知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.2

第4回

お店のBGMにお気に入りの音楽CDをかけると著作権使用料がかかるの!?~演奏権にまつわる話

堀越 総明 2013年5月9日
 

念願のカフェ開店!売上アップの決め手はセンスの良いBGM!?

この春、長い間勤務した大手電機メーカーを退職し、念願のカフェ「イノベーション」をオープンさせたA男さん。いまは、愛妻のB子さんと一緒に、毎日接客や調理で忙しくも楽しい日々を過ごしています。
お店の定休日に、A男さんとB子さんは仲良く、街で評判のカフェに敵情視察に出かけました。いつものように混雑している店内は、センスの良いBGMが流れ、活気のある雰囲気となっています。

A男さん 「おしゃれな音楽だなー。この曲は流行っているの?」
B子さん 「あなた、知らないの!?EXILEの新曲よ。」
A男さん 「やっぱりBGMは大事だよな。うちのカフェは何の音楽もかかっていないからなぁ・・・。」
B子さん 「そうねぇ。人気がある音楽のCDを買って、うちのカフェでもすてきなBGMを流しましょうよ。」

数日後の朝、開店すると、買ってきたばかりのCDを店内で流し始めたA男さん。少し遅れて出勤してきたB子さんは、その曲を聴いて絶句しました。

ル~ル~ルルル~♪ラ~ラ~ラララ~♪

B子さん 「あなた!この曲は何なの!!」
A男さん 「由紀さおりの『夜明けのスキャット』だよ。」
B子さん 「そんなことわかってるわよ!でもカフェのBGMでしょ!EXILEとかじゃないの!?」
A男さん 「美しい歌声だろ!?それに、いまアメリカのジャズの人たちともコラボしてて話題なんだぞ。」
そして、A男さんは小声で、そっと指差しました。
A男さん 「ほら見てみろよ、あのお客さん。」
B子さん 「・・・な、泣いているわ。。。」
A男さん 「あのお客さんも。」
B子さん 「・・・・・せ、せ、背中がふるえているわ。。。」


「夜明けのスキャット」のCDを流し始めてからというもの、初老の紳士の常連客が増え、カフェの売上も大きく伸びていきました。「あなた!これからもBGMは絶対『夜明けのスキャット』よ!」と意気込むB子さん。しかし、ある日、著作権管理団体Jより一通の郵便が届きました。
A男さん&B子さん 「ちょ、ちょ、著作物使用料を支払え?????」

音楽CDをお店で勝手にかける行為は、著作権者の演奏権侵害にあたります!

「CDはお金を出して買ったので、どこで流そうが自分たちの勝手だ!」と言う人を度々見かけます。確かに、そのCDは買った人の所有物であり、所有権にもとづいてその人が自由に使うことができそうな気もします。しかし、こうした音楽CDのみならず、DVDやブルーレイのソフト、あるいは本などは注意が必要で、いくらお金を出して買ったとしても、その人が買ったのは「著作物」が収録されているCDやDVDといったプラスティックの円盤や、本といった紙の束などの物体を買ったに過ぎず、その著作物の「著作権」まで買ったわけではないのです。

作曲家や作詞家など音楽の著作権を持っている人、またはその著作権者から著作権を譲り受けた人は、著作権の中のひとつの権利として、その楽曲を公衆に聴かせることを目的として演奏するという権利(演奏権)を独占的に持っています。「演奏」というとライブ演奏のように思ってしまいそうですが、実はこの演奏の中にはCDをかけて公衆に聴かせる行為なども含まれているのです。
A男さんとB子さんは、「夜明けのスキャット」のCDを買いましたので、CDという物体の所有権は取得しましたが、「夜明けのスキャット」の著作権までを買ったわけではありません。つまり、カフェなどで「夜明けのスキャット」のCDをかけてお客様に聴かせるためには、原則としてその著作権者の許諾をもらう必要があるということになるのです。

これは音楽CDに限ったことではありません。映画やアニメのDVDを買ってきて、カフェのテレビで上映したりすることも、同様の理由から、著作権者の許諾をもらわないといけないことになっています。

著作物使用料の支払いはJASRACで手続きすればOKです

大半の音楽の著作権は、著作権者から依頼を受けてJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)という団体が管理しています。カフェなどの店舗で好きな音楽のCDをかけてBGMとする場合は、原則としてJASRACに著作物使用料を支払う必要が出てくるのです。(ちなみに、カフェ「イノベーション」のような面積500㎡以下のお店は年額で6,300円となります。)ただし、街中のお店がよく契約している有線放送については、有線放送の運営会社がお店に代わってJASRACに著作物使用料を支払ってくれているので、あらためて直接JASRACに手続きする必要はありません。

A男さんとB子さんは、カフェの売上が大きく伸びたこともあり、JASRACにきっちりと著作物使用料を支払うことで、引き続き「夜明けのスキャット」のCDを店内で流すことにしました。

ル~ル~ルルル~♪ラ~ラ~ラララ~♪

今日もA男さんとB子さんのカフェでは、あちらこちらでむせび泣く初老の紳士の姿を見ることができます。

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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