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アイザワ証券株式会社 戦略企画部 部長   山本 光輝

顧客支援を目的にした社内向け掲示板「アイザワほっとプレイス」

藍澤証券は、商店を経営する顧客企業(店主)の支援を目的に開設した社内向け掲示板(LAN)「アイザワほっとプレイス」の拡充に力を注いでいる。全国53店舗の営業担当者が目に留めた地元名産品などを掲載しており、商店数は8月末に200を超えた。社員の普段づかいを喚起するため、ジャンルごとに商品を集めて閲覧しやすくしたほか、季節ごとにテーマを決めて特集を組むなど工夫を凝らす。既存のお客様との関係深化を目的に始めたが「地域やお客様を支援する想いが高まり、その結果がお客様からの感謝になって返ってくる。お客様のお役に立てているという気持ちが社員のモチベーションに繋がっている」と戦略企画部の山本光輝部長は口にする。

――アイザワほっとプレイスとはどういうものですか
「全国53の店舗網を生かし、当社のお客様のお店を中心に地元で扱われている名産品などを紹介。社員が日頃お世話になっているお客さまへの贈答用や自分自身の日常使いとしての利用を呼びかけるための媒体です。支店のある地域や、お店を支援する目的で2019年8月にスタート。最初ははじめての取組みだったこともあり、部店にお願いして10~20店を集めてのスタートだったのですが、今は月に約10店のペースで増えており、8月末に200を超えました」
――どんな商品を掲載していますか
「食品や化粧品、雑貨、インテリアなど百貨店と代わらない品ぞろえになっています。どこにどんな商品があるのか分かりやすくするため、8月に百貨店のフロアガイドのように欲しい商品がある場所に誘導する仕組みを採用しました。地下2階から11階までジャンルごとに分け、例えば地下2階は生鮮食品(生肉・生魚)や総菜・弁当(肉加工品・練り物)、地下1階は食料品(梅干し・干物・加工食品)、酒(日本酒・ワイン)、和洋菓子(まんじゅう・最中・焼き菓子)、1階は生花(胡蝶蘭・フラワーアレンジメント)というように百貨店と同じような配置になっています。ジャンルを増やしており、アクセサリー、ブラックフォーマル、宝飾・時計、美容などを新設し出店を促しています。ウインドウショッピングのように楽しんでもらいながら買ってほしいなと思っています」
「母の日や父の日といった季節ごとのイベントにあわせてテーマを決めて商品をピックアップすることも6月から始めました。6月は『父の日特集』と『梅雨の在宅特集』、7月は「七夕特集&自宅でオリンピック観戦特集」、8月は『暑い夏を楽しむ納涼祭特集』でソーメンやワサビ、梅干しなどを取り上げました。9月は『シルバーウイーク特集』『敬老の日特集』の予定です。百貨店の10階に催物場を新たに設けましたので、今後はここで地域に絞った物産展や季節の商品をならべることにしています。」
――社員の認知度は高まっていますか
「社員への浸透に1年ほどかかりました。7月3日に大規模土石流に襲われた静岡県熱海市を支援するため商品購入をある社員が呼びかけたところ賛同者が集まり、7月初めから月末までの1カ月で約50万円の注文が入りました。わたし自身も干物や蒲鉾を購入しましたが、それぞれの店主から手書きで『熱海 応援ありがとうございました』とお礼の手紙が来ました。災害の大変な状況の中で書かれた手紙に胸がジーンと来ました。この出来事を機に認知度は向上、ご利用していただく社員が増えました」
「更なる促進のため社内キャンペーンでの活用を実施。営業店に、ほっとプレイス掲載店でのみ使用できる1ポイント=1円の予算枠を付与しています。この枠を活用し、掲載店から贈答品を購入することができます。購入するお店のお客様、プレゼントするお客様、それぞれのお客様との関係性を深めるきっかけになります」
――商品はどのようにして見つけてくるのですか
「営業店の若い担当者が地元商店街を回って取材します。ほっとプレイスへの掲載に必要な商店の紹介や商品の特徴などの情報を集めます。当社SNS(会員制交流サイト)による宣伝をご希望のお客様に対しては経営者インタビューを行い配信しています。意外とお客様のお店が扱っている商品を知らないもので、商品に対する思いや経営者の考え方を知ることでお客様の商売に関する知識や関心も高まっていきます。京都支店では土産物屋を回って『まずは支店の社員や自分のお客様に宣伝します』とアプローチしています。こうした一連のつながりの中でお客様との関係が深まっていきます。ほっとプレイスを通じて紹介した商品の注文が入ると、紹介した担当者が買いに行きます。担当者が日常使いで買いに行くことも増えました。『また来たね』の言葉が増えると信頼関係は深まっていきます」
――確かに商品が売れるわけですから、店主にとってうれしい話ですね
「商店を訪れる営業担当者はあくまでもご商売の支援を目的とした接触ですから先方も好意をもってお会いしてくださいます。営業店の担当者が取材して商品の販売を積極的に応援する。こうした担当者の姿勢が間接的にではありますが、自分自身の営業成果に繋がっているようです。実際、掲載商店から『商品をたくさん購入してくれたから』と提案商品をご購入してくださることもあります。お客様や地域のことをより深く知るきっかけになり、関係が深くなっていくケースは非常に多いと思います」
――商店にとっては社員だけでなく、社外にも販路を広げてほしいのではないですか
「提携先の第一勧業信用組合とコロナ禍で苦しむ事業者を支援するため、昨春に『志の連携』を立ち上げ、提携金融機関と当社の顧客の掲載を始めました。現在、当社顧客は埼玉県の煎餅店だけですが、当社公式LINEアカウント上でも公開しています。このアカウントには1万人強が登録していますから効果を期待する声が上がっています。お客さま支援につながることから、ほっとプレイス掲載商店を中心に積極的に参加を呼びかけていきます」
――ほっとプレイスが営業につながっているわけですね
「親密な関係を築けば店頭などで一緒にお茶を飲んだりしながら会話する機会も増えます。そうしたときにフッと発せられる何気ないせりふから悩みごとなどを聞き取り営業に生かすのが重要だと考えています。店主の言葉から事業承継・相続の展開につながることもあります。こうした店主の心の声を集めて組織全体に生かすことにしています。全国の営業店から声を集めて本社で傾向を分析しまとめ、全国の営業店に戻して活用します。それまではお客様の声を聞いても、それを営業に生かせるかどうかは個人の能力次第で属人レベルにとどまっていました。これを全社で共有することで、改めてお客様の視点に立った考え方が何よりも大切なのだと社員全員が身をもって実感します。
金融商品自体の差別化は難しく、手数料競争にも限界があります。当社がお客様から選ばれるには何が必要か。お客さまとのウインウインの関係性の重要性をほっとプレイスを通じてつくりたいと思っています」
2021年10月1日付 産経新聞(経済面)に関連記事を掲載
藍澤証券 企画戦略部長 山本光輝(やまもと・みつてる)
大阪府立四條畷北高卒。1987年平岡証券(現藍澤証券)入社。2003年芦屋支店長。鎌倉支店長、千里中央支店長などを経て、2019年営業推進部(現戦略企画部)長。53歳。

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