今回は、滋賀県近江八幡市に本店を構える和・洋菓子製造販売のたねやグループを取り上げる。
その理由は、いくつかあるが、同社は1872(明治5)年の創業以来、近江商人の商売の心得である「三方良し」の考えのもと商いを行い、顧客と地域社会に対する満足度の高いサービスで高い評価を受けているからである。
ちなみに、「三方良し」とは、商いを行う上で大切なことは、売り手よし、買い手よし、世間よしの3つを常に心がけることであると説く。
近江商人の行商は、他国で商売し、やがて開店することが本務であり、旅先の人々の信頼を得ることが何より大切であり、そのための心得として説かれた。
◆商道は人道
商取引は、当事者だけでなく、世間のためにもなるものでなければならない。この当たり前といえば当たり前のことを、同社は創業以来ずっと続けてきたからこそ、成長発展を遂げているのである。
また、その思いは同社の経営理念である「天秤道(てんびんどう)」「黄熟行(あきない)」「商魂」にも強く表れている。それぞれを具体的に説明していく。
(1)「天秤道」とは、商道は人道であることを意味する。
近江商人たちがもっとも大切にしてきたものは、長い行商のあいだ片時もはなさなかった天秤棒だった。天秤棒はそのまま商いの道に通じ、商いの道はそのまま人の道と心得ての旅だ。同社では、ひたすら人間性を磨き、お菓子を作り上げて顧客にお届けする道と定めている。
◆客に喜びを
(2)「黄熟行」とは、手塩にかけることを意味する。
同社は手塩にかけて育てる心を大切にしている。黄熟(あき)とはお菓子の大基(おおもと)、旬の果実が色づき熟れることである。お菓子は元来、秋に実り熟す果物から生まれたもの。先人たちは、これを交換することによって、現代の商いの基礎を築き上げてきた。自然から学びながら手塩にかけて育てるという原点を決して忘れることなく心得るということだ。
(3)「商魂」とは、今日いかに顧客に喜んでいただけたかを自らに問いかけることを意味する。
一般的に商魂といえば、商売に徹する心構えとして「商魂たくましい」などと使われているが、同社はこれを「天秤道」と「黄熟行」の魂をこめて日々の商いを実行していくこととしている。
お菓子を通じて顧客に接する心の基本的な心構えとして商魂という言葉を用いているのである。
「三方良し」は近江商人の商いの中で誕生した考えだが、この考えは現代でも全ての企業が商いを行う上で当然持つべき心得となるものであり、ぜひ参考にしていただきたい。
アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」