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「著作権登録」とはどんな制度なの?? ~文化庁の著作権登録制度について~

弁理士の著作権情報室

「著作権登録」は何のために必要なのでしょうか?


すてきなイラスト、写真、音楽、文章を創作したときに、「著作権を取得するために著作権登録するぞ!」と言っている人を時たま見かけます。しかし、その必要はありません。著作権は、著作物を創作したときに自動的に発生する権利であって、特許権、意匠権、商標権のように特許庁に出願して登録を受けなければ取得できない権利ではないからです。
しかし、「でも、著作権登録っていう制度があるって聞いたことあるぞ!?」と思う人もいるでしょう。確かに、「著作権登録」という制度はあって、利用されています。著作権は自動的に発生するのに、どうして「著作権登録」という制度が必要なのでしょうか?

著作権という権利は自動的に発生しますが、権利は「物」と違って形がないため、実際に誰が権利者なのかがわからなくなることもしばしば起こります。特許権、意匠権、商標権は、権利が発生すると特許庁の登録原簿に記録されますので、誰が権利者なのかはその登録原簿を見れば一目瞭然ですが、著作権は自動的に発生するため、誰が権利者なのかを確認する術がありません
それでは様々な不都合が生じるため、著作権の発生には登録は不要であるものの、将来の著作権をめぐる紛争を回避し、また著作権をより有利に行使するために、事後に一定の登録制度が設けられているのです。

「著作権登録」とはどんな制度なの?? ~文化庁の著作権登録制度について~

著作権登録には色々な種類があります


もし、みなさんが、「自分が創作したイラストなのに、自分が著作権者だとわからなくなるのは嫌だから、すぐに著作権登録しよう!」と思ったとしても、残念ながら、日本には、自分が著作権者だということをストレートに登録できる制度はありません。しかし、例えば、次のようなことを目的とする著作権登録はすることができますので、みなさんの個別の事情に合わせて、最適な著作権登録を選んでください。

1.著作権譲渡の登録


経済的に価値の高い著作物の場合、著作権を他人に譲渡したり、または他人の著作権を譲り受けたりすることがあるでしょう。このような著作権の譲渡は、お互いが合意すれば成立するものであって、その譲渡自体に著作権譲渡の登録が必要というわけではありません。
しかし、著作権は無体物であって形はありません。そのため、稀な話ですが、Aさんという悪い人がいて、Bさんに著作権を譲渡した後に、同じ著作権をCさんにも譲渡してしまうということが起こり得ます。この場合、先に譲り受けたBさんが必ず著作権を取得し、後から譲り受けたCさんが必ず負けてしまうのであれば、Cさんは、通常AさんからBさんへの著作権譲渡の事実を知りようがないですので、怖くてAさんと著作権譲渡の取引などできません。
そこで、「著作権譲渡の登録」の制度を設け、このような場合、契約上どちらが先に著作権譲渡を受けたかは関係なく、先に「著作権譲渡の登録」を受けたほうが著作権を取得できることにしたのです。大事な著作権の譲渡を受けたときは、すぐに「著作権譲渡の登録」を行うことをおすすめします。

2.第一公表年月日の登録(第一発行年月日の登録)


みなさんの著作物が他人に盗作され、それをとがめた場合、その他人が開き直って「盗作したのはそっちだ」と言ってくることも珍しくはありません。その場合、日付が分かる創作過程の原稿や下書き、メモを証拠として示して、自身が正当な著作権者であることを証明するのですが、その証明はかなり大変です。
そこで、「第一公表年月日(第一発行年月日)の登録」の制度を設け、登録をした人はその著作物をその日に第一公表(第一発行)したものと推定されることとしたのです。この制度を利用すれば、他人がその公表日(発行日)を否定する場合は、その他人がそれを否定する証拠を示さなければならなくなり、自身の立証負担をぐんと軽減できるようになります。

3.実名の登録


著作権は原則として著作者の「死後70年」まで存続することになっていますが、ペンネームで書いた小説や漫画、本名以外の変名で公表している美術作品などは、著作者が有名人の場合を除き、著作者の死亡時が特定できないため、その著作権の存続期間は、著作物の「公表後70年」とされています。通常は、死亡時よりも先に公表するため、「公表後70年」となると、「死後70年」よりも権利期間は短くなってしまいます。
そこで、「実名の登録」の制度を利用して、有名でない変名で発表している著作物についても、自身が著作者であることを公示した場合は、著作権の存続期間は「死後70年」となるようにしたのです。

著作権登録は文化庁に申請します


特許権、意匠権、商標権の取得は特許庁に対して出願手続きを行いますが、著作権登録は文化庁に対して申請手続きを行います。
※「プログラムの著作物」に関する著作権登録に限っては、文化庁ではなく、一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)に対して申請手続きを行います。

著作権登録の制度内容をはじめ、著作権についてのご相談は、ぜひお近くの弁理士までおたずねください。

令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 堀越 総明

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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