倒産企業から事業改善を学ぶ!

第1回

事業改善して繁盛企業になれる方法を倒産企業から学ぶ

落藤 伸夫 2018年1月4日
 
あけましておめでとうございます。今年も皆さんのビジネスが益々ご発展されますよう、お祈りしております。

一年の計

みなさんは、新年を迎えるにあたって、どんな一年の「計」を立てられたでしょうか?筆者は、自分が培ってきたものを今まで以上に活用して、企業、経営者、そしてそこで働く全ての人々に貢献したいと考えました。そして、この新コラムを始めることになったのです。

筆者は約30年間、日本政策金融公庫(入社時は中小企業信用保険公庫。途中、中小企業総合事業団及び中小企業金融公庫を経て日本政策金融公庫となる)に勤め、主に倒産審査マンとして働いてきました。信用保証協会の保証付きで融資を得ていたにもかかわらず倒産などで返済できなくなり、信用保証協会が代位弁済した案件の審査です。30年間で少なく見積もっても18,000件以上の倒産案件を審査してきました。

筆者が公庫を退職して経営コンサルタントとして独立したのは、ひとえに、「倒産企業に関する審査も社会的に意義のある仕事だけれど、今に生きる企業を支える貢献もしたい。今後は企業の事業改善を支援したい」と考えたからです。InnovationS-i コラムとして、これまで「マネジメント(MCS)」そして「事業性評価融資による資金調達」などをテーマに情報発信を続けてきたのも、筆者だけが知る知識・ノウハウを企業活性化のために活用して頂きたいと考えてのことです。

こうした中、昨年末に一つのことを「ふっ」と思いついたのです。筆者だけが知る知識・ノウハウの、根幹とも言えるものを今まで見過ごしてきたということです。18,000以上の倒産企業案件を審査するという経験をしてきたコンサルタントは、他にいないでしょう。にも関わらず筆者は、そこで得られた知識・ノウハウを、これまで活用してきませんでした。「倒産企業から事業改善を学ぶ」ことです。それを今年は、お伝えすることにしたのです。

倒産企業から学べる知恵

経営も、それ以外の取組みでも、学ぶには2つのアプローチがあります。成功例に学ぶことと、失敗例に学ぶことです。成功例から学ぶアプローチの典型例は、それを真似することでしょう。多くの経営者が、成功者のセミナーを聞きに行くなど、取組みを行なっています。その学びから大きな成果を得ている企業も多いことでしょう。

一方で、失敗例からも多くの大切なことを学ぶことができます。昔から「他人の振り見て、我が振り直せ」と言います。実際、自分の失敗は気が付かなくても他人の失敗なら気が付くということは少なくありません。自分ではみつからなかった企業に多数存在する落とし穴を見付けることができます。その気付きを活かして、事業改善を始める「タネ」にすることができます。その取組みを体系的に行うため「失敗学」という学び方さえ、確立されています。

失敗例が教えてくれる「油断」の怖さ

誰か他の人・企業が犯してしまった失敗と同じ失敗を犯してしまうことを「二の轍を踏む」と言います。では、なぜ、人は二の轍を踏んでしまうのでしょうか?誰も、それが大変な結果に陥ると分かっていれば二の轍を避けるはずです。なのにそれを踏んでしまうメカニズムは、何なのでしょうか?

「二の轍」の「轍」とは「わだち」、つまり以前に誰かが進んだ場所が踏み固められて通りやすくなっている道を指しています。それとは少し違うコースを進むと凸凹だらけで進みにくい、だから「ここは進みやすい。先にこれを進んだ人もいるなら、これは正しい道なのだろう」と考えて選択するのです。しかしその道のうち少なからぬものが「二の轍」で、重大な結末に至ってしまいます。

こうやって考えてみると「二の轍を踏む」という現象は、「他企業も同じことをやってから大丈夫そうだ。なんとかなるに違いない」という「油断」が原因だと分かります。油断して事業改善に取り組まないと重大な結末につながる可能性があることを、倒産企業が教えてくれています。

事業改善の大切さ

事業改善の必要性を、ここで、筆者が遭遇したケースから簡単にご説明しましょう(題材となった企業のご迷惑にならないよう、脚色を加えた上で記事にしています。今後の連載においても同じです)。地方の、ある蕎麦屋のケースです。住宅地が広がる駅前から徒歩約5分、地元駅前商店街の一番端、そこからは住宅地が広がるという入り口に、その蕎麦屋は立っていました。その店の道路向かいも飲食店で、そちらの飲食店は約10年間で3店舗が入れ替わったにもかかわらず、蕎麦屋の方は安泰でした。その200mほど先には老舗の蕎麦屋があり、電車で1時間もかけて県庁所在地からも客が集まるという人気店でしたが、当店はそれほどの評判を得てはいない中、うまく棲み分けて着実な営業を行なっていました。

その状況は、約3年前に一変しました。道路向かいに和風居酒屋が入店したのです。ちなみに和風居酒屋は、これら店舗から50mほど離れたところにもう1店舗あり、そちらは予約がなければ入れないような人気店舗でした。最初は、居酒屋同士の熾烈な競争になると考えられ、新参店が立ち向かえるのかと心配されましたが、様相は違いました。老舗の居酒屋が繁盛を続ける中、新参店も繁盛店となったのです。一方、この蕎麦屋には全くといって良いほどお客が入らなくなり、倒産に至ってしまいました。さて、この蕎麦店はなぜ倒産したのでしょうか?「向かいに和風居酒屋店が入店したのに、その対策として事業改善の手を打たなかったから。」この答えに、間違いありません。

事業改善のタネを見つける大切さ

しかし、その蕎麦屋の店主はなぜ、事業改善に着手しなかったのでしょうか?「向かいに入店したのが蕎麦屋ではなく、和風居酒屋だったから。別業態なので、関係ないと考えたから。今まで通り、数年で撤退すると考えたから。」おそらく、そうでしょう。にも関わらず、今回は撤退するのは新参店ではなく、この蕎麦屋の方でした。それはなぜでしょう?その答えは「蕎麦店は、事業改善するタネを見つけられなかったから」です。事業改善のタネを見つけられなかったので、客足が落ちる、売上が減少するという現象が起きているにもかかわらず、事業改善に着手できなかったのです(この例は次回、詳しくお伝えします)。

事業改善のタネと対処法を考える

先ほど例としてあげた蕎麦屋のケースをご覧になって、「実は我が社(我が店)と同じだ」とお感じになった企業経営者もおられると思います。本コラム・シリーズは、まさにこのような企業経営者のためにお送りします。「競合店に負けて廃業を迫られる」という結末を避けるために、事業改善を行う必要があります。しかし、それを行うには「手遅れにならないうちに、事業改善のタネを掴む」ことが必要です。本コラム・シリーズは、事業改善とそのタネ、両面を考えていきます。

スタートでありゴールでもある事業改善

最後に、事業改善のメリットを多角的に考えてみることにしましょう。事業改善は、スタートでもありゴールでもあるということです。事業改善がゴールであることは、容易に分かると思います。それを行なって業績を向上させれば、倒産の危機は回避され、会社は安泰です。繁盛している企業で働くことは、その経営者や従業員にとっても楽しいことなので、事業継続の意欲が高まります。休廃業も回避され、事業承継も容易になることでしょう。

一方で、事業改善はスタートにもなり得ます。「事業性評価融資」が始まった今、金融機関は将来性のある企業を探しています。これまでの「債務者格付け」では融資できなかった企業への支援ができないと「捨てられる銀行」になってしまうからです。では、将来性のある企業はどこから探せば良いでしょうか?「我が社は事業改善に取り組むことにした」と宣言する企業は、その候補者として真っ先に検討されることでしょう。

また会社が事業改善に取り組むと、社員のモチベーションも上がります。「この会社、大丈夫かな。ちゃんと給料を払ってくれるのかな。ボーナスなんか、望み薄だな」と考えてしまうと、仕事に力が入らないのは人情です。一方で、「あ、この会社、変わったぞ。事業改善に取り組んでいるらしい。社長の顔色も変わった。この会社で働き続けても、大丈夫なようだ」と考えられると、真剣に仕事してくれるようになります。事業改善を始めることが、その完遂を待たずして、望ましい現象が起きるスタートになり得るのです。

StrateCutionsでは2018年を「事業改善元年」と位置付けて、そのご支援を強力に推進する所存です。本コラムをお読みになり、一人でも多くの経営者が、一社でも多くの企業が事業改善の取り組みを始められるよう、切に希望しています。

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

1985年中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
約30年間の在職中、中小企業信用保険審査部門(倒産審査マン)、保険業務部門(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定、事業再生案件審査)、総合研究所(企業研究・経済調査)、システム部門(ホストコンピューター運用・活用企画)、事業企画部門(組織改革)等を歴任。その間、2つの信用保証協会に出向し、保証審査業務にも従事(保証審査マン)。

1999年 中小企業診断士登録。企業経営者としっかりと向き合うと共に、現場に入り込んで強みや弱みを見つける眼を養う。 2008年 Bond-BBT MBA-BBT MBA課程修了。企業経営者の経営方針や企業の事業状況について同業他社や事業環境・トレンドなどと対比して適切に評価すると共に、企業にマッチし力強く成果をあげていく経営戦略やマネジメント策を考案・実施するノウハウを会得する。 2014年 約30年勤めた日本政策金融公庫を退職、中小企業診断士として独立する。在職期間中に18,000を超える倒産案件を審査してきた経験から「もう倒産企業はいらない」という強い想いを持ち、 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を中心した企業顧問などの支援を行う。

2016年 資金調達支援事業を開始。当初は「安易な借入は企業倒産の近道」と考えて資金調達支援は敬遠していたが、資金調達する瞬間こそ事業改善へのエネルギーが最大になっていることに気付き、前向きに努力する中小企業の資金調達支援を開始する。日本政策金融公庫で政策研究・制度設計(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定)にも携わった経験から、政策をうまく活用した事業改善支援を得意とする。既に「事業性評価融資」を金融機関に提案する資金調達支援にも成功している。

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