□アタックスグループ主席コンサルタント 丸山弘昭
経営再建中の日本航空(JAL)は、今秋に再上場する予定であると発表した。JALは、2010年初めに会社更生法の適用を申請し、京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎えることで経営再建が本格化した。
◆社内で勉強会
稲盛氏が、会長としてJALで最初に手掛けたことは社員の意識改革だったという。稲盛氏は会長就任後に、ある経済誌のインタビューでこう語った。
「JALは立派な会社としてチヤホヤされてきた長い歴史があるものだから、知らず知らずのうちに幹部が傲慢になってしまっていた。そのために顧客を失った。それが倒産の一番の原因だったと考えている。まずは社員の意識を変えるところから手をつけた」
そして、いちばん力を入れたのは「この会社は潰れたのだ」と社員に自覚してもらうことであったとも語っている。
意識改革のために、役員と幹部社員を集めた勉強会を繰り返し行った。同時に、稲盛氏は現場の従業員に対して「幹部のわれわれがいくら頑張っても、たかが知れている。皆さんの力が必要です」と頭を下げて歩いたという。
思うに、JAL再建の基本は、稲盛氏が京セラを創業して立派な企業に育てあげた過程で生み出された経営哲学にあるのではないか。京セラの経営理念の根本は「従業員の物心両面の幸福を追求すること」である。そのためには、従業員から最大の力を引き出すことが前提となる。
◆アメーバ経営
この手法が今では有名となった京セラの「アメーバ経営」である。稲盛氏はアメーバ経営の目的を、(1)市場に直結した部門別損益制度の確立(2)経営者意識を持つ人材の育成(3)全員参加経営の実現-であるという。
アメーバ経営を一言で説明すれば、アメーバという小集団ごとの付加価値を時間当たり採算性として測定する仕組みである。各アメーバは時間制付加価値を1円でも多くしたいと懸命に努力することが求められる。
JALでは経営再建のために大幅なリストラ(不採算路線廃止、人員削減・給与カットなど)を実施すると同時に、アメーバ経営を応用して、部門別採算制度を導入し、社内のコスト意識を高めている。現在では、路線別の採算も日次で分かるようになり、赤字であれば即座に対策が打てる。
2月にはパイロット出身の植木義晴氏が社長に就任して新体制がスタートした。稲盛イズムを踏襲し、再び危機に陥ることがないよう経営のかじ取りをすることが植木新社長に求められている。
余談だが、京セラはアメーバ経営のコンサルティング事業も行っている。筆者の顧問先でも、コンサルティングを受けて成果を出している会社がある。
同社の社長に成果を聞いたところ、(1)自分たちがどれだけ頑張ったかという意識改革になった(2)アメーバのリーダーをすることでその人自身が育つ(3)PDCA(計画→実行→点検→改善)が自発的にできる人材が増えた-ことを挙げた。
今はどの企業にとっても厳しい時代である。経営改革をしなければならない会社も多い。経営者や経営幹部の危機感の共有と、小集団の自立を促す管理会計制度(=アメーバシステム)の導入による全員参加経営は、改革を迫られた経営者の参考になるだろう。
アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」