知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.2

第6回

商品カタログの電子版をホームページに掲載しただけで著作権侵害になる場合があるの!?~支分権にまつわる話②

堀越 総明 2013年7月8日
 

表紙にはセンスの良い写真を採用!斬新なカタログで売上は前年比10%アップ!!

中堅の事務用品販売会社に勤務するA子さん。入社3年目の今年、初めての人事異動で販売促進部に転属になりました。新しい職場で緊張しながらも、快活に業務に取り組むA子さんは、たちまち上司や先輩の熱い信頼を得て、来季の商品カタログの編集を任されることになりました。
B部長  「A子さん、今季の売上はいまひとつでね、商品カタログの出来が良くないからとも言われているんだよ。来季の商品カタログは、若者らしい斬新な発想を期待してるよ。」
A子さん 「私、学生時代に学内向け情報誌の編集をしていたんです。すてきな商品カタログを作って、売上がアップするようにがんばります!」
B部長  「よし、その意気その意気。」

B部長に直接激励されたA子さんは、ますます張り切ります。商品部や営業部と連日深夜まで打ち合わせをして、トレンドをキャッチした斬新な特集ページをまとめ上げました。
A子さん 「あとは表紙だわ。お客様の目を惹くすてきな写真を使ってみようかしら。」
A子さんは、翌日すぐに、センスが良いと評判のレンタルポジのショップに連絡し、有名アーティストが撮影した写真を借りてきました。そして、カタログが発行されると、お客様からの高い評判をよび、売上は目標を10%も上回る好調な滑り出しとなりました。

新規顧客開拓を目指し、商品カタログの電子版をホームページから配信することに!

B部長  「A子さん、商品カタログはすごい評判じゃないか。営業部のみんなもお得意様に喜んでもらえるんで、カタログを配るのが楽しいって言ってるよ。」
A子さん 「ありがとうございます!」
B部長  「毎日夜遅くまでがんばったそうだね。若いのにガッツがあるね。売上も上がって、私も社内で鼻が高いよ。」
A子さん 「ところで部長、この商品カタログを電子版にして、わが社のホームページから見られるようにしたらどうでしょう?新規顧客開拓にもつながると思います!」
B部長  「そりゃ名案だねー!早速やってみなさい。」

商品カタログの電子版がホームページにアップされると、これがまた評判となり、新規のお客様からの連絡も増えていきました。「A子さん、すごーい!」と同僚や後輩からも注目を集め、得意満面のA子さん。しかし、そんなある日、A子さんに総務部のC課長から、呼び出しの内線電話が掛かってきました。「特別社内表彰かしら!」とウキウキしながら、総務部に出向いたA子さんに、C課長は一通の内容証明郵便を差し出しました。
A子さん 「ちょ、ちょ、著作権侵害???」

WEB媒体での利用は印刷媒体とは別にライセンスが必要となる場合があります

C課長が言うには、A子さんが商品カタログの表紙に使用した写真が問題だったということです。「あれ?A子さんはちゃんとレンタルポジのショップで正式に借りてきた写真を使用していたはずでは?」と思われる読者も多いかもしれません。確かにその通りです。それではいったい何が問題で、カタログの表紙に使用した写真のことで、著作権侵害の警告を受けてしまったのでしょうか?

前回のコラムでも少し触れましたが、私たちが普段「著作権」と言っている権利は、実は、複製権、上演権、演奏権、公衆送信権、口述権、展示権、譲渡権、貸与権などといった様々な権利(これらを支分権といいます)の総称のことを指します。通常は「著作権を譲渡します」とか「著作物の利用をライセンスします」という契約をする場合は、こうした支分権すべてをひっくるめた「著作権のすべて」について行うことが一般的ですが、中には「複製権だけ譲渡します」とか「演奏権だけライセンスします」といった契約も珍しくはありません。

さてA子さんが借りてきた写真ですが、A子さんはレンタルポジのショップに連絡したときに、「商品カタログの表紙に使います!」と言ったため、お店の人は印刷媒体に掲載するための料金のみで貸し出しの注文を受けていました。しかし、商品カタログの電子版を作成して、ホームページにて配信するためには、別途特別料金が発生することになっていたのです。

著作物のライセンス契約の際は、その利用範囲を必ず確認するようにしましょう!

デジタル技術とインターネットの普及により、現在では、写真画像のようなデータファイルは一瞬で複製でき、また一瞬で世界中に配信できるようになりました。写真のデータファイルを有料で貸し出ししているお店にとっては、紙の印刷媒体のみに利用される場合と異なり、インターネットで利用される場合は、違法コピーされてしまうリスクは格段に高くなります。そこで、そもそもインターネットによる配信での利用を禁止しているお店や、インターネットでの配信は認めてはいるものの別途追加料金が必要になるといった対応をしているお店が多く見受けられます。
今回のケースでは、A子さんは、借りてきた写真について、紙の印刷媒体に掲載する権利(複製権)の許諾はもらっていたのですが、残念ながら商品カタログを電子版にしてホームページにて配信する権利(公衆送信権)の許諾は受けていなかったということになります。

さて、「著作権侵害をしてしまった・・・」と落ち込むA子さんでしたが、B部長が「A子さんは悪くない。すべて私の責任です!」と総務部長に掛け合い、無事おとがめなしとなりました。また、「こんなに新規顧客が増えているのに配信中止にできるか!」というB部長の情熱に押され、会社はレンタルポジのショップに追加料金を支払い、電子版カタログの配信も引き続き行われることになりました。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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