開業医の3人に1人は漢方薬の処方を増やそうと考えている。こんな傾向が、日本最大級の医療情報サイトを運営するキューライフ(東京都世田谷区)のアンケート調査でわかった。
同社は、今年5~6月に全国の開業医200人に、「漢方薬の使用実態と今後の意向」について、インターネットで調査を行った。調査結果によると、日常の診療で漢方薬を処方することがある医院が88.5%に達している。漢方薬を使うことによって半数の医院で再診率が向上したと認め、収益が好調と答えた医院の88.5%が漢方薬を使用するなど、漢方薬は治療効果以外にもメリットがあることが浮き彫りとなった。
■34%が処方増やす
診療科目別の使用率は、回答者の半分を占める内科が93.3%、産婦人科・婦人科や小児科など4科目で100%だった。回答者の34%が漢方薬の処方を増やしていく方針で、とくに皮膚科と外科・脳神経外科、耳鼻咽喉科は増やす医院が半数を超え、積極的な姿勢がうかがえる。今後増加見込みの患者層は、更年期の女性が最も多く、20~30代の女性、70代以上の高齢者と続く。漢方薬を処方していない医院の39%が患者から処方の問い合わせを受けるなど、潜在需要も高い。
漢方薬を処方する理由は「副作用が少ない」(32%)を筆頭に、「治療選択肢の幅が広がる」(17%)、「西洋薬にない症状改善がある」(15%)、「患者ニーズに応えられる」(10%)などと続く。
岡山県の男性医師(外科・脳神経外科)は「西洋薬はできれば飲みたくないと感じている人が比較的多い」と答えた。山形県の女性医師(精神科・神経科・心療内科)は「患者側に漢方薬は副作用が少なく体によいというイメージがある」としている。青森県の男性医師(整形外科)は「今まで西洋薬で救えなかった患者の症状が改善し感謝される」と効果を認め、高知県の男性医師(内科)は「患者が自分に当てはまっていると納得しやすい」と使い勝手のよさを強調する。
■患者への対応で苦慮
一方で、大阪府の男性医師(精神科・神経科・心療内科)は「副作用が全くないと勘違いしている人が多い」と指摘、広島県の男性医師(産婦人科・婦人科)は「作用発現が遅い」と課題をあげる。
患者への対応で苦慮する場面も多いようだ。「漢方なら何もかもよくなると思っている」(滋賀県の女性内科医)、「なぜ効くのか詳しい説明を求められると困る」(香川県の男性内科医)などの意見が寄せられた。
キューライフの山内善行社長は、開業医の漢方薬処方が増加傾向にあることについて、「漢方薬は体にやさしいというイメージがあるうえ、薬効の科学的根拠に関する情報が増えてきたことが需要を押し上げている」と分析している。
「フジサンケイビジネスアイ」