アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)

【知恵の経営】あえて「うるさ型社員」を配置する創業社長

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法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司氏

 香川県高松市に「創裕」という社名のサービス関連企業がある。設立は1993年12月、現社長の川北哲氏が1人で創業した。社名のとおり、主要事業はゆとりを創ることだ。具体的には、温浴事業、外食産業、公共施設の運営、そしてボディケアサービス事業などである。

 創業者の川北氏はもともと、地元の全国農業協同組合連合会(JA)職員であったが現状に満足せず、あえて安定した職場を辞めて起業家の道を選んだ。

 

◆他社を徹底研究

 現在の事業は、業界では最も後発で隙間はあまりなかったが、先発企業の経営を徹底的に研究し、差別化戦略を考えた。とりわけ重視したことは、サービスの提供者である社員の確保と育成である。同社は、業界の常識である非正規社員の雇用ではなく、多くの社員を正規社員として雇用している。

 また、社員のモチベーション(士気)を高めるため、経営の超ガラス張りと社員満足度を高める経営に尽力してきた。さらに、「イエスマン」で周りを固めたがる経営者がとかく多い中、川北氏はあえて経営者に平気でたてつく「うるさ型」を置いている。

 こうした経営姿勢は、次第に社員と顧客の心をしかと捉え、また、とかく暴走しがちな創業経営者をいさめる効果をもたらし、初年度こそ赤字経営を余儀なくされたが、次年度から今日まで増収増益である。ちなみに、現在では施設を香川県内だけではなく、福岡県、佐賀県、兵庫県、奈良県にも有し、社員数は約400人である。

◆社員に自筆手紙

 先日、同社を経済産業局の職員たちと訪問する機会があったが、経営が本物であることが瞬時に理解できた。例えば、会社の入り口どころか外まで3S(整理・整頓・清掃)が行き届き、また2階の事務所には筆者らの名前を書いた「ウエルカムボード」が置かれていた。われわれが到着すると、事務所の十数人のスタッフは、全員がニコニコ顔で立ち上がって心から歓迎してくれた。

 応接間で川北社長は「これが私の宝です。この仕事は私が社長である限り続けます」と分厚いファイルを私に見せてくれた。中身は川北社長が給料日に全社員の給料袋に入れた「社長の手紙集」であった。

 その手紙はワープロではなく、川北社長が自筆で経営の考え方や進め方、会社への思い、さらには社員や家族への思いが綿々とつづられていた。

 これほど自身に厳しく、社員には愛情を降り注いでいるトップは少ない。このおよそ20年、癒やしブームということもあり、温浴施設は今や飽和状態にある。こうした中、最も後発企業である創裕が、なぜ成長発展したか、よく理解できた。

【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。
「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

「フジサンケイビジネスアイ」

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