持つことができる。重要な情報やデバイスをセキュアOS側で管理させておくことで、不正なアクセスに対してもデータやデバイスを安全に保持・管理することが可能になる」
--複数のOSを載せるとCPU(中央演算処理装置)の消費電力が大きくなり、処理速度も遅くなりそうだが
「フェザー・オックスを用いて追加されるセキュアOSは、実は非常にコンパクトだ。システム起動時の安全性を確認したり重要なデータへのアクセスを制御するためのものだからだ。またフェザー・オックス自体もとてもコンパクトで、CPUの動作に占める割合は全体のわずか1、2%程度に過ぎない。技術的に詳細な話はできないが、なんの問題もなく既存のOSと共存させることができ、CPUへの負荷をほとんど増やさずに、セキュリティーを大幅に強化することができる」
--フェザー・オックスには半導体メーカー以外からも関心が集まっている
「今年1月の米ラスベガスでの家電ショー(CES)で英イマジネーションテクノロジーズ(旧・米ミップス・コンピュータシステムズ)のブースに、フェザー・オックスを出展したところ、現地のインターネットメディアから取材を受けるなど、関心の高さを手応えとして感じた。現地のメディアからは『ネットワーク機器には欠かせない重要なセキュア技術』と評価された。国内でもすでに複数の自動車部品メーカーや複写機メーカーとの取引が始まり、需要の拡大が見込める」(松村信仁)
【プロフィル】江川将偉
えがわ・しょうい 米カリフォルニア州立大航空宇宙工学専攻修了。PALTEK、トーメンエレクトロニクスなどを経て、2009年にSELTECHを設立し、社長。37歳。大阪府出身。
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【会社概要】SELTECH ▽本社=東京都渋谷区宇田川町36-2-1005 ▽設立=2009年9月 ▽資本金=2100万円 ▽従業員=23人 ▽売上高=非公表 ▽事業内容=組み込みシステム向け仮想技術、セキュア技術の開発・販売
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