■レポート概要
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世界の電気自動車(EV)用バッテリー市場は、2024年の時点で約880億米ドル規模とされ、今後のEV普及拡大を背景に急速な成長が見込まれています。2025年から2032年の予測期間においては、年平均成長率(CAGR)約10%前後で拡大し、2032年には約1,800億米ドル台を超える可能性が高いと評価されています。本レポートでは、バッテリーセルからモジュール、バッテリーパック、バッテリー管理システム(BMS)までの製品構成別、化学組成別、用途別、自動車タイプ別、地域別に市場を多角的に分析し、主要プレーヤー動向やサプライチェーン、将来の技術開発動向を網羅しています。
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市場動向
近年、世界各国で環境規制強化やCO₂排出削減目標の引き上げが相次ぎ、自動車メーカー各社がEVへのシフトを加速させています。2024年にはグローバルで約1,700万台のEVが販売され、全新車販売に占める割合は約15%に達しました。特に中国市場では新車販売におけるEV比率が約50%前後にまで高まり、米国や欧州でも約20~30%程度まで上昇しています。この動きがバッテリー需要を大幅に押し上げ、製造能力拡大やサプライチェーンの再構築を促しています。一方、原材料となるリチウム、コバルト、ニッケルなどの供給制約や価格変動リスク、半導体不足による製造ライン停滞といった課題も顕在化しており、各社は安定調達とコスト最適化に向けた取り組みを強化しています。
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推進要因と阻害要因
推進要因としては、各国政府によるEV購入補助金や税優遇措置、ゼロエミッション車普及目標の設定、充電インフラ整備計画などが挙げられます。これにより消費者のEV購入意欲が高まり、自動車メーカーも生産計画をEV中心にスライドさせつつあります。また、バッテリー性能向上とコスト低減が進み、1kWh当たりの平均コストは2020年から40%以上下落しており、ミッドレンジモデルにも高容量バッテリーが搭載されるようになっています。
一方で阻害要因としては、サプライチェーンの地政学リスク、資源ナショナリズムによる輸出規制、原材料価格の急騰といった外部環境要因が挙げられます。とくにリチウムやコバルトは一部地域に偏在しており、調達先の多角化が困難です。さらに、次世代電池である全固体電池やナトリウムイオン電池の商業化に向けた技術リスクも短期的には投資判断を慎重にさせる要素となっています。
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主要トレンド
第一に、リチウムイオン電池の化学組成多様化が進んでいます。従来のNMC(ニッケル・マンガン・コバルト系)やNCA(ニッケル・コバルト・アルミ系)に加えて、コストと安全性を重視したLFP(リン酸鉄リチウム系)が中国や欧州市場で採用拡大しています。第二に、バッテリーパック設計におけるモジュール集積度の向上や冷却システムの高効率化により、熱管理が最適化されて走行性能と寿命が改善されています。第三に、BMSのアルゴリズムとセンサ技術が高度化し、セルごとの劣化予測やリアルタイムでの充放電最適化が実現しつつあります。さらに、リサイクル・セカンドライフ活用の取り組みとして、使用済みEVバッテリーを家庭用蓄電システムや再生可能エネルギー連携用途に再利用する事例が増加しています。
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カテゴリ別分析
製品構成別に見ると、セル単体段階では大型セルや円筒型セルがハードウェア面での標準化を進めており、モジュール化においては高い安全性と組み立て効率を両立させる設計が求められています。パック段階では、車両搭載に最適化されたパッケージ設計と軽量化が重要視され、モジュール間の冷却回路や構造接合技術にも多様なアプローチが見られます。
用途別では、乗用車用が市場の約70%を占めていますが、商用車向けでは高サイクル寿命と高出力性能が求められ、物流用EVトラックやバス向けに専用設計の大型パックが発売されています。また、二輪車・三輪車、建設機械、農業機械など特殊車両向けの小型高出力バッテリー市場も成長が著しいです。
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地域別インサイト
アジア太平洋地域はセル生産能力の集積地となっており、中国、韓国、日本が上位の生産拠点として存在感を示しています。欧州市場では環境規制とリサイクル政策が厳格化しており、LFP採用やリサイクルインフラ整備が進行中です。北米はテキサスやケンタッキーなどに大規模セル工場が新設され、国内調達率向上と雇用創出が政府支援を受けています。南米や中東・アフリカはEV普及はまだ初期段階ですが、再生可能エネルギーとの連携促進と政府主導のインフラ整備計画が進展しつつあります。
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主要企業の動向
主要プレーヤーとしては、中国のCATLやBYD、韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDI、日本のパナソニック、欧米のフォルシムやSKオン、欧州系素材ベンチャーなどが挙げられます。これら企業は生産能力の増強に加え、素材の自社開発や合弁事業を通じたサプライチェーン統合を進めています。たとえばCATLはセル工場を欧州に複数建設し、現地調達率向上を目指しています。LGエナジーソリューションは次世代全固体電池の実証プラントを稼働させ、商業化に向けたロードマップを明示しています。
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将来展望と戦略提言
今後はエネルギー密度向上とコスト低減の両立が市場競争の焦点となります。企業は原材料調達の多角化を進めるとともに、サステナビリティを担保したリサイクル・セカンドライフソリューションをビジネスモデルに組み込む必要があります。また、全固体電池やナトリウムイオン電池など新興技術の実証と早期事業化に向けたパートナーシップ構築が鍵となります。さらに、BMSや熱管理技術、ソフトウェア開発能力を内製化し、サービス型ビジネスやエコシステム提供にシフトすることで、顧客ロイヤルティと収益性向上を図るべきです。本レポートが、EV用バッテリー市場の全体像把握と戦略立案の一助となれば幸いです。
■目次
1. 第1章 調査レポート概要
o 1.1 レポートの目的と適用範囲
o 1.2 電気自動車用バッテリーの定義と分類(化学組成・セル構造)
o 1.3 調査対象市場の地理的範囲(世界市場、5大地域)
o 1.4 調査手法:一次調査(インタビュー、アンケート)および二次調査(公開資料、特許・論文)
o 1.5 用語・略語一覧
o 1.6 調査対象年および予測期間(2015–2024年実績/2025–2032年予測)
o 1.7 レポート構成の説明
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2. 第2章 マクロ環境分析
o 2.1 世界経済動向と自動車産業の成長トレンド
o 2.2 エネルギー価格(リチウム、コバルト、ニッケル等)の推移と見通し
o 2.3 環境規制・カーボンニュートラル政策の強化動向
o 2.4 電力インフラ整備・再生可能エネルギー普及の影響
o 2.5 補助金・税制優遇策の各国比較
o 2.6 サプライチェーンの地政学的リスクと原材料調達戦略
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3. 第3章 世界市場規模と成長予測
o 3.1 世界市場規模の推移(2015–2024年実績)
o 3.2 予測分析(2025–2032年、CAGR算出)
o 3.3 地域別市場規模と年間成長率(北米、欧州、アジア太平洋、中南米、中東・アフリカ)
o 3.4 車種別需要動向(乗用車、商用車、バス、二輪車)
o 3.5 用途別市場割合(OEM搭載分/アフターマーケット分)
o 3.6 成長ドライバー・抑制要因の整理
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4. 第4章 化学組成別市場動向
o 4.1 リチウムイオン二次電池市場(NMC、NCA、LFP、LMO)
o 4.2 固体電池(全固体電池)の技術開発状況と市場展望
o 4.3 リチウム硫黄電池・リチウム空気電池など次世代電池の動向
o 4.4 リサイクル・再利用電池市場の現状と課題
o 4.5 セルフォーマット(円筒型、角形、ポーチ型)の採用比率と特性
o 4.6 原材料調達のサステナビリティ対応(バッテリー・バリューチェーン)
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5. 第5章 車両タイプ別市場分析
o 5.1 乗用車向けバッテリー需要(Bセグメント、Cセグメント、SUVなど)
o 5.2 商用車・トラック向けソリューション(電動軽トラック、大型EVトラック)
o 5.3 バス・公共交通向け電動バス用バッテリーの要件と市場規模
o 5.4 二輪車・三輪車向け小型バッテリー市場の成長ポテンシャル
o 5.5 建設機械・農業機械・フォークリフト等特殊用途車両の導入動向
o 5.6 アフターマーケットでのリビルド・交換サービス市場
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6. 第6章 地域別市場詳細分析
o 6.1 北米市場分析
6.1.1 米国市場の規模・政策動向
6.1.2 カナダのクリーンエネルギー政策と産業動向
6.1.3 メキシコの生産拠点と輸出戦略
o 6.2 欧州市場分析
6.2.1 ドイツ・フランス・英国の補助金・規制比較
6.2.2 欧州連合のZEV規制強化影響
o 6.3 アジア太平洋市場分析
6.3.1 中国市場:国内大手メーカー動向と投資動向
6.3.2 日本市場:高度技術と品質競争力
6.3.3 韓国・インドの成長ドライバーと政府支援策
o 6.4 中南米市場(ブラジル、アルゼンチン等)のインフラ整備とEV普及状況
o 6.5 中東・アフリカ市場:電力インフラ課題と投資機会
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7. 第7章 サプライチェーン・バリューチェーン分析
o 7.1 原材料調達:リチウム、コバルト、ニッケル等資源国動向
o 7.2 素材メーカーからセルメーカへの流通構造
o 7.3 モジュール・パック組立とシステムインテグレーション
o 7.4 OEM向け納入モデルとアフターマーケット流通チャネル
o 7.5 リサイクル・リユースネットワークの整備状況
o 7.6 ロジスティクス最適化と在庫管理
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8. 第8章 価格動向とマージン分析
o 8.1 バッテリー平均販売価格(ASP)の推移(cell/module/pack)
o 8.2 原材料価格構成とコストドライバー分析
o 8.3 地域別価格差と為替変動リスク
o 8.4 価格競争力向上のための技術投資事例
o 8.5 マージン構造:セルメーカ、モジュールサプライヤー、OEMのマージン比較
o 8.6 コスト削減・生産効率化の最新取り組み
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9. 第9章 技術動向およびイノベーション
o 9.1 次世代固体電池の製造プロセス技術
o 9.2 高エネルギー密度化技術(シリコンアノード、リチウムメタル等)
o 9.3 急速充電・高出力設計における材料・セル構造革新
o 9.4 サーマルマネジメント技術(冷却・保温システム)の進展
o 9.5 セル診断・BMS(電池管理システム)の高度化動向
o 9.6 リサイクル・セカンドライフ利用技術の先行事例
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10. 第10章 競合環境と主要企業プロファイル
• 10.1 主要企業の市場シェアとポジショニング
• 10.2 企業別製品ポートフォリオ比較(セル、モジュール、BMS)
• 10.3 生産能力および拠点分布
• 10.4 R&D投資動向と技術提携事例
• 10.5 M&A・提携活動によるシナジー分析
• 10.6 競争優位性要因とリスク評価
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11. 第11章 M&A・投資動向
• 11.1 近年の主要M&A事例と業界再編状況
• 11.2 ベンチャー投資・アクセラレータープログラム活用例
• 11.3 合弁会社・技術提携プロジェクトの成功事例
• 11.4 生産拡張プロジェクトと資本支出計画
• 11.5 将来の投資機会と投資家視点の市場魅力度
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12. 第12章 市場リスク・課題
• 12.1 原材料価格急変リスクと調達多様化戦略
• 12.2 環境・安全規制強化による適合コスト増大
• 12.3 技術開発失敗リスクと特許・知財紛争
• 12.4 サプライチェーン断絶リスクと代替素材開発
• 12.5 二次電池廃棄・リサイクルに関わる法的課題
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13. 第13章 市場機会とフォーサイト
• 13.1 EV普及拡大による追加需要シナリオ
• 13.2 商用車・特殊用途車両向けソリューション展開機会
• 13.3 セカンドライフ用途・エネルギー貯蔵市場参入可能性
• 13.4 新興国市場の成長ポテンシャルと課題
• 13.5 スマートグリッド・V2G連携ビジネスの将来展望
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14. 第14章 調査・分析手法詳細
• 14.1 一次調査実施概要(対象企業・専門家数、質問項目)
• 14.2 二次資料収集先とデータ信頼性評価基準
• 14.3 定量分析モデル(市場規模予測、感度分析手法)
• 14.4 シナリオ分析による不確実性評価手法
• 14.5 データ補正・クロスチェックプロセス
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15. 第15章 付録
• 15.1 用語解説
• 15.2 図表一覧
• 15.3 調査協力先企業リスト
• 15.4 関連規制・標準規格一覧
• 15.5 その他参考資料
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■レポートの詳細内容・販売サイト
https://www.marketresearch.co.jp/electric-vehicle-battery-market/