10月、川崎市産業振興財団が主催する第67回「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場」(http://www.kawasaki-net.ne.jp/bizidea/)の最終選考会が開催された。会場には三浦淳・川崎市副市長の姿もみえた。
開会宣言に続き、同財団の曽禰純一郎理事長が「(当オーディションは)産業の街であり、イノベーションの先端を担う街でもある川崎で事業を興したいという人たちが、誰でも、いつでも、どこからでも参加できる場。川崎発の元気企業が数多く育っていくことを支援していきたい」と挨拶。
今回は応募件数12件に上るビジネスプランの中から、書類および面接審査を通過した5社がプレゼンを行った。選考の結果、介護保険法に基づく居宅介護支援事業などを行うさくらの丘と、電磁波・荷電粒子・光・X線・プラズマの最先端技術を中心としたエレクトロニクス製品の開発製造等を手がけるエーイーティーが、「かわさき起業家優秀賞」を受賞した。
さくらの丘の笠原泰子取締役は、同市内に来春オープン予定の「さくらの丘デイサービス&コミュニティサロン」の概要を説明。従来の高齢者デイサービスに加え、介護予防プログラムおよびコミュニティサロンを通じた社会参加や社会貢献、地元農家との交流による野菜作りなどを実践し、社会的・経済的自立を目指したサロン運営を行っていくと述べた。
笠原氏は、高齢者の社会的・経済的孤立が目立つなか、「高齢者の社会参加を促進し、地域を活性化させる当プロジェクトへの賛同をお願いします」とプレゼンを締めくくった。
同社は「かわさき起業家優秀賞」のほか、関係団体賞である「日本起業家協会賞」および「かわしん賞」、「りそな神奈川応援賞」を受賞。加えて、会場応援賞にも輝いている。
一方、エーイーティーの清野幹雄技術本部長は、2010年度内にプロトタイプを製作する予定の「進行波形型大電力大面積プラズマ装置」について解説。
同装置では、「大規模な太陽電池や大型フラットパネルをつくる製造技術であるプラズマCVD(化学的気相成長)法の飛躍的な向上を図る」(清野氏)ことを目指している。現在、一般的な波長13.56㍋ ㌹をはるかに上回る915㍋ ㌹の電磁波を利用し、大面積かつ均一な密度を持つ「シート状の」プラズマを高速度で発生させることが可能。
プレゼン後の質疑応答で、審査員は「これまで日本の半導体製造業では、新製品ができるたびに他国に技術を持って行かれ、シェア急落に悩んできた。同技術は業界復活の原動力になるのではないか」と評価した。
「かわさき起業家オーディション」は、創業および新分野進出への登竜門として、01年からほぼ2カ月に1回のペースで開催されている。川崎市内に限らず、広く全国から参加者を募集しており、優れたビジネスアイデアに対しては、販路拡大・資金調達の支援、ベンチャーキャピタリストやビジネスパートナーとの出会いの場を提供するなどのサポートが行われる。
今回の主催者賞の受賞者は次の通り。
▷ かわさき起業家大賞(川崎市長賞)/該当者なし
▷ かわさき起業家優秀賞/さくらの丘 笠原泰子氏、エーイーティー 田辺英二氏
▷ かわさき起業家賞/エフネット 本田博己氏
▷ かわさきビジネス・アイデアシーズ賞/ティー・エム・シー 千葉直樹氏、ツバルの森
三嶋浩太氏
「フジサンケイビジネスアイ」