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株式会社プロジェクトニッポン ドリームゲート 代表取締役   松谷 卓也

大手とスタートアップをつなげる 日本に起業文化の確立目指す

大手企業とスタートアップをつなぐオープンイノベーションマッチングイベント「イノベーションリーダーズサミット(ILS)」が今年11回目を迎える。資本業務提携や協業などによりイノベーションが加速し、新事業創出につながりやすいと産業界から注目を集めており、参加企業は増えている。運営は、「日本に起業文化を確立する」というミッションを掲げるプロジェクトニッポンだ。松谷卓也代表取締役は「マッチング精度が高いのが魅力。研究開発型スタートアップ(ディープテック)が成長するには大手企業とのマッチングが大事。その機会を創るのが我々の使命」と話した。

――昨年開催のILSは10回目の節目だった。これまでを振り返ると
ILSは展示会ではなく、出会いの場であり、商談の場だ。当初は800社が参加する小規模なイベントだった。ハイブリッドで開催した第10回は1万6000人が参加した。アジア最大のマッチングイベントとなっているが、世界的にも大手企業が100社超マッチングプログラムに参加する規模のイベントはない。
――前回の成果は
105社の大手企業から約2000人のキーパーソンが商談に参加した。このうち約9割が事業部長・部長クラス以上だ。一方のスタートアップは625社で、海外からも27カ国・182社が参加した。いずれも国内外のベンチャーキャピタルや大学、政府機関など主要機関で構成するILSアドバイザリーボードの推薦企業だ。
――だからマッチング精度が高いといえるのか
大手にとって、アドバイザリーボードの推薦というフィルタリングされておりレベルが高いので信頼できる。スタートアップも大手のキーパーソンと直接商談できるメリットがある。国内スタートアップは平均して7社の大手と商談し、そのうち2.4社との間で協業案件を獲得した。最も人気のあったスタートアップは22社と商談した。質の高い商談をまとめて行えるので評価は高い。また、9割超の大手企業は次回も参加したいという。
――協業につながりやすいマッチングの仕組みとは
双方がマッチング専用サイトに、それぞれのニーズ、すなわちスタートアップなら得意分野・技術や事業戦略など、大手なら興味分野、求める提案、提供できるアセットなどを登録。興味先に商談リクエストを行い、相手先が承認すると商談が設定される。いわば、お見合いサイトなので効率的にアプローチできる。スタートアップにとって、大手の決裁者やキーパーソンと直接商談できるほか、大手のニーズを検索し指名して商談できたり、想定していない大手からオファーを受け取れたりする。
――大手、スタートアップともウイン・ウインの関係になりうるということか
参加するスタートアップは環境・脱炭素、化学・材料、デジタルヘルス・予防医療、半導体・電子部品といった尖った技術をもつディープテックが多い。スタートアップは成長にあたって大手との協業が欠かせず、バリューチェーンの一端を担いたい。一方の大手は製造業が多い。研究成果が出るまで時間と費用がかかる基礎研究から手を引きがちで、特にディープテック領域はスタートアップに任せたい。協業が新市場進出の足掛かりになるからだ。時間も獲得できる。
――今年開催の第11回については
顧客となる大手、スタートアップから要望を聞いて毎回、参加価値を高める修正を行っている。前回はスタートアップに加え、尖った研究に取り組む17の大学研究室も参加した。今年は産業技術総合研究所や理化学研究所、物質・材料研究機構なども加わる。このためディープテックが欲しい大手が参加する価値も高まる。現状は100社レベルだが、1桁増やしたい。そうすればスタートアップ側も増えるし、ユニコーン(評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ)にもなりやすい。
――ところで日本に起業文化は根付いたといえるか
当初とは全然違う。今や優秀な大学生が大企業を選ばずスタートアップに就職したり、学生からそのまま起業したりする時代だ。リクルートの採用担当者は『最大のライバルは起業』という。これは資本主義にとって健全なことだ。優秀な人材はたとえ失敗してもやり直しは効くし、いくらでも働くところはある。終身雇用の日本で人材の流動化が進めば産業の新陳代謝も起こる。
――それだけ起業文化の醸成が重要になる
我々はプラットフォーマーだが、スタートアップが大手との資本業務提携や協業、M&A(企業の合併・買収)などで成長機会を得られるのはいいことだ。ディープテックは社会課題の解決を目指す志の持ち主が多い。かつてのハングリー精神旺盛でアクティブな起業家とはタイプが異なるが、日本経済の活性化には欠かせない存在だ。
――そのために必要なことは
ILSの立ち上げにつながるのだが、日本には3つのムラがあり、それぞれがバラバラに動いていると気づいた。技術(研究)をもつ大学、起業マインドや(無から有を生み出す)ゼロイチのスタートアップ、販路や資金といったリソースを保有する大手の3つのムラ同士の人材の流動性が低く、交じり合っていない。3者をつなげるのがILSの役割であり、それによりイノベーションが生まれる。大学の研究シーズをスタートアップに流す仕組みを作り、それを大手との協業で新事業の創出につなげる。
松谷 卓也(まつたに・たくや)
株式会社プロジェクトニッポン ドリームゲート 代表取締役

<経歴>
2003年、リクルート在籍時に「日本に起業文化を確立する」というビジョンを掲げ、経済産業省後援事業として「ドリームゲートプロジェクト」を発足。2004年、国から自立運営するための運営会社として、株式会社プロジェクトニッポンを設立、代表取締役就任。2014年1月、大企業とスタートアップのマッチングにより、日本から世界へ通じるイノベーションを創出することを目的に「イノベーションリーダーズサミット(ILS)」を発足。来場者数は1万人を超え、アジア最大級のオープンイノベーションイベントとなっている。
<学歴>
立命館大学理工学部卒、米バブソン大学起業家養成者プログラム「プライス・バブソン・プログラム」修了
<公職>
・2005年 経済産業省-米商務省平沼-エヴァンズ・イニシアティブ訪米ミッションメンバー
・2016年~2018年 NEDO 研究評価委員(助成金審査員)
・2018年~ 経済産業省 J-Startup推薦委員
・2019年 内閣府 日本オープンイノベーション大賞 審査員

ILS2023 Webサイト: https://ils.tokyo/

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