デキる!社員の育て方~子育て経験との対比~

第5回

協調ではなく協働しろ

奥野 政樹 2015年7月31日
 
~協調ではなく協働しろ~

 僕は、協調性という言葉を聞くとイライラする。「あいつは協調性がないからなぁ」という、よくある批判の意味するところは要するに、「あいつ」は空気を読まず、せっかくみんながひとつの方向にまとまろうという和が保たれているのに、それにわざわざ水を差し、混乱を巻き起こす、迷惑な奴だというニュアンスを感じる。

 しかしながら、そのみんながまとまろうとしている方向性というのは、経験に裏打ちされた鋭い感性のぶつかり合いから創出されたものでもなければ、客観的な考察に裏付けられたものでもない。ただ、場にいるみんなの利害関係を話し合いで調整したらそういう空気になったというだけの、極めて怪しげな存在である。そのような曖昧な空気を読み、それに調子を合わせることを世の中では「協調性」などと呼び、優秀な人材の重大な要素だなどと言う人も多い。

 僕はこういう「協調」が支配する組織は危ないと思う。そういう組織では、夢とか理念、あるいは大義といった抽象的な概念を、人の心に響くように呪術的に語ることの得意な人間がリーダーとなり、壮大な空気を醸成していくこととなる。しかしそれは、その組織に属する人間の間でしか通用しない空気であり、世の中の趨勢とは大きくズレていることがしばしばある。そうした空気に支配された行動は、まったく的外れの連続となり、結果的に組織自体が崩壊してしまうのである。「協調性」というと、あたかも、人間を大事にしているかのように聞こえるが、その実は、人間を思考停止に陥らせる人間軽視に他ならない。夢とか理念とか他人の気持ちとか霞みたいなことをみんなで追いかけ、それに水を差す人間を「迷惑」の一言で切り捨てるような非人間的なことをしているから、組織が崩壊するのである。

 では、人間を重視する組織とは何か。それは、組織の各人が持っている個々の能力を最大限に発揮させることを旨としている組織である。それが組織目標となったときに、そういう組織ではどういう人間が「デキる」人間と見られることになるだろうか。簡単な話である。まず、自分と他人の能力と特質、適性を正確に見極めることができること、これがまず条件になる。そして次に、他人の能力を引き出す力に優れ、それを使いながら自分の強みも最大限に発揮することができることが重要なのだ。このように、自他の相乗効果を生むための場のつくり方や立ち居振る舞いが身についている人間を「デキる」人間と言う。大事なのは協調性ではなく、一緒に働くこと、つまり協働性であり、リーダーシップというのは、その先にあるちょっとした上下関係と責任の差にすぎない。本質は変わらないのである。

 ならば、この協働性はどうしたら育つのか。これはもう経験しかない。組織というものを経験しなければどうにもならない話だ。そうなると、子供には集団でスポーツでもやらせるのがいいのかと考える人もいるだろうが、それもやり方次第で随分と違ってくるだろう。大人の監督やコーチがつき、その支配のもとで選手として言いなりになってプレイしているだけでは、協調性のトレーニングにはなっても、協働性は身につかない。そこでは命令と従属と言う縦の支配関係が中心であって、選手同士の横の関係が生まれにくいからである。

 縦の支配関係中心の方が効率の良い練習ができて、チームは手っ取り早く強くはなるのかもしれないが、子供たちの「デキる」人間へのトレーニングにはあまりならないということだ。子供たちの興味によって自発的に発生し、子供たちの自治の中で、日々起こるスッタモンダを集団で解決していく経験、これを通じてのみ、協働性というのは養われていくのである。横の関係の中で集団の問題を解決していく経験により、自他の違いと強みを認識し、それを最適のバランスで掛け合わせていく力が養われる。そしてその力に秀でたものを組織のリーダーとして立てていくことが、解決への早道であると認識できるようになるのである。残念ながら今は、大人による子供世界の管理、浸食は進む一方であり、子供達が協働性を育む機会は少なくなっている。

 社員の協働性、そしてリーダーシップを育てたいなら、あまりに整合性のとれた納得感のある組織というような綺麗なものを社員に提供しない方がよいであろう。多少の混乱は、成長への促進剤みたいなものである。それよりも大事なことは、縦の支配ではなく横の関係で課題に対処していくということが経験できる場を、できるだけ多く用意することであろう。
 
 

プロフィール

インターナップ・ジャパン株式会社
代表執行役CEO 奥野 政樹(おくのまさき)

<略歴>
1988年 早稲田大学法学部卒業
1988年 日本電信電話株式会社入社
1992年 会社派遣によりニューヨーク大学法科大学院へ留学
1994年 ニューヨーク州弁護士資格取得
     帰国後、数多くの国際M&Aプロジェクトで交渉を担当
2003年 インターナップ・ジャパン株式会社へ出向
2006年 同社代表執行役CEOに就任、現在に至る

同じカテゴリのコラム

コラム検索
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。