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グローバル展開待ったなし ITベンチャーの若き経営者4人が語る

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 長引くデフレ、急騰する円高、東日本大震災からの復興、そして先の見えない原発事故の収束…。日本経済はかつてない苦境に直面しています。

 日本のベンチャー・中小企業は約430万社。全企業の99%以上、雇用の約7割を占めるとされ、ベンチャー・中小企業の存亡が日本経済の行方を決めるのは間違いない事実です。

 そこで、フジサンケイビジネスアイでは、ベンチャー・中小企業を応援する組織「イノベーションズアイ」(運営・フジサンケイビジネスアイ)の会員企業に、ビジネスの現状や経済の活性化について話し合っていただきました。日本再生に向け、今後もこうした機会を設けていきます。

 i 今回集まっていただいたのは、IT企業若手経営者のみなさん。ASP、SaaS分野で、日々競争を繰り広げるライバル同士でもあります。まずは参加者のみなさまの自己紹介を兼ね、現状への問題意識を語っていただきたい。

 中村崇 実は谷井さんと一緒に会社をやっていて、1社売却して、違う会社を立ち上げた。それが今のラクスで、中小企業をメーンターゲットに、メール配信や経費精算など業務用のサービスを提供。売り上げは伸びている。さらに成長させるためにはどうするのか、悩んで、突破するために手を打っていこうとしています。

 谷井 シナジー・マーケティングという会社を経営しています。CRM(カスタマー・リレーションズ・マネジメント)というマーケティングの一分野で、既存のお客さまをどう再活性化させるかを、クラウドという形態で提供している。急成長しているマーケットに対してどう波に乗るかが重要な課題です。われわれの分野は、流通などと比べるといい環境とはいえるが、楽観的ではありません。特に、今後どう海外にマーケットを広げるか、真剣に考えている。

 花戸 トライコーンという会社を経営しています。ユニコーン(想像上の一角獣)にさらに2本の角を付け、想像に想像を重ねるという意味を込めました。メルマガという言葉がなかったころに、最古のメルマガを作った会社だと自負しています。当時はASPもSaaSも言葉自体がなかったが、その仕組みを貸し出したのが、当社のクラウドビジネスの始まり。メール配信はCRMに発展したが、どちらかというと当社はメール配信の延長線上にCRMがあると考えています。従業員は40人ですが、妻帯者が半分以上。そんなことから、今改めて「会社ってみんなに何が提供できるんだろう」というようなことを、人事面、採用面を含めて考えることが多くなりました。

 中村健 ラクスの中村さんとは血縁関係はない(笑)。私の会社は、展示会やセミナーをはじめ、マーケティング業務を運営管理するクラウド型サービスを手がける。2000年創業で、今年11年目に入りました。顧客企業はマーケティング部や営業企画部が多い。学生時代の起業です。不遇の時代は年から5年ぐらい続いたが、やっと風向きが代わり、やっていることと時代とが合ってきた。

 i クラウドという形態はどんどん一般化していますが、昔は情報を預けるということに抵抗感があったのでは。

 谷井 最初のころはそれぞれお客さまが判断された上で問い合わせいただいていたので、むしろトラブルは少なかった。個人情報保護法(03年成立、05年施行)のときは食らいましたよ。

 中村健 私は逆で、個人情報保護法から増えました。プライバシーポリシーを一緒になって書いた会社もありましたから。

 花戸 私も特に05年ごろ、個人情報保護法から恩恵を授かりました。大きなところ、しっかりしたところとビジネスをすることで、その後の信用創造にもつながった。思い出すのは、こういう時代だからこそ中央官公庁を取りたいねといって、入札案件で取ったことです。

 i データを預かるというクラウドに不可欠な部分を考えれば、セキュリティーを確保していくのは並大抵ではない。

 谷井 われわれのビジネスが、社会のインフラになったということだと思います。

 中村健 なおかつ、受託開発業界全体としては縮小傾向にある。というより、拡大はしていないといったほうが正確かな。それがクラウドに流れてきている。

 i 新規参入は?

 谷井 それはあるんでしょう。が、分野が多岐にわたるのでなかなか把握しきれない。

 中村崇 今の新規参入者は、やりづらさがあるでしょうね

 中村健 僕は「学生ベンチャー」という、今ではほとんど死語になってしまった言葉(笑)が生きていたころに起業したけれど、そのときと比べたら、今は無理です。

 i 感覚が違う?

 花戸 全然違いますね。

 中村崇 あの頃はホビーというか、業務や仕事といってもそういう気風の存在が許されていた。サーバーだって、事務所の中に適当に置いていた。今は本当に、(われわれのサービスが)社会基盤になってきているので、求められているレベルが変わった。

 i 半面、若い層も出てきたとの評価もあります。

 中村崇 今はソーシャルゲームとか、なんといってもスマートフォンですね。

 中村健 新しいマーケットが見えてきたというのが大きい。1995年当時、ウェブ制作で起業できたように、1年前だったらスマホのアプリ制作で起業できたでしょう。今はもう無理かもしれないけど。

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ラクス 中村宗則社長 1996年神戸大学経営学部卒、日本電信電話株式会社(NTT)入社。数社の設立を経て2000年11月より株式会社ラクス社長。38歳。大阪府出身

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シナジーマーケティング 谷井等社長 神戸大学経営学部卒。1996年日本電信電話株式会社(NTT)入社。数社の企業の設立、経営を経て2005年シナジーマーケティング株式会社設立、社長就任。39歳。大阪府出身。

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シャノン 中村健一郎社長 2001年慶応義塾大学理工学部卒。大学在学中の00年に有限会社シャノンを設立、最高経営責任者就任。02年に株式会社化。34歳。大阪府生まれ、奈良県育ち。

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トライコーン 花戸俊介社長 明治学院大学社会学部卒。レナウンを経て1999年トライコーン入社。2007年に同社社長に就任。39歳。東京都出身。

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