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マーケティング新時代 造り物の終焉

第7回

フェイクニュース問題と今後のメディア

イノベーションズアイ編集局  マーケティングコンサルタント N

 

近年「フェイクニュース」が世界的に問題となっているのをご存じだろうか。フェイクニュースとはその名の通り作られた偽のニュースなのだが、加工された動画や画像が精工になっており本物と見分けがつきにくい上、そのインパクトの強さからSNSなどで急速な勢いで拡散され信じてしまうのだ。

アメリカ大統領選挙でもフェイクニュース合戦が行われていたと言われており、政治だけでなく株価など経済への影響が出ているものもある。日本でも「静岡の大雨災害の画像」や「熊本地震でライオンが脱走した画像」などのフェイクニュース投稿が拡散され、テレビニュースでもフェイクであることを注意喚起された。




フェイクニュースが作られる理由

冗談で作成する人やSNSの「いいね!」ほしさに作成する人など、軽い気持ちでフェイクニュースを拡散してしまう人もいる一方、意図的にフェイクニュースを拡散し、政治や経済に影響を与えようとする人、マーケティングとして活用したり、直接的な利益を得るために情報操作しようとする人もいる。また、話題となるフェイクニュースを作り、アクセス数を稼ぐことで多額の広告収入を得ている組織も存在する。

昔から「これを飲めば痩せる」や「必ず儲かる」のような根拠のない情報が流されることはあった。しかし、これらは限定的な範囲で情報を拡散していたから成り立っていたようなところもあったが、フェイクニュースは、嘘とはわからないレベルに加工された動画や画像がソーシャルメディアを通じて瞬く間に拡散され、多くの人に影響を与える可能性があり、組織的な運用が不要で個人が情報発信できるという点でも性質が少し異なる。


フェイクニュースが広がる背景

このようなフェイクニュースが増加する背景には、メディアが報道しないような情報を個人が発信し、拡散され、一般の人にも認知されるような現代の状況も一つの要因になっている。

メディアは嘘を報道することはないが、政治的な配慮やスポンサーへの配慮など、報道しない自由の名のもと真実の報道を避けることは多い。「隠された真実」や「報道されない闇」などのタイトルがついた記事や動画を目にすることも多いのではないだろうか。

今の時代、メディアが報道しない情報でも一般の人が知っているということは珍しくない。また、テレビよりインターネット上の情報の方が、発信が早いことも日常となっている。インターネットメディアは真偽入り混じっているとは言え、ある程度信用できるソースも多くなっているのだ。

そんな中、「メディアでは報道されていないが、実は・・・」というようなフェイクニュースが、本物としか思えない画像や動画とともに発信された場合、思わず目をとめてしまう人は多いだろう。信じてしまう人も一定数出てしまうのは当然だ。そして信じた人は他の人に共有したいという気持ちになり、更なる拡散へと繋がる。


フェイクニュースへの対策

総務省をはじめ、各種メディアでもフェイクニュースに対しての注意が呼びかけられており、特に政治や経済に影響を及ぼすようなフェイクニュースは、テレビでも取り上げられ注意を呼びかけている。しかし、すべてのフェイクニュースを拾い上げることは不可能だ。

現在、世界中でファクトチェック団体の設立が進んでいる。ファクトチェックとは、言葉の通り情報要素の信用性をチェックすることで、人力による調査の他、文書や画像を、AIを用いてチェックすることもある。アメリカではファクトチェックが認知されはじめているが、日本ではまだほとんど知られていない。

アメリカでは政治的な発言や記事は基本的にファクトチェックされており、世界各国でも取り組みが進んでいる。

日本でも大手メディアやYahooなどのプラットフォーム事業者に加え、ファクトチェック推進団体が既に活動しており、Webサイト上でファクトチェックすることもできる。


ディープフェイクの脅威

「ディープフェイク」は実際の動画や画像、音声を深層学習(ディープラーニング)を用いることで、素材の人物があたかも実際に行動したかのような動画や画像、音声を作り出すAIを活用したフェイクコンテンツだ。

このディープフェイクの恐ろしいところは、本人画像や音声を学習して生成しているため、ある意味本物と違わない人物を作成者の意のままに動かせてしまえるところだ。

具体的なディープフェイクの例として、元アメリカ大統領のトランプ氏が逮捕される画像やウクライナのゼレンスキー大統領が武装解除を呼びかける動画などが有名だ。

日本でも岸田総理の音声で入力した文書を読み上げるアプリが話題となったが、これを利用すれば誰でも簡単に岸田総理が発言しているかのようなコンテンツを作成できる。

ジョークコンテンツ用途を想定したアプリだと思うが、悪意ある使い方をされるとフェイクニュースとして拡散されてしまうこともあり得る。岸田総理本人と区別がつかない声で「消費税30%を導入する。」と発言する動画が拡散された場合などを想像するとわかりやすい。


今後のフェイクニュース

フェイスブックやインスタグラムはAIを利用した政治広告にはAI利用を明示するように求めており、Youtubeは生成AIで作成された動画は明示ラベルの貼付を求めることとしている。

これらの状況を見ると、今後は情報発信する際にフェイクであることを明示することが一般化し、法規制なども含め規制されていくことが予想される。

一方、怪しい情報を受信した際はファクトチェックにかけ、フェイクかどうかのチェックを行うことが一般的になるのではないだろうか。


フェイクニュースに対するメディアのあり方

フェイクニュースは基本的に関心を集める題材で作成されるため、世間の関心事に対し、メディアが正しい情報を一早く報道すればフェイクニュースの拡散を抑えられる可能性もある。

メディアが先を越すような即時性のある報道ができれば、フェイクニュースの真偽は見抜きやすくなり、作成する側への牽制にもなる。

しかし、現在のメディアでは問題もある。今のところ目立つ事例は聞かないが、話題性があってもメディアが報道しない傾向にある情報、つまりメディアにとっては拡散することが不都合な情報がフェイクニュースとして発信された場合、メディアがフェイクニュースであることを注意喚起すれば、触れたくない情報を拡散することになってしまう。そのため、フェイクニュースを悪用したい側からすると狙いどころとなる可能性がある。

メディアだけでなくスポンサーなども含め、報道する側の損得に関係なく、真実については報道されることが当たり前になることが今後のメディアのあり方ではないだろうか。どのみち現代はマスメディアで報道せずとも真実の情報は広がる可能性が高い。報道の判断基準としての「都合」が通用しなくなるのは時間の問題だ。


 

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