■販路提供
ノバレーゼの社員と沼津市内浦重須地区の農家が、摘果ミカンの搾汁に取り組み「想酢」の原料調達を行った(提供写真)
社員研修に就農体験を取り入れたことをきっかけに、農家が加工や販売を手がける「6次産業化」支援を行っているのが、ウエディングプロデュースのノバレーゼだ。静岡県沼津市のミカン農家などと共同で、摘果ミカンを原料にした酢「想酢(おもす)」を開発、3年目の2013年4月には同ブランドから新製品も登場した。ノバレーゼは、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として社内資源を活用し、他地域でも6次産業化を支援する方針だ。
ノバレーゼは国内外28カ所で結婚式場やレストランを運営し、婚礼用ドレスレンタルなどを行う。4~5月と10~11月は結婚式が相次ぐ繁忙期だが、8月と12月は閑散期だ。
農業現場が人手不足との報道を見た浅田剛治社長が、閑散期に農業支援を行う社員研修を発案。特定非営利活動法人(NPO法人)などからの紹介で沼津市内浦重須地区のミカン農家が所属する農事組合法人「おもす」との“縁組”が成立し、09年12月に就農社員研修が行われた。
「十数人がお世話になったが、事前研修も含めて農家の受け入れ負担は大きかった。これではいけないと、自分たちができることは何かを考えた」とノバレーゼの担当者で、営業本部広報・宣伝ディビジョンマネージャーの野原和歌さんは振り返る。
重須地区の農家への聞き取りを通じ、地域の良さと課題を洗い出す中で、生産者は消費者と直接触れ合う機会がないことを知った。また、果実の質を高めるため間引きされた摘果ミカンは廃棄処分されると聞いたノバレーゼ社員が、摘果ミカンを活用した商品開発を提案した。
農家側が資金を捻出、ノバレーゼ側は製造協力先の開拓や商品パッケージの考案を担当し、両者参加の下で摘果ミカンの搾汁作業を行い、11年春に「想酢」950本を発売した。翌12年には3000本を生産、3年目となる今年、農家側からの発案で水などで割ると飲みやすくなる飲用酢「想酢+(ぷらす)」が姉妹品として誕生し、商品としての広がりを見せ始めた。
「重須地区との取り組みを通じてブライダル産業は農業の6次産業化と親和性が高いと感じている。飲食事業に加え、引き出物を提案するので販路もある。CSRの一環として協力し、6次産業化の成果物を婚礼商材に活用できれば、互いにビジネスとして成立する可能性がある」と野原さんは話す。
ノバレーゼは重須地区での交流を契機に、新潟県や青森県でもCSR活動の位置づけで1次産業との連携や地域活性化の提案を続けている。今後は重須地区での活動は軸として残しながら、自社の施設が立地している近辺でも営農者との連携を模索する方針だ。(日野稚子)
「フジサンケイビジネスアイ」