頑張れ!ニッポンのものづくり

第13回

ロボット競技で人財育成――「ロボコン in あいづ2013」

加賀谷 貢樹 2013年12月25日
 

2013年10月27日、あいづドーム(福島県会津若松市門田町)で「ロボコン in あいづ2013」が開催された。

伝統産業から先端分野まで、福島県会津地域のものづくりが一堂に会する「会津ブランドものづくりフェア」とタイアップで行われた同イベントは、 ロボット製作や競技大会を通じて、ものづくりの楽しさや素晴らしさを子供たちや学生、地域社会に伝え、将来のものづくりを支える人財の育成につなぐことを目的にしている。

会津若松市および同市教育委員会、会津地域の行政および企業、学校関係者が協力してロボコンを実施。 会場の設営から当日の競技進行までを、工業高校生たちが中心になって行っている文字通りの手作りイベントだ。 08年度に始まり、今年で6回目を数える。小学5年生から社会人まで参加でき、今回は合計47チームが出場。 競技参加者や関係者、観客を合わせて約200名が会場に詰めかけ、手作りのロボットが繰り広げるバトルに興じた。

2013年10月27日、会津若松市のあいづドーム特設会場で行われた「ロボコン in あいづ2013 空き缶かたづけロボットコンテスト」。 競技参加者、関係者、観客合わせて約200名の人出で賑わった。

「ロボコン in あいづ」の特徴は、ロボット同士が直接ぶつかり合うのではなく、毎回あるテーマに沿った作業を行い、得点を競っていること。 2012年には「じゃがいも収穫ロボットコンテスト」、2011年には「稲刈り&運搬ロボットコンテスト」が行われており、今年は「空き缶かたづけロボット」による競技が行われた。

「大人が勝てない」ガチンコ勝負

今回は47チームが参加。主催者が支給するタミヤ「4chリモコンロボット製作キットDX」をベースに、ルールの範囲内で改造を加えて「空き缶かたづけロボット」 1辺910mmの正方形の競技コート。手前の「空き缶拾い場」に置かれたスチール缶を、ロボットで階段状の棚に移動させて「保管」する。高い棚ほど得点倍率が高い

競技コート(写真参照)に設けられた「空き缶拾い場」から、ロボットでスチール缶を階段状の棚に移動させて得点を競う。 空き缶を立てた状態で1個置くと2点、2個積み重ねて置くと6点、3個積み重ねて置くと12点になり、高い棚に空き缶を置くほど得点倍率が高くなる。

参加者には事前にタミヤ「4chリモコンロボット製作キットDX」が無償配布され、同キットをベースに、規定の範囲内で思い思いにロボットを製作。 夏休みには、会津工業高校および喜多方桐桜高校で「学校開放講座」(ロボット作りのお手伝い)が催され、両工業高校たちが小学生チームにロボットの製作指導を行った。

同じく準決勝に進んだ城南小学校チームは、空き缶の飲み
口に鍵状の部品を引っかけて吊るし上げ、巧みに缶を移動させた
会津学鳳中学校Iチームは、バケットを縦に開き、大量の缶を一度に運ぶ戦術で準決勝進出 決勝トーナメントにも駒を進めた昭和電工喜多方事業所(左)と会津大学・画像処理講座(右)の勝負

同キットの標準付属品であるロボットハンドで空き缶をつかむタイプのロボットが多かったが、会津学鳳中学校Iチームは、 バケット(標準付属品はバケットを上下に開く)を左右に開き、大量の缶を一度に運ぶ戦術で準決勝に勝ち進んだ。 また、同じく準決勝に進んだ城南小学校チームは、空き缶の飲み口に鍵状の部品を引っかけて缶を吊るし上げていた。 こうした柔軟なアイディアと、巧みなリモコンのスティックさばきに観客も驚いていた。 今回は、空き缶の材質がスチールであるため、電磁石で缶を吸着する戦法を採ったチームも多かった。

各参加者はロボットを「車検場」に持ち込み、重さ、高さ、幅などについてのレギュレーションをクリアしているかどうかのチェックを受け、競技に臨んだ。 競技時間は予選2分、決勝トーナメント3分、準決勝戦以上では2分ハーフの前半戦・後半戦を行って勝負を決する。 年齢にかかわらずハンデなしのガチンコ勝負だが、「ロボコン in あいづ」は「大人がなかなか勝てないロボコン」というジンクスがある。

会津地域の高校、企業、自治体からなる「ロボコン in あいづ2013」実行委員会(実行委員長:玉川エンジニアリング・田村康人社長)の事務局を務める会津工業高校の山野敏教頭は、 「(当ロボコンでは)ロボット作りの工夫だけでなく、操作までが問われるためです」と、その理由を語る。 ロボットを操作しながら空き缶をつかみ、あるいは磁石で吸着させ、それを他の空き缶の上に積み上げて移動するには、微妙かつ柔軟なリモコンのスティックさばきが欠かせない。 そのため、普段からゲームに慣れ親しんでいる子供たちが、実践に即したロボットの操作において一日の長があるわけだ。

喜多方市で治工具、専用機、搬送システム、ロボットシステムなどを手がけるメカテックも、予選トーナメントの初戦で喜多方市立関柴小学校Cチームに敗れた。 加藤仁司社長は「当社では新入社員がロボコンに挑戦したのですが、彼は『来年も出場してリベンジしたい』と話していました」と語る。

柔軟なアイディアと機敏な動作の勝負――熱闘が繰り広げられた決勝戦

決勝トーナメントに駒を進めたのは合計16チーム。 そのうち中学生、高校生チームが13チームを占め、小学生チームも2チーム勝ち残った。 IT分野の単科大学である会津大学・画像処理講座チームおよび昭和電工喜多方事業所チームも順当に勝ち進んでいる。

決勝戦は、ともに優勝候補の筆頭との呼び声が高かった若松第一高校チームと会津学鳳中学校Aチームとの間で繰り広げられた。

準優勝に輝いた、若松第一高校チームの室井諒君と三浦一喜君が製作したロボットの名前は「おしゃれな奴」。 「ロボコン in あいづ」の立ち上げにも尽力した平山賢実教諭の指導によるハイテク・ロボットで、手巻きの電磁石でスチール缶を吸着し、 缶を3個縦に積み上げて高得点を狙う(写真参照)ために回生ブレーキを装備し、減速・停止などの微妙なコントロールを行えるようになっている。 ロボットの前面に、平山教諭を意識したというユーモラスな「顔」が描かれている。

準優勝に輝いた若松第一高校チームの室井諒君(左)と三浦一喜君(右) 電磁石でスチール缶を1個吸着して上に持ち上げ、別の缶に重ねる 空き缶を3個積み重ねてから棚に移動する 最も高い棚に3個重ねの空き缶を3列並べることに成功

見事に優勝に輝いたのは、会津学鳳中学校Aチーム。 星陽介君がロボット操作を担当し、三浦大雅君がおもにロボットの製作と競技中の指示を行った。 2人が作り上げたロボットの名前は「案山子」(かかし)。 非常に野心的なアイディアで、3段×3列=9個の空き缶を一回の作業で保持し、点数の高い棚に置くことで優勝を狙ったロボットだ(写真参照)。

見事に優勝を勝ち取った会津学鳳中学校Aチームの梅津大雅君(左)と星陽介君(右) 空き缶を1段×3列電磁石で吸着し、プラモデル用の無限軌道を利用したベルトで上に持ち上げる 新たに1段×3列の空き缶を吸着し、先に持ち上げた空き缶の上に重ねる 同じ作業を繰り返し、3段×3列の空き缶を、最も高い棚に一回で移動させていた

オペレーターの星君の絶妙なスティックさばきと、梅津君の的確な指示が見事に調和した、チームワークの勝利といっても過言ではないだろう。 2人に話を聞くと、愛機の「案山子」が完成したのは大会前日の深夜で、当日の早朝まで練習を重ねて競技本番に臨んだという。

現在中学3年生の梅津君は、「ロボコン in あいづ」の第1回大会から連続出場しているベテランで、今回のロボコンを含めて5回の優勝経験を持つ猛者である。 毎回出される作業テーマに応じていかに勝つかを考え、どういうロボットを作るかを考えていくのが梅津君の必勝法だ。

子供たちのために地域連携でロボコンを継続

振り返れば、「ロボコン in あいづ」は文部科学省・経済産業省が連携して実施された「会津ものづくり人材育成支援事業」 (ものづくり人材育成のための専門高校・地域産業連携事業)の一環として、2008年度にスタートした。 同事業は、地域の専門高校や大学、行政、企業が連携して小学生、中学生、工業高校を中心に人材育成をしようというもので、 会津地域では会津工業高校および喜多方工業高校(現・喜多方桐桜高校)で実施されたが、3年間の事業期間終了にともないロボコンの存続が問題になった。

「ロボコンを楽しみにしている子供たちがいるのだから、何としても続けよう――」

反省会での議論の末、関係者たちの腹は決まった。 ある財団の厚意でロボコンへの予算補助を受けたあと、福島県会津地域の振興を目的とした中小製造業の連携組織である「会津産業ネットワークフォーラム」(ANF)を中心に、 地元企業に趣旨を説明して協賛を募った。 こうした努力が実り、会津若松市および会津地域の自治体の協力も得て、「ロボコン in あいづ」は昨年度から、地域の産学官連携によるイベントとして実施されている。

競技の合間に、会津大学の学生による自律走行型ロボットの実演も行われた 会津大学と地域企業の連携で開発された水田除草ロボット「アイガモヅ」もデモ走行

前出の会津工業高校の山野教頭は「上位ランクの部門として、自律型ロボットの競技大会も行っていきたい」と今後の抱負を語る。 11月6日には実行委員会メンバーによる反省会も行われ、来年のロボコンは、会津若松市に隣接する会津美里町で開催されることが決定した。

参加チームが思い思いに作り上げたロボットを見つめる子供たち 2014年の「ロボコン in あいづ」は、会津若松市に隣接する会津美里町で開催される

一時期、存続の危機に立たされたこともあったが、「ロボコン in あいづ」を継続していく中で、 会津学鳳中学校の梅津君、星君、若松第一高校の室井君、三浦君を始めとする、若き人財が確かに育ち始めていることが注目される。

ロボコン競技の最中に、「これからみんなが参加する時のために、よく見ておきなさい」という声も聞こえてきた。 おそらく、生徒たちと一緒にロボコン観戦に訪れた小学校の先生が、子どもたちにそう諭していたのだろう。

会場に展示されていた参加者たちの手作りロボットや、会津大学による自律走行型ロボットの実演を真剣に見つめる子供たちのまなざし――。 それが、会津地域の未来のものづくりを担う人財を皆で育てていこうという、大人たちの親心が子供たちにも伝わっていることを雄弁に物語る。

本連載では、「ニッポンのものづくりネットワークを訪ねて」と題するシリーズを設け、各地における、こうしたものづくり人財の育成や企業連携などの試みをリポートしていく。

 
 

プロフィール

ジャーナリスト 加賀谷貢樹

1967年、秋田県生まれ。茨城大学大学院人文科学研究科修士課程修了。産業機械・環境機械メーカー兼商社に勤務後、98年よりフリーに。「フジサンケイビジネスアイ」のほか、オピニオン誌、ビジネス誌などに寄稿。著書に『中国ビジネスに勝つ情報源』(PHP研究所)などがある。
 ものづくり分野では、メイド・イン・ジャパンの品質を支える技能者たちの仕事ぶりのほか、各地の「ものづくりの街」の取り組みを中心に取材。2008および2009年度の国認定「高度熟練技能者」(09年度で制度廃止)の現場取材も担当。
 愛機Canon EOS-5Dを手に、熟練技能者の手業、若き技能者たちの輝く姿をファインダーに収めることをライフワークにしている。
【フェイスブック】:http://www.facebook.com/kagaya.koki
【ブログ】:http://kkagaya.blog.fc2.com/

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