ナレッジスイート・稲葉雄一社長兼CEO
インターネット経由でソフトを提供するクラウドコンピューティングサービスは、2006年ごろから急速に普及し、その言葉が一般名詞化しつつある。だが意外なことに、クラウドサービスを専門に提供する上場企業はいまだに存在しない。企業向けにクラウドサービスを提供するナレッジスイートの稲葉雄一社長兼最高経営責任者(CEO)は「(クラウドサービスが)産業として認められるためにも上場したい」と一番乗りを誓う。
--クラウドサービスを通じて業務効率化を支援している
「主力サービスの名称は社名と同じナレッジスイート。企業のあらゆる業務を効率化するサービスだ。社内情報共有などに役立つグループウエア、顧客管理システム(CRM)、営業支援システム(SFA)といった幅広い機能を持つ。ここまで網羅する純国産サービスはない」
--具体的な機能は
「グループウエアとしてはシステム手帳機能に加えて、会議室や社用車の予約、交通費の申請などが行える。一方、CRMには市販のスキャナーで読み取った名刺を自動的にデータベース(DB)化し、顧客名簿を作成できる機能がある。DBを使えば、他の社員が顧客企業のどの部署の社員と会ったかなどを詳細に把握し、営業効率化や商談に役立てられる」
--独自の料金体系を取り入れている
「初期費用は無料で、何人でも使える。一方、データ量に応じて課金する。つまり使った分だけ対価を支払ってもらう仕組みだ。規模に関係なく、どんな企業にも使ってもらえる」
--採用実績は
「提供を始めて6年弱になるが、累計3800社を超えている。今も月に約300社の問い合わせがあり、売り上げは毎年約20%ずつ増えている」
--CRMとSFAの機能を併せ持つ「GEOCRM.com(ジオシーアールエムドットコム)」も提供している
「衛星利用測位システム(GPS)の位置情報を活用したルート営業支援サービスだ。製薬会社のMR(医薬情報担当者)やコピー機のメンテナンス担当者がスマートフォンのアプリで営業報告を行い、会社側で情報を一括管理・把握ができる。9月に新バージョンを投入した」
--新バージョンの特徴は
「担当者が圏外にいてもアプリを使い続けられる。圏外でも報告に必要な位置情報を取得でき、電波がつながり次第、情報を会社に送る。状況に応じて位置情報の精度を切り替え、情報を送るときだけ高精度にできるため、バッテリーの減りも食い止められる。すでに東証1部企業が導入を決めている」
--目標は
「クラウドサービスが単なる流行ではなく、産業として認められるような世界を築きたい。そのためにも、クラウドに特化した企業として初の上場企業になりたい」(井田通人)
【プロフィル】稲葉雄一
いなば・ゆういち 電通子会社などを経て、2006年ブランドダイアログ(現ナレッジスイート)設立。46歳。東京都出身。
【会社概要】ナレッジスイート
▽本社=東京都港区海岸3-9-15 LOOP-Xビル6階
▽設立=2006年11月
▽資本金=3億7682万円
▽従業員=約40人
▽事業内容=企業向けクラウドサービスの提供
「フジサンケイビジネスアイ」