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マーケティング新時代 造り物の終焉

第8回

情報伝達の変化とテレビの変化

イノベーションズアイ編集局  マーケティングコンサルタント N

 

インターネットコンテンツの普及により、徐々に衰退が進むテレビなどのマスメディアだが、今後はどのように変化していくのだろうか。

ソーシャルネットワークで誰もが情報発信できるようになり、メディアと個人が双方向で情報発信して情報が拡散されていく現代は、テレビ放送で発信される情報を一方的に受け取るだけだった頃とは情報の伝達が大きく変化している。

今回は、このような現代におけるコンテンツの変化や情報伝達の変化の影響について見ていきたいと思う。




広告費から見るメディアの変化

株式会社電通の報告によると、2022年(1月~12月)の日本の総広告費はコロナ禍以前を上回り、過去最高の7兆1千億円超えとなっている。この背景にあるのはインターネット広告の急成長だ。

4大メディアと呼ばれる新聞、雑誌、ラジオ、テレビの広告費が減少する一方で、インターネット広告は急激な増加を続けている。同報告での比率は以下のようになっている。

4大メディア広告  33.8%

インターネット広告 43.5%

プロモーションメディア広告 22.7%

前年の2021年に初めてインターネット広告が4大メディア広告を上回ったが、その時の差が3.7%であったのに対し2022年は約10%上回っており、急激な移り変わりが鮮明となっている。

インターネット広告市場は今や3兆円を超えており、わずか3年で1兆円以上市場規模が拡大している。

「Youtube」や「Netflix」「Amazon Prime Video」などの動画コンテンツサービスにおける広告費増加がインターネット広告の急激な増加要因のひとつだが、民法テレビ各局の無料オンライン配信をまとめたサービスである「TVer」での広告費など、4大メディアの企業もインターネットメディアでの収益は増加している。


コンテンツの変化

インターネット上のコンテンツが人気を得ている理由として、自分の都合に合わせて閲覧できることやマスコミでは拾いきれないニッチな情報が探せること、サブスクリプションサービスなどが挙げられるが、その他に忖度なしの情報の存在がある。

インターネット上のコンテンツは、テレビのように広告主の意向を気にせず発信することも可能なため、素直な意見や考えを記事や動画として掲載することができる。中にはマスコミが取り上げにくい情報をあえて発信し、人気を得ているコンテンツも存在する。

最近はテレビでもダメなものはダメとした上で良いものを良いと紹介するような、これまでやりにくかったであろう内容の番組が人気を得ている。例えば、「ジョブチューン」という番組では、出演する企業の商品を一流の料理人が厳しくジャッジし、ダメ出しも当然のように放映される。また、「サタプラ(サタデープラス)」という番組ではお題となったジャンルの各社の商品を詳細に検証し、忖度無しのコメントも放映してランキング形式で発表している。タレントにおいてもマツコデラックス、有吉、たけし、所ジョージなど、良いことも悪いこと素直に発言するタイプのタレントが出演する番組は多い。

インターネットに限らずテレビも含め、ホンネで話すコンテンツ需要が増加する一方、褒めるだけのコンテンツで人を惹きつけることは難しくなってきている。忖度なしの放映に同意している企業も増加していると思われ、そういった企業は、商品やサービスのアピールも大切だがそれ以上に信用されることを大切にしているのだと推測される。


情報の変化

インターネット上では、情報をキャッチした不特定多数の人が一早く情報発信することができ、世界のニュースからローカルニュースまで、情報量も速度も4大メディアを凌いでいるといってもよいだろう。

但し、品質についてはピンキリで、間違った情報も多数存在しており、全体で見ると信頼性は高いとは言えない。しかし、信頼できる情報が増加していることも確かで、閲覧者の取捨選択能力が問われるものの、情報としての価値は高くなっている。ニッチな情報や大手メディアでは報道されない情報の需要などもある。

テレビでも出演者が忖度なしで発言することも増えている。出演者やアナウンサーが正直な意見や聞きたい質問を投げかけるシーンもよく目にする。視聴者側の疑問や意見を意識して発言をするようなアナウンサーは人気を得ているようにも思われる。視聴率が下がり続けるテレビも緩やかではあるが変化は起こっている。


双方向の情報発信による変化

地上波でジブリ映画が放映されれば、X(旧Twitter)でその映画のコメントがトレンド入りしたりする。こういった個人の反応はメディアが発信した情報を拡散するだけに留まらない。テレビの生放送で失言をすれば、批判や擁護の意見が飛び交い、報道に偏りがあれば非難の声が一斉にあがる。ジャニーズ問題ではジャニーズに対してだけでなく、メディアに対しての批判が多数あったことはご存じだろう。

情報発信は既に双方向で行われることが日常となっており、メディア側に都合のよい情報を一方的に発信することなどはできない。これは情報を伝えるメディアに限った話ではなく、情報元となる企業も同様で、たとえプレスリリースであっても偏った情報であれば、賛否の意見が飛び交うこともある。


話題となるニュースの変化

最近話題となったニュースに「日本レコード大賞」がある。賞の選定が主催者側の都合によるもので正当な評価ではないという意見が溢れ、なかには主催者側の内情を詳しく解説している人もいる。

賞やランキングに関しては、ブランディングや広告として活用されることも多いため、かつては公正とは言えないものも多々あった。しかし、今の時代は公正でないものはインターネット上で多くの指摘や批判を浴び、結果的に賞やランキング自体の信用を失墜させることになる。

既に多くの企業やメディアは双方向で情報発信が行われることを前提としており、日本レコード大賞のような事例は最近ではめずらしい。ただ、こういった内容は公正であるかどうかの断定が難しく、何らかの根拠を提示できない限りテレビや新聞で報道されることはない。事実しか報道しないというポリシーのためであり、忖度などではない。対して、インターネット上に掲載される記事にはそういった制約もなく、多数の記事が掲載される。

ニュースがテレビではなくYahooニュースなどのインターネット上の記事で話題となりやすいのは、即時性だけでなく、こういった発信される情報の差にも要因がある。また、記事のURLをコピーしてすぐに共有できるデジタル情報はソーシャルメディアとの親和性がよいことも理由だ。


今後の変化の方向

テレビも含めた現在のメディアは、「都合」をできるだけ排除して情報を発信するようになっている。少しでも「都合」が垣間見える報道は、すぐさまインターネット上で餌食となり拡散されてしまう恐れがある。そのため、特に政界やスポンサー関連の「都合」が絡む報道については、例え忖度する気は無くとも報道しない選択となることが多い。

一方で、信頼されることを優先する企業は増加している。政治家については不明だが、不要な配慮をせず伝えるべき情報を正しく伝えることを良しとする流れも一部には出てきている。この変化が少しずつでも進めば、スポンサー契約や利害関係と報道は切り分けるという業界文化ができる可能性もないわけではない。

テレビやマスメディアも、そしてスポンサー企業も情報化社会に適応して変化しようとしている。多くの人や企業が関わる業界で、これまで長年積み重ねてきた慣習はそう簡単には変えられないだろう。しかし、変化することができればテレビをはじめとするマスメディアが本来の役割を担うことはできるだろう。

そして、これだけ情報が飛び交う現代は、都合を優先するようなやり方は通用しない。このような社会の変化に対応する最善の方法は、テレビやインターネットに関係なく、真実が伝達されても問題ない行動をとることだ。


 

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