今回は、東京都府中市に本社を構えるエーワン精密を取り上げる。同社に注目する理由は、「高品質」「短納期」「適正価格」を徹底して守り続け、創業以来、39期連続で売上高経常利益率が20%超を達成した高収益企業だからである。
同社は1970年に梅原勝彦氏(現取締役相談役)が設立した工作機械器具メーカーで、現在の事業内容は、コレットチャック部門、切削工具部門、そして自動旋盤用カム部門である。ちなみに、同社が製造・販売するコレットチャック(工作機械の主軸に装着して材料をつかむ道具)の国内シェアは60%、カム(運動方向変換器具)の国内シェアは90%を誇る。
◆利益率20%以上
同社が39期連続で売上高経常利益率20%以上を達成したことは業界でつとに有名である。この間には、オイルショックやプラザ合意の影響による円高不況、バブル崩壊、デフレなどの影響、そして中国をはじめとする労働力の安い国の価格を引き合いに出し、値引きを迫ってくる大手企業の圧力など、さまざまなマイナス要因があった。にもかかわらず、なぜ同社は長期に渡り高収益を維持できたのか。
梅原氏は製造業の3つの基本「高品質」「短納期」「適正価格」を忠実に守ってきたからという。好況時も不況時も、常にこの基本を守り続けたからこそ、顧客からの信頼を得ることができ、継続的な発展を成し得たのである。
一時期、同社は「図面を見せると、製品が出てくる機械を使っているらしい」という噂が業界内に流れたことがある。それだけ同社の納期が短かったということを証明する逸話だ。
コレットチャックやカムの形や大きさは、発注者が使用する自動旋盤や加工する対象物の種類と形状によって自動的に決まる。このため、製品に独自性を持たせるわけにはいかない。「高品質」についても、発注者を十分に満足させるだけの精度の製品を常に納めることができる競合も数多く存在していたため、品質での差別化はそれほどできなかった。
かといって、仕事を得るために「適正価格」より低い金額で受注しても利益は出ない。同社は業界の中では新規参入組であり、先行企業においそれと太刀打ちできないことは明らかだった。
◆短納期を徹底
そこで同社がたどり着いたのが、徹底した「短納期」であった。発注企業は一刻も早く完成品を欲しがる。このため、他社に勝るとも劣らない「高品質」で、価格も割高でない「適正価格」、なおかつ他社のどこよりも「短納期」ができれば、絶対に競争に勝てると梅原氏は確信した。
競合が通常1~2週間かかるコレットチャックの製造を1~3日で製造し、その7割を当日発送するといった体制を整備していったのである。ここで見逃してはならないのが、単に早ければよいわけではないことだ。同社の製品は品質を含め、顧客のあらゆるニーズを満たしたうえでの短納期であるからこそ、他の追随を許さないのである。3つの基本を守り続けてきたことこそ、高収益企業たる由縁なのである。
【会社概要】
アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」