ティップスでのワークショップ。話し合いを通じ、新たな気づきを探し出す=東京都千代田区
中小企業基盤整備機構は、中小企業や小規模事業者、起業に関心がある人を対象とした「TIP*S(ティップス)」という施設を東京・丸の内で運営している。開設して今年3月までの約1年半の間に、延べ230に上るワークショップを実施。多様な層の人々が交流しており、新たなビジネスの種も芽生え始めている。
大手町や日本橋、虎ノ門、渋谷…。東京都心部の大型再開発エリアでは、起業家を起点とした交流を促す施設が相次いで稼働している。大企業とのマッチングによって新規事業に発展するケースも顕在化しているが、ティップスはこうした施設と一線を画す。具体的には事業ありきではなく、「一人一人のポテンシャルを向上させて、それがビジネスに好影響を与えるようになるといった流れをつくる」(経営支援部人材支援グループの岡田恵実さん)ことを目標として掲げる。また、セミナー的な催しも行わない。
ワークショップのテーマは「新たな気づきや学び、きっかけ」や「ビジネススキルなどの学び合い」といったカテゴリーに属し、1テーマにつき平均で20~30人が参加し、話し合う。
結果として創業につながるような事例も出てきている。例えばあるSE(システムエンジニア)は、親族が介護系の仕事で苦労を重ねているのに直面した。ワークショップでの対話を重ねるうちに改善策に気づいて起業し、事業化に乗り出した。同様な形で経営スキルも身につけ、仲間も見つけていった。
今後力を入れていくのは地域連携。岡田さんは「中小機構の役割を踏まえると丸の内だけ盛り上がっていては不十分。全国の自治体と連動して、これまでのノウハウのエッセンスとなる部分を伝えていきたい」と話している。
「フジサンケイビジネスアイ」