ヴィノスやまざき専務 種本祐子氏
■「学ぶのではなく楽しむもの」
今日は、ボージョレ・ヌーボーの解禁日だ。2週連続新酒(ヌーボー)の話題で恐縮だが、ワイン好きには、なんとも心はずむ季節なので、許してもらいたい。
すでに、今年の新酒を楽しまれた方も多いはずだ。今日から、年末、クリスマス、新年と、多くの方が、新酒やシャンパン、さまざまなワインを楽しむ季節が始まる。
この時期、フランスのブルゴーニュ地方では、ワイン祭りが行われる。露店で新酒を楽しむ人、歌あり演芸あり、街の中心の特設ステージでは、コルク抜きコンテストに興じる人、街をあげてのワイン祭りが行われる。
「ワインは学ぶものではなく、楽しむもの」。ソムリエ協会の資格を取得し、数々のワインコンテストに挑戦し、ワインを必死に勉強していたころ、あるワイン生産者の方に言われた。農家が1年間必死で作った農産物を無事収穫し、皆で喜びお祝いする。当たり前のことであるようで当たり前ではない。
天候や災害など、人間の力ではコントロールできないことがたくさんある。とりわけ、今年の日本人は大きな災害を経験して、このことを痛感しているのではないのだろうか。だからこそ、新酒を祝うというフランス人の気持ちがよくわかる。
われわれ小売業は、生産者の最大の応援団でもある。だから、ワインを批判ばかりしている人に、たまに出会うと違和感をおぼえてしまう。ワインの欠点を見つける人がワイン通なのだろうか?私もワインセミナーの講師を務め、ワインのうんちくを語ることもあるが、生徒たちには、ワインの欠点を見つけるのではなく、一本一本のワインの良いところ、個性を理解できるように啓蒙(けいもう)しているつもりだ。
自慢のワインを振る舞うパスカルおじさん
ワインを楽しむイベントの極みでもあるボージョレ・ヌーボー解禁イベントが当店でも始まった。今日から、ボージョレの生産者が各店舗を走り回る。ボージョレ地区の生産者でドメーヌ・シャテルスのオーナーでもあるパスカル氏もそんなひとりだ。今年も無事収穫を終えて自慢のワインを振る舞うパスカルおじさんは、きっと恥ずかしそうにワインを語るだろう。もし会うことがあったら、ねぎらいの言葉をかけてあげてほしい。「今年の新酒の味を楽しんでいます」と。
「フジサンケイビジネスアイ」