■「流体継手」老舗の技術 日用品に活用
【プロフィル】阿部雅行
あべ・まさゆき 工業高校卒業後に家業の三輝に入社し、事業を継いだ。新商品開発が趣味で、流体継手の組み立てや品質検査の自動化設備を独自に開発した。60歳。高知県出身。
三輝は、鉄材を切断するガス溶断機の部品で、バーナー部からの火の逆流を防ぐ「流体継手」の老舗メーカー。ただ最近は、シャンプーやボディーソープの詰め替えパックに直接取り付けるポンプキャップ「詰め替えそのまま」のメーカーとして注目されている。気密性が高く、ワンタッチで取り付けられる流体継手の設計で培った経験などから阿部雅行社長が発案した新商品で、2011年の東京都ベンチャー技術大賞の特別賞を受賞するなど、斬新なアイデアが高く評価されている。
--流体継手の受注状況は
「国内は減速している。海外も欧州債務危機の影響などはあるが、ベトナムなどまだ成長率の高い新興国はある。納入先メーカーでは、ビル建設や造船などの需要でブラジル向けが伸びているようだ。ただ、全体としては横ばい。だから新商品の開発にも取り組んでいる」
--「詰め替えそのまま」はテレビ番組でも取り上げられた
「東急ハンズの21店舗を中心に月1万個売れている。百貨店などにも関心を持ってもらったが、価格要求が厳しい。現在の商品は1764円だが、昨年10月には設計を見直し、コストを削減した1200円の第2弾を開発した。(シャンプーなどの)ボトル品と詰め替え用の価格差を考えると3カ月程度で元が取れる」
--最新商品の売れ行きは
「北海道の地場のドラッグストアなどで試験的に販売している段階だ。16日から千葉・幕張メッセで開かれる『JAPANドラッグストアショー』で本格的にお披露目する。ドラッグストア中心に流通に乗せ、今年末には月5万個の販売を目指したい。業務用への展開も考えている」
--具体的な狙いは
「詰め替え時には容器に雑菌が入るため、病院では詰め替えごとに煮沸・乾燥する。美容室でも数回の詰め替えで煮沸・乾燥している。その点、この商品のポンプは一方通行。詰め替え品に直接取り付けて、空気が入っていかない構造で雑菌も入らない。エコで、衛生上も利点がある。大容量の業務用詰め替え品に対応する商品の試作も始めており、理美容や医療機関向けを開拓したい。こうした取り組みで2年後ぐらいには本業の売り上げに並ぶ柱に育てたい」
--本業分野での新商品開発は
「水素に対応する流体継手を開発している。水素はガスよりも扱いが難しいが、安全性の高い製品がようやくできてきた。クリーンエネルギーとして、水素利用が広がる時代はいずれ来る。そのときに、これでオンリーワンを狙いたい」(池田昇)
【会社概要】三輝
▽本社=東京都大田区北糀谷1-20-8 三輝ビル
▽設立=1968年4月
▽資本金=1000万円
▽従業員=約30人
▽事業内容=流体継手の設計、製造販売
「フジサンケイビジネスアイ」