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朝日税理士法人 代表社員   山中 一郎

顧客に伴走して、その真のパートナーになる 国内外のネットワークを活用、変化に挑む企業を支援

税務や会計などの分野で幅広く活動する朝日税理士法人は2022年5月に創立20周年を迎えた。海外ネットワークを築いてから10周年という節目の年でもある。法人から個人までの幅広い顧客が抱える問題に、きめ細やかなサービスを展開する。山中一郎代表社員は「我々は顧客に寄り添う伴走者として、その真のパートナーになる」と意気込む。

――創立の経緯は
02年の税理士法改正で税理士法人制度が創設された。納税者の利便性向上と信頼される税理士制度の確立が狙いだった。これに合わせて02年5月に朝日税理士法人も法人化した。創立以来、税務・会計の総合サービスを提供する法人を目指してきた。ビジネス環境が大きく変化する中、その時代のニーズに対応して、顧客から信頼される真のパートナーでありたいと考えている。
――確かに、企業を取り巻く環境変化は激しい
企業の事業内容は時代とともに変わっていくものだ。しかし日本企業を見ると、例えばM&AやIPO(新規株式公開)、海外進出などに積極的な企業、つまり変化を望む企業と、そうでない企業に分かれる。企業にとって「従業員や顧客を大事にする」といった変わらない部分は重要だが、同時にそのビジネスモデルは時代・社会ニーズに対応して変えるべきで、変わらない企業は衰退するだけだ。
失われた30年を通じて、日本は相対的に地盤沈下してきた。一方で国内を見ると、企業の生産性はあまり変わらず、結果として賃金の伸びも僅かである。成長力の乏しい国内市場だけを対象にして、企業がそのビジネスモデルを変化せずに存続していくのは難しい時代になってきたと感じている。
――日本経済の先行きに危機感を覚える
日本にはいわゆるユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未公開企業)がなかなか出てこない。日本には今、それは6社しかないといわれている。一方で、中国や韓国だけでなくてインドネシアやタイなどASEAN(東南アジア諸国連合)でも多くのユニコーン企業が誕生している。欧米のビジネスモデルを直輸入して現地化、さらに自国だけでなくASEAN全体といった、幅広い市場をターゲットにして収益を獲得し成長しているからだ。日本は言葉の問題や既得権益を守るといった傾向があり、新陳代謝が起きにくい。しかしグローバルな市場でも認められる可能性を持つ、ユニークなビジネスモデルをもつスタートアップ(新興企業)は少なくない。それにもかかわらずグローバル市場を目指す企業が多くないのは残念だ。
日本では戦後、世界を指すベンチャー企業が多く生まれて、それが現在の大企業として存在している。我々にはそのDNAが伝わっているはずだ。確かに日本にはすばらしいインフラや安全、清潔な環境があるが、これを維持発展させていくためには経済の成長が欠かせない。いわゆる「ゆでガエル」状態から抜け出すことが必要だ。
――そうしたなかで、次の20年、30年をどう迎えるのか
朝日税理士法人の顧客は企業と個人であるが、ここでは企業にフォーカスして話したい。 企業は変化すべきであるが、企業の目的が利益を出して、その結果として税金を払い、かつ雇用を守るということには変わりがない。利益と納税は切っても切れない関係にあり、そこにも我々の出番がある。企業に寄り添い、将来を考えてトータルで企業成長を支援する。言い換えると、企業と一緒に喜びを分かち合える関係を構築する。 企業に会計・税務を通じて関わり、その成長を支援していくことが我々の使命だ。
――そのために充実した国内ネットワークをどう生かす
本部(東京都千代田区)、城南支社(東京都世田谷区)、神奈川支社(横浜市西区)に加え、昨年6月に合併した福岡支社(福岡市中央区)の4拠点を軸に、国内グループ『朝日税理士法人全国協議会』との連携を通して北海道から九州まで全国隙間ないサービスを提供している。02年の法人創立時からグループを結成しており、総力結集と相乗効果を図るため月1回の代表者会議を開催し、情報収集と共有に力を入れている。
――今後全国の国内グループとの関係をどのように進めていくのか
日本全国に存在する「成長を志すローカル企業」とどう付き合うべきなのかを考えると、日本全国をカバーした単一法人でなくて、現状のように、地域に根差した強い税理士法人がローカルに存在して、そのネットワーク展開を行うことにメリットがあると考えている。地域ごとに文化・風土が違うからで、その地域に求められているサービスを軸に展開する方が、顧客の役に立てると考えるからだ。 ただ、ネットワークを立ち上げてから20年がたったので、体制の在り方を含めて、それも見直す必要があるかもしれない。
――現在の海外展開は
日本とASEANをつなぐ会計の専門家ネットワークとして『朝日ネットワークス』を立ち上げて10年がたった。『日本の会計事務所の信頼を海外でも』をコンセプトにタイ(12年2月)、インドネシア(12年4月)、フィリピン(13年11月)で会計事務所を運営している。加えて中国やインドなどの会計事務所とも連携するほか、当然ながら日本の朝日税理士法人グループ各社とも連携して、海外進出もしくは海外取引をしている日本企業の会計・税務などの業務をサポートしている。
――今後の海外展開は
12年当時の平均為替レートは1ドル=78円という超円高だった。それから10年がたった今、140円台という急激な円安が進んでおり、これでは新しい国への単独進出よりも、各国の有力事務所との提携戦略の方が有効であると考えている。というのも円安に加え、ロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレ進行など日本企業を取り巻く世界情勢が激変して、不透明感が強すぎるからだ。
少子高齢化が進む日本は、相対的に貧しくなった。先日フィリピンに出張したが、マニラにあるBGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)という街などは、明らかに日本の大手町よりも高層化や近代化が進んでいる。日本は先進国だと思うとそれは決して正しくない部分もある。また今後の日本の市場規模を考えても、海外戦略はますます重要になってくる。コロナが落ち着いて、海外展開について相談数が着実に増えてきたのは喜ばしいことだ。またアウトバウンドだけでなく、超円安時代に即したインバウンドは我々にとって大チャンスだ。それに応えらえる朝日税理士法人にならなければいけない。
――これから注力する分野と必要な人材は
税務・会計をベースとして、海外進出・IPO・M&A(企業の合併・買収)・事業再生、相続・事業承継などに今は注力している。 我々の役割は、個人・企業の成長と従業員の雇用を守るために顧客をサポートすることに尽きる。その伴走を務めるのが楽しく、顧客に感謝されることにこの上ない喜びを感じる。そのために重要なのは、弊法人の「人材」で、その採用が重要である。 ここで我々が求める「人材」の質だが、まずは自分に、そして周囲に対して誠実に仕事を行うこと、変化を恐れないことが必要だ。 企業のビジネスモデルの変化に応じて、先ほどの我々の注力分野も変化する。目の前の顧客のために、そして将来の顧客のために一緒に仕事をしてくれる「人材」を我々は求めている。
山中 一郎(やまなか・いちろう)
朝日税理士法人 代表社員
公認会計士・税理士

朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。
国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。

◆主な著書
「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)
「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)
「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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