インタビュー情報

産学官連携の新しいお土産の開発 ~浜田水産加工品『はまぼこ』~

産学連携情報

島根県立大学  総合政策学部  田中恭子准教授

産学官連携の新しいお土産の開発 ~浜田水産加工品『はまぼこ』~
今回は島根県立大学総合政策学部 田中恭子ゼミで行われた産学官の連携について、田中先生にお話を伺いました。

始まったきっかけ


平成28年度浜田市と島根県立大学との共同研究事業「浜田市の新しいお土産の形」(当研究室4年ゼミ実施)がきっかけでした。

浜田港は特定第3種漁港であり、島根県内随一の水揚げを誇る漁港です。浜田の特選水産ブランド「どんちっち三魚」をはじめとして、年間を通じて数多くの魚が水揚げされ、全国各地へ出荷されています。

上記事業で浜田市の水産加工品土産の現状分析とニーズ調査を実施した結果、水産加工品を更に活かすためには、既存の観光客に加え、ビジネス客、若者などより多くの層に市の水産加工品土産を手に取ってもらう必要があると考え、浜田市の新しい水産加工品土産の開発に至りました。

実際にゼミとしてどのように進めていったか


4年ゼミでの調査結果を形あるものにするため、ゼミの2年生が引き継ぐ形で、平成29年度の共同研究において、製品化へ動き出しました。

はじめに製品を作ってくれる連携企業を探すため、はまだ産業振興機構の協力のもと市内事業者へ打診しました。山本蒲鉾店さんが強くご関心を持ってくださり、連携することとなりました。

ゼミと企業での役割分担を決め、製品設計のためにアンケート調査を行い、ほぼ毎週ミーティングを実施しながら、製品の味、食感、形状、価格帯、パッケージデザイン、商品名等を決定していきました。

製品が完成した段階で試験販売をするために、小売店・土産店を対象として商品説明会を開催しました。

加えて近隣スーパーにおいて、先行販売や試食販売活動を実施させていただき、お客様の反応や購買者層を確認しました。

平成29年6月から動きだし11月15日に「はまぼこ」発売開始となり、その後、新聞ニュースでの効果もあって売上も上々です。山本さんの所へは県外からの問い合わせの連絡も多い状況です。

“はまぼこ”完成までに苦労したこと


ゼミでは試食アンケートを作成し結果をまとめ、ミーティングで改善事項を山本さんへお伝えしていましたが、山本さんは通常の営業を終えた後、連日連夜、文字通りの不眠不休で新しい製品試作に取り組んでくださっていました。

またゼミ生の役割であるパッケージデザインや商品名、レシピの考案、商品説明などの活動でも、まだ知られていない製品の価値をどうやって伝えるべきか、ゼミ生同士でアイディアを出し合い、それをまとめることに苦慮しました。

ゼミ学生の作業負担としては通常時のゼミと比較すると相当多い状況でしたが、学生が実践の中で学びながら実現できる地域活性化の事例として、達成感は大きいものがあったと思います。企業の製品開発のペースや物づくりの難しさ、そこから私達が普段手にしている製品はどれだけの試行錯誤と人々の智恵の結集であるのか、何気なく過ごす大学のあるこの地域の資源や魅力について再認識できたこと等々・・・実践から学んだことは計り知れません。

現在の状況


昨年秋発売されたばかりで市場導入直後である「はまぼこ」を、今年度も山本さんと田中ゼミにて、販売促進・販路開拓していきます。「はまぼこ」はまだ導入直後で、一人歩きするまでの補助が必要な段階です。「あかてん」に続く浜田を代表するお土産として軌道に乗せるまで、販促活動を積極的に展開していきます。

そのために「はまぼこ」のキャラクターをつかった販促グッズを作成しようと、山本さんとともに  クラウドファンディングに挑戦しています。

今後の展望としては、「はまぼこ」を地元の皆さんにより認知していただき、日常的に食べられている、地元で愛される商品となってくれるように取り組みます。同時にお土産として島根県東部、県外にも商品展開していく予定です。

今回の取組で産学官連携に関してのポイントはいくつかあります。

老舗企業である山本蒲鉾店には、柔軟で強靭な理念があり、自社利益のみならず、地元の生産者や企業にも自らの取組を突破口として、学生をはじめとした地域との連携で新製品開発など新しい取組を行ってほしいという共存共栄の精神をその基盤にお持ちです。山本さんはこれまで地域で顔の見える顧客との信頼関係を築くことで、地元と密着した経営を行われています。これらが産学官連携という異業界の連携や、お土産という地域との関連なしには語れない今回の商品開発に必要だったように思います。

また、製品の改良段階でミーティングを重ね、山本さんに営業後に何度も大学を訪問していただき、私達も山本蒲鉾店の物づくりの現場にお邪魔し、納期までの製造のお手伝いをさせていただきました。このように緊密な関係が築かれ、連携目的や取組姿勢について相互に理解できたことが、背景が異なる相手と一つの製品を作り上げる過程で重要になりました。さらに企業側の視点だけではなくゼミ生の製品への思いも汲み取り、学生ではありますが一連携先として接して下さったことも、彼らの提案や新たな発想を製品開発に活かすことに繋がりました。このような連携は、学生の地域への関心を高め活躍の可能性を引き出せた取組となったポイントではないかと思います。

本学総合政策学部は島根県の西部にあり、県内でも特に課題先進地といわれる環境にあります。連携する各アクターの役割は幅広く多様で、相互に強く影響を与え合う関係であることが多いです。産学官という立ち位置を超えて踏み込んだ連携が必要となる環境であるように思います。

地域の資源や魅力について再認識できたこと等々、学びながら実現できる地域活性化の事例として、達成感は大きいものであったと思います。

田中 恭子准教授 / 島根県立大学 総合政策学部
経営組織論、経営管理論が専門。企業再生時における再生状況の認識相違と、企業の再生行動の多様性を中心に、組織変革論を主な研究課題としている。小規模・高齢化集落の活性化に関心をもち、経営的視点から地域再生に向けた研究にも注目している。

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