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【インタビュー企画】株式会社commissure (コミシュア)

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東京大学発ベンチャー株式会社commissure (コミシュア)   

【インタビュー企画】株式会社commissure (コミシュア)
経済産業省によると、国内の大学発ベンチャー企業の数が2022年10月末現在で3,782社に上ったとのこと。企業数、増加数とも過去最多ということで、今後どのように成長していくのかが期待されます。

そこで今回は、今年の一月に東京大学発ベンチャーとしてスタートしている株式会社commissure (コミシュア)をご紹介。『視覚の時代は終わり、これからは”触覚“の時代』とおっしゃる代表取締役 CEO 溝橋 正輝さんと代表取締役 CTO 堀江 新さんにお話を伺いました。

―commissure (コミシュア)とは?―

溝橋「commissure (コミシュア)という名前の由来なのですが、よく脳神経科学領域で使われている単語で、右脳と左脳を真ん中で繋いでいる両方の情報通信を行っている領域のことです。このcommissureのように、私達は、インターネットやデジタルの技術を用いて色々なものと人を繋いでいきたいと考えています。」

堀江「例えば、メタバースのアバターや遠隔にいる人、目の前にいる人でもいい、接続対象と自分の身体を有機的に接続することで、様々なことが理解できるようになるわけです。直感的な動きができるようになるなど、そういったインターフェイスとアルゴリズムを作っていきたいと思っています。」

―どのようにそれを実現していくのですか―

堀江「人の身体って無意識に動かすことができますよね。そういった情報通信の在り方を自分の体の中だけではなく、外側まで拡張できるようにしたいんです。自分の体のようにロボットを動かせるとか、自分の体のように他人の体の動きがわかるとか、そういった世界観を作っていきたいと考えているのですが、そこで私達は、“皮膚”に注目しました。皮膚というのは、体の中で一番大きな臓器で、脳と同じ外胚葉から、発達しています。内側に発達したのが脳で、外側に発達したのが皮膚なので、皮膚も大量の情報を処理する器官として機能しています。実は、皮膚感覚無しで、生命活動を維持することはできないんですよ。」

―皮膚がそんなに重要なものだとは知りませんでした―

堀江「はい、物を持つことも、立ったり歩いたりすることもできないんです。ですから、皮膚は、常に外界や体の情報を処理して、私達の生命活動を支えている基盤なんです。この領域の感覚を設計可能にするというのは、人類にとってとても大きな一歩になると思っています。」

―その皮膚感覚というのをどのような方法で設計していくのでしょう―

堀江「従来、この触覚提示技術というのは、“振動“であらわしていたのですが、私達が作っているのは、対象と有機的な接続を生み出すことを可能にする技術です。皮膚を変形させることによって刺激を与えるという新しい手法で”Skin-Stretch”と呼んでいます。このSkin-Stretchですと、振動ではなしえない繊細な力の感覚を生み出すことができます。」

―変形させるというのは、どのように?―

堀江「複数の回転素子によって皮膚を変形させるんです。捻るような感じですかね。この技術ですと、繊細で微弱な刺激から迫力のある強力な刺激まで提示することができるんです。実際の実験でも圧迫刺激や振動刺激と比較してSkin-Stretchが優位であることを実証しています。この技術を活用し、例えば、遠隔操縦やメタバース、リハビリテーションや身体トレーニング、エンターテインメントなどで展開できるのではないかと議論を重ねています。」

―その中で、すでに、実現しているものはあるのですか―

溝橋「はい、研究室や企業と進めている案件がいくつかあるのですが、特許の関係などで詳細なお話しをすることが難しいのですが、一例としまして、先日fuRo(未来ロボット技術研究センター)と共にオフィスチェア型のシステムを共同開発しました。独自の映像コンテンツと同期した触覚刺激を全身に提示するというもので、東京スカイツリーソラマチにて一般公開しました。視覚や聴覚のみの体験を超えた臨場感を触覚の刺激によって実現することができたと思っています。」

一一般のお客様の反応はどうでしたか?―

堀江「花火の広がる感じを感じられた、であるとか、ライドマシンに組み込んだら面白そう、など、期待を寄せられており、事業アイディアに繋がりそうな感想もいただけました。また、押される感じがするなどの感想も得られ、サイエンス的にもヒントを得られています。」

―1月からスタートしたわけですが、現在の状況は?―

溝橋「有難いことに、様々な企業からお声がけいただいていまして、現時点では業種を問わずお話をさせて頂いています。以後の方向性としては、エンターテインメント、モビリティ、ヘルスケア、遠隔操作と4方向で進んでいく予定で、企業が求める触覚提示を実現できる会社でありたいと思っています。言語の壁が存在しないので、グローバル展開もできますしね。」

―産学連携を推進する上で大切なことはなんでしょうか―

溝橋「通常のビジネスだと、課題があって、それを解決するためにサービスをつくるパターン、いわゆるイシュードリブンが多いと思います。私たちの場合は、テクノロジードリブンのアプローチで、新しい技術から従来とは異なるビジネスやサービスを作ることにチャレンジしています。ただし、このアプローチの難易度が高く、テクノロジーからイシューを見つけることに、多くの産学連携企業が苦戦していると思います。このテクノロジーは特許がありますとか、世界一位ですとか、この東京大学の中でもゴロゴロあるはず、でも、イシューと結びつけるというのが大事で、私達はこの難題に挑戦したい思っています。」

―未来・目標をおしえてください―

溝橋「“触覚といえば、commissure”と言われるようになりたいです。様々な企業が触覚でやりたいことがあるけれど、テクノロジーがないからできないというあきらめを全て解決したいですね。私は、視覚の時代は終わってきたんじゃないかなと思っていて、これ以上テレビが8K16Kになろうが感動は薄いし、映像コンテンツ でいうと映画のアバターを超える感動はそうそう出てこないと思っています。VR世界の没入感というのも、視覚をこれ以上あげても限界ではないかと、そこで、“触覚の時代がくるんじゃないかなと!そして、その時に、“commissure”がトップランナーでいたいと思っています。」

堀江「描いている未来像としては、今の触覚を含めた体験が解像度の低い白黒テレビだとしたら、4Kを初めて見た時のような感動があるような世界観を目指しています。それが実現することによって、対象物と直接繋がっている感じ、『これ、自分の身体と完全に同期してるな』っていう自分の身体から延長していうような感覚を色々な場面で展開したいです。例えば、テレビでスポーツを観戦していて、その時の選手の一挙手一投足を感じられる、それが自分と完全にリンクしてる!みたいな体験が、特別なことではなくて、カジュアルにできるようになったらいいなと思っています。」

―最後に企業に向けてメッセージをお願いします―

溝橋「提携イメージとしては、アドバイザリー、共同研究・共同開発、事業提携と3パターンを想定しています。私達は、”Skin-Stretch”という技術を持っていますが、それに縛られることなく、例えば、アドバイザリーに入った場合に『それに関しては、振動で作るべきですね』など、その企業に適したアドバイスをしていきますし、勿論、触覚に関しては、堀江は専門家といえますので、ぜひ、お声がけいただけたらと思います。」
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【株式会社 commissure】
東京大学駒場Ⅱキャンパス 連携研究棟 512室
https://commissure.co.jp/

【Co-Founder 代表取締役 CEO 溝橋 正輝】
1988年、兵庫県神戸市生まれ。大学卒業後は野村證券(株)、(株)サイバーエージェント、
(株)セールスフォース・ジャパンを経て2020年9月にH.R.I(株)代表取締役に就任。
2期連続YonY150%以上の売上成長を達成、
2022年7月に(株)DirbatoとのM&Aによりグループイン。
2021年度より情報経営イノベーション専門職大学の客員講師就任。
2023年1月に堀江新と(株)commissureを創業、代表取締役 CEOを務める。

【Co-Founder 代表取締役 CTO 堀江 新 Ph.D】
1993年、福島県福島市生まれ。博士(工学)。東大先端学際工学専攻にて身体性の
理解に基づいた触覚提示手法の研究や企業との共同研究を主導した。学振DC2・JST
ACT-X研究代表として研究を推進。東大先端研特任助教に着任し、2023年1月に溝
橋正輝と(株)commissureを創業、代表取締役CTOを務める。023年4月より慶応メデ
ィアデザイン研究科特任助教としてムーンショット型研究に従事。
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≪編集後記≫
実は、実際に、ある映像を見ながらの”Skin-Stretch”体験させていただいたのです。なんでしょう、、初めての感覚!ソフトな当たりなのに、視覚との一体感を感じることができるといいますか、、振動とは違う、優しいタッチなんですよね。でも、なぜか没入してしまうような。言葉で言い表すことが大変難しいのですが、この技術が堀江先生のおっしゃるように様々な場面で触れられるようになったら私たちの暮らしは何かが大きく変わるような気がします。


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