--従業員満足度(ES)重視経営に対する反応は
「社長からは、有給休暇を増やすことや賃金を上げるという印象をもたれがちだ。そう受け取られるたびに、『従業員に迎合するのではなく人間性を尊重する経営ですよ』と説明している。理解が進む手応えは感じている。確かに人は金と地位で動くが、やる気を持続させることにはつながらない。若手の就労意識が変化し、仕事の目的は『社会や人から感謝される仕事がしたい』が1位になった。会社はその未来像や従業員が働く意義を明確にすべきだろう」
--導入効果は
「効果の一つが離職率の減少だ。さらに、ES向上に努める会社は顧客からのクレームが減る。これにより、企業に共感する人々が増えると、『顧客から選ばれる会社』となれる。また東日本大震災後の行動をみると、ESが高い会社と低い会社で差が表れた。高い会社は団結力が高く、残業もいとわず創意工夫して動いていた」
--社会的満足度(SS)重視経営を広める狙いは
「経営理念で、社会や環境に貢献する姿勢をうたう会社が増えているが、実態は理念を従業員に意識させるための対話が十分でなく、行動に結びついていない。そこで、一人一人の目を外に向けさせるための意識改革を促すことにした」
--今後の目標は
「会社の価値は、金やモノ中心から『共感資本』に移り始めている。共感資本とは、従業員同士のつながりや従業員と社会との結びつきなどの度合いの総量だ。世界的な飲料ブランド『コカ・コーラ』を手がける米メーカーの共感資本は約7兆円に及ぶ。さわやかさなどを伝えるイメージ戦略の成果だ。これからは、目に見えない資本を増やす努力を怠れば、市場から相手にされなくなる。こうした認識で、中小企業にSSを高める文化を浸透させたい」
≪イチ押し≫
■体験型活動で働く意義考える
人事・労務の矢萩大輔代表取締役は、会社や社会で働く意義を考えてもらおうと、体験型の社会活動にも力を入れる。
その一つが、同社主催の日本ES開発協会を通じ取り組む「日光街道徒歩行軍」だ。東京・日本橋から栃木県日光市の日光東照宮をつなぐ約140キロの日光街道を歩き切るイベントだ。仲間や取引先などの協力でビジネスが成り立つことを確認するきっかけにしたいという。
さらにこの夏には、農業を体感する新規事業を立ち上げる計画だ。神奈川県の三浦市や秦野市に農園をつくり、学生や新入社員らの教育の場として活用。参加者が収穫した農産物を全員で分け合う喜びを伝えたいという。これは、企業経営にも重なる。矢萩氏は「社員の笑顔を増やす土壌があってこそ、作物が丈夫に育ち、大きな花を咲かせられる」と説明している。
「フジサンケイビジネスアイ」