12月7日、イノベーションズアイホームページにおけるWeb投票および新聞社推薦で選ばれたファイナリスト10社が新ビジネスや事業展開についてプレゼンを繰り広げた「イノベーションズアイ・アワード2011」。同日、大賞・審査員特別賞・オーディエンス賞に輝いた3名のプレゼンターに、受賞の喜びとイノベーションに懸ける思いを語ってもらった。
大賞受賞企業
株式会社神奈川こすもす 代表取締役 清水宏明氏
●時代の変化に合わせたシンプルな葬儀のブランド「火葬のダビアス」全国チェーン展開ビジネス●儀式や会葬を省略し、近親者のみで火葬を行う「直葬」スタイルの葬儀『ダビアス』ブランドの全国展開を開始。サービス提供エリアが関東、東海、近畿へと広がっている。価格破壊的なアプローチではなく、葬儀の機能を火葬に限定することでコスト低減を実現。人口カバー率80パーセント、年間受注件数1万件を目指す。
――本アワードにエントリーされた211社の中から、見事に大賞を受賞されました。本当におめでとうございます。 まさか私どもが受賞できると思っていなかったので、いまだに信じられない気持ちです。すべてを出し切りました。大賞をいただくことができたという意味で、自分としては100点満点だと思います。あまりの緊張で、本番で何を話したのかを思い出せないような状態ですが、「旧態依然とした業界を、外圧によってではなく、内部から変えていこう」というメッセージを、皆さんにうまくお伝えすることができたのではないでしょうか。
――今回、出場してよかったと思うことは何ですか?
プレゼン資料を作成する作業が、自分が普段やっていることを見つめ直す良い機会になりました。それを7分という限られた持ち時間の中にまとめることで、自分の思考がクリヤーになり、今後何をしていくべきかを再確認できました。
――今後の抱負についてお聞かせ下さい。
なかなか変化が起きづらい葬儀業界の中で、09年に「火葬のダビアス」サービスを立ち上げましたが、月日が経つにつれて、当初の思いが薄れていく部分が若干あったことは否めません。そこで「(同サービスは)業界の改善のために必ず必要になる取り組み」だという初期の志を改めて再確認しているところです。
業界を一度に大きく変えることは無理でも、私たちのこうした行動が周囲に少しでも影響を与え、小さな取り組みが全国に広がる中で大きな波となり、最終的に生活者の皆様のお役に立つことを目指しています。
まずは、私どものサービスが浸透し、認知されなければ意味がありませんので、人口カバー率80㌫を早々に達成し、(カバーエリア内の)皆様により多くの情報を提供していきます。
――葬儀サービスを提供するうえで、最も大切にしていることは何ですか?
亡くなられたご本人および家族の皆様へのきめ細かい思いやりや心遣いがなければ、葬儀は単なる「処理」になってしまいます。それゆえ、葬儀が儀式として伝統的に残っていく中で形を変えていくという意味で、根本的な部分にある「思い」を変えてはなりません。
今日のプレゼンの中で「葬儀屋のDNA」についてお話しましたが、私たちは幼い頃から「国会議員もホームレスの人も、亡くなればみな仏様」だと教えられて育ってきました。その意味で、(「火葬のダビアス」のような)低価格サービスであろうが大きな社葬であろうが、個人としての尊厳(を大切にする)という点で変わりはありません。どのような状況であれ、亡くなられたご本人とご家族の方の思いを形にすることが、われわれ葬祭事業者の大切な役目だと思っています。
設立:2001年4月
社長:清水宏明氏
本社:神奈川県川崎市川崎区渡田1-6-10
事業内容:葬儀の請負、斎場の経営等
連絡先:0120-096-562(総合コールセンター)
URL:http://www.kanagawacosmos.com/
審査員特別賞受賞企業
エンザイム株式会社 取締役 営業本部長 鈴木一哉氏
●エンザイム汚泥削減システム●腐植土を加工・乾燥させた「腐食材料」を用い、汚泥を直接分解・ガス化する独自のシステム。余剰汚泥の削減のほか、水質浄化の促進、悪臭除去に高い効果を発揮し、下水・排水処理設備や畜舎などで数多くの実績がある。汚泥は脱水・乾燥・焼却などのプロセスを経て最終処分場に埋め立てられているが、最近は処分場が少なくなり、環境維持コストの増大が社会問題になっている
――審査員特別賞を受賞した感想をお聞かせ下さい。
驚きました。当社はニッチな分野で最高の技術を持っていると自負していますが、今回は業界内のイベントや取材とは違い、さまざまな観点から評価を受けて受賞できたことを光栄に思います。本番では持ち時間が7分と短かったので、技術的な事柄よりも、自分たちがこれまで考え行ってきたことを中心にプレゼンを行いました。とくに私自身の考え方でもある、古い業界から新しいビジネスを生み出していくイノベーションに対する姿勢について、最低限のことはいえたのではないでしょうか。
――イノベーションに対する思いを聞かせて下さい。
われわれは汚泥の削減に取り組んでいますが、汚泥とは従来「(工場や排水処理場などから)排出され、それに(1トン当たりいくらという)値段をつけて運ばれるもの」でした。
廃棄物は「廃れて棄てる物」と書きますが、それはわれわれ人間が社会に生きる中で、本当は資源物になり得るものを、廃棄物やゴミであると勝手にルール付けたものにほかなりません。(汚泥を)廃棄物としてしか価値を見いだせず、そこにしかビジネスチャンスがない、という考え方自体が間違っています。
――その点で、どんなイノベーションを行っていきますか?
産業廃棄物に関わっているなら、廃棄物を削減するのも大きな仕事。(トン単価いくらで処理を請け負うよりも)汚泥の発生を減らす技術を伝えたり、コンサルティングを通じて収益を上げる方が、はるかに大きな付加価値があると考えています。まずは当社の事業についてよく知っていただき、同じ考え方を持つ仲間と一緒に収益を挙げつつ、業界が新たな方向に進むためのビジネスモデルの担い手になっていきたいですね。
設立:1983年10月
社長:鈴木邦威氏
本社:東京都品川区南大井6-5-13 第2レインボービル1階
事業内容:脱臭処理、汚水処理、畜産排泄物処理用の腐植土の販売および開発
連絡先:03-5493-2771
URL:http://www.enzyme.co.jp/
オーディエンス賞受賞企業
株式会社エスプライド 取締役副社長 中矢誠一氏
●361°トータルブランディング事業で、ワクワク、ファンづくり●「お菓子をメディアにしよう」をキャッチフレーズに掲げる「361°商品プロデュース事業」を紹介。同事業は、お菓子の中身からパッケージまで、他にはないオリジナル商品を作り、企業独自のメッセージを伝えるノベルティなどに活用しようというもの。販売促進のほか、企業理念の浸透、社員のモチベーションアップなどに活用する例もあるという
――会場投票数の最も多かったオーディエンス賞を受賞されました。
「嬉しい」の一言に尽きますが、同時に、オーディエンスの方々からご支持をいただいたことに対する責任をひしひしと感じます。皆さんに今日プレゼンで話したことを、明日から責任を持って行動に移していかなければなりません。
――プレゼンでの手応えはいかがでしたか?
お菓子という身近な商材が、オーディエンスを巻き込んでくれたのかもしれません。実際、「『お菓子がメディアになる』というキャッチコピーが面白かった」と、プレゼン後に複数の方から、お褒めの言葉をいただきました。反面、当事業による売上の見通しや収益性について、もう少しきちんと説明ができればよかったと思っています。
――アワードに挑戦してよかったと思うことは?
このアワードのために、社内でプロジェクトチームを作りました。大賞を取ることを目標に、5人の社員からなるチームが一丸となり、週末も集まってディスカッションを重ねました。これまでに6回の修正を行い、やっと本番用のプレゼン資料や原稿が完成したのが3日前。社員たちをオーディエンスに見立てて社内でロールプレイングを行い、本番に臨みました。
社内における一体感が増したことに加え、当社としても初めてこうしたメディアを活用してPRを行ったという意味で、アワードに参加したメリットは大きいと感じています。
――今後の抱負は。
お菓子を(メディアとして活用していくことを)通じて日本経済を活性化することを、私たちの使命とし、お菓子の持つ可能性を広げてきたい。目下、BtoBを軸にした新市場の構築に取り組んでいる最中です。
設立:2005年4月
社長:西川世一氏
本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-17-11
事業内容:商品プロデュース事業、クリエイティブ事業、
店舗プロデュース・コンサルタント事業など
連絡先:03-3479-3610
URL:http://www.esspride.com/
「フジサンケイビジネスアイ」