有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩大輔 氏
「はたらく幸せは、地域の元気 日本の元気」をコンセプトに、
                      つながり力の高い人財づくりを提唱

取材日:2013年7月30日


有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩大輔 氏

事業内容がわかりやすい「有限会社 人事・労務」という社名はインパクトありますね。
創業は1999年ということですが、創業から今までについて教えて下さい
 1995年、私が26歳の時に社会保険労務士の資格を取りました。1995年といえば、阪神淡路大震災やオウムのサリン事件などが起こった大変な年でした。そんな年に26歳で社会保険労務士としての個人事務所開設は、都内最年少でした。当時、企業の「人事制度」というのは、大手の外資系コンサルティング会社が大企業に向けて「人事戦略」というメニューでコンサルティングは行っていましたが、中小企業相手に「人事」や「人材活用」のコンサルティングを専門に行う会社はありませんでした。そこで、「ヒト・モノ・カネ」の中の「ヒト」に関する唯一の国家資格である社会保険労務士を武器、強みにして、これからの社会を見据えた「人事制度」や「人材活用」をコンサルティングする会社として1999年「有限会社 人事・労務」を立ち上げました。
 とはいうものの、立ち上げ期(2000年~2003年)は、方向性が定まらずに苦労しました。自分ではベストだと思う「人事制度」の提案をし、相手先のトップの理解は得られても、いざ実行しようとなると、提案先の従業員には受け入れられず猛烈な反発に合うという辛い経験もしました。ちょうどこの頃というのは、ライブドア事件などに代表されるような企業のお金に関する不祥事が取り沙汰された時期でした。多くの企業が経済的な効果を優先するあまり、疲弊していて「行き詰まり」のようなものを感じました。社会貢献や地域貢献といった社会の課題を解決するCSRを考える企業が出てきたのもこの頃からです。「人事制度」に関しても、給与や労働条件といったハードな面だけでの問題解決が困難になりました。社員のモチベーションをアップさせて、パフォーマンスを向上させるには、内面的に訴えかけるソフトな面を重視した提案が必要だと実感しました。そこで、「つながり」をキーワードに私たちが主力としたのは ES(Employee Satisfaction従業員満足度)です。利益追求だけではなく、社会の課題を解決する企業が業績を伸ばし、生き残る時代になる。しかし、いくら企業のトップが社会の課題解決に目をむけても、従業員が同じ方向を向いてくれないと上手く行かないという課題が存在します。私たちは地域おこしのプロジェクトを推進するときに「地域おこしは、人おこし」という言葉を良く使います。ほとんどの人が近代的な教育の中で金銭的な報酬以外のことを目的として就労することを教わってきていません。ですから、CSRを考えた取り組みをしよう、地域のためになることをしようという場合には、まず社員からというプロセスが必要なのです。個々の従業員の力を知り、向上させることによって会社も成長する。まさに、CSRの前に社員第一主義の考え方を組織の根本に据え、取り掛かる必要があります。こうして弊社では、独自にESを体系立て、 2007年に(日本ES開発協会)を設立しました。現在は更に「人」に関するさまざまなコンサルティングを提供する「ソーシャルコンサルティングファーム」として成果・結果主義から脱却し、日本的経営の「人間性尊重経営」というDNAを広め、再発見する取り組みを推進しています。
ホームページを拝見すると、中小企業に対するいろいろなサービスを展開されていますね。「 人財士(じんざい ざむらい)」というのは、オリジナルのメニューなのですか
 こちらは、弊社オリジナルのソフトです。「人財士」と書いて「じんざいざむらい」と読みます。簡単に言うと「企業の元気度(企業文化の強さ)」を診断するツールです。社員同士のつながり、顧客とのつながり、地域とのつながりに対する能力というのは、これまで計ることができませんでしたが、SQ(Social Quality)診断という方法で個人の「つながり力」を見ることが出来ます。これからの時代、伸びる会社の条件のひとつとして、「自律した有能な社員が高い社会性を発揮できる組織であるか 」という点が挙げられます。
 例えば、"成果主義人事制度"は中小企業も含め多くの企業で導入されています。しかし、それらの会社の多くが近視眼的な視点でのみ業績を上げようとするあまり、一時的に会社は、儲けを生み出すことが出来ますが、長くは続かず、かえって今まで築いた企業文化を壊してしまう会社が少なくありません。これからの新しい資本主義経済は共感経済といわれています。その新しい環境の中で持続可能な経営とは、その制度の対象となる社員の「自律性」と「社会性」が認められる組織風土ができあがらなくては、組織は動いていきません。ましてや、形だけの成果主義など、かえって社員にストレスを与えるだけになってしまいます。 特に、個々の社員の顔がみえやすい中小企業では、その失敗が感情的なしこりとして残ってしまう危険性すらあるのです。これから活躍する「自律性」のある人材というのは、「クリエイティブ(新しいものを生み出す力がある)」、「つながり力(社会性がある)」を持った人材です。この2つが会社の明暗を分けると言っても過言ではないと思います。このように組織を構成している人の診断をし、会社を8段階のステージ (レベル)に分類します。自社は、現在どのステージ(レベル)なのか数字で知ることが出来ます。組織の成長段階によって使用するツールも異なってきます。各社5名様までは、無料で診断できますので、是非お試しください。
http://www.jinji-roumu.com/jin_top.html
現在の中小企業の置かれている状況は、どのようにご覧になりますか。またこれからどうしていけばいいでしょうか
 現在、中小企業に関しては、経営に苦労している会社と上手くまわっている会社と二極化している状況です。むしろ、中途半端な大企業の方が問題だと思っています。まさに「つながりの強い会社がつながりの弱い会社を食う時代」だと言えます。「つながり」を言い換えるとしたら「ネットワークの外部性」を高めるということで、より多くの情報を獲得した者が勝ちということです。
 下の図にあるように、例えば、7人で構成される組織があったとして、ピラミッド型組織だとつながり数は6です。しかし同じ7人でもひとりひとりの「自律性」が高いとつながり数は21になります。このような形をトライブ(部族)型組織と言っています。これからは、つながりが強い会社が勝っていくのだと思います。弊社では「トライブ」という言葉を、「何らかの興味(志縁)をもち、互いにコミュニケーションのツールや場を通してつながっている状態」と定義しています。企業の価値は、従来のお金やモノの量から、「共感資本」の量へと変わりつつあります。このトライブ型組織をつくり「共感資本」を高めることがこれから重要になってくるでしょう。
今後はどのような展開をお考えですか
 これからは、「地方」が鍵になると思っています。地方というのは、高齢化や人口減少などの問題を大都市よりも先に経験しています。ですから地方で生き残ってきちんと仕事している会社というのは、モデルケースになるわけです。今までは、大都市の企業の真似を地方の企業がする、といった構図だったと思いますが、今後は逆に地方の会社を都会が見習っていく形になっていくでしょう。そういった見本となるような会社が地域のリーダー会社となって他の会社や人たちと、先ほどお話したような、トライブ型の関係を築いてもらうのが理想です。そうした地域でリーダーとなって「つながり」を増やせる人を「ES地域プロデューサー」と呼んでいます。弊社としては、この「ES地域プロデューサー」を増やしていきたいと思っています。現在も弊社の顧客である地方の旅館や造園業の会社に地域のトライブリーダーになってもらい、様々な地域貢献活動やコラボイベントを実施しています。全国展開のためには、社会保険労務士のネットワークも活用し、弊社の考えることに共感して頂ける全国の社会保険労務士の方に「人財士」をはじめとする弊社のソースを公開し、ゆくゆくは「ES地域プロデューサー」として地方の拠点の役割を担ってもらいつながりを広げて地域から日本を元気にしていきたいと思います。
インタビュー:河合 美智子

略歴

有限会社人事・労務 代表取締役 矢萩大輔 氏

日本ES開発協会 会長
全国社会保険労務士会連合会「個人情報部会」委員
明治学院大学卒業後、大手ゼネコン勤務を経て、社会保険労務士事務所を開業。
1999年有限会社 人事・労務 設立。
分かり易い語り口と斬新な考え方で、NHKニュースウォッチ9の出演やUSENビジネすステーションにてナビゲーターを務める他、商工会議所が運営するネット配信セミナーにレギュラー出演等、メディアでも活躍している。

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