金融業界とIT業界が、先進的な金融サービス「フィンテック」の分野で協力を加速するため、銀行の情報を活用する企業に求める安全性に関し、統一的な基準の策定に乗り出すことが19日までに分かった。早ければ今月中に金融庁などを交えた検討会を設置し、議論を始める。
検討会は全国銀行協会が事務局となり、3メガバンクのほかシステム会社や学識者らが参加する。地方銀行からは静岡銀行と北洋銀行が入り、2016年度末に報告書をまとめる予定だ。
銀行やカード会社は顧客の口座情報や買い物履歴など膨大な情報を保有している。例えばIT企業が銀行とシステムを連携させ、こうした情報を活用できれば、家計簿アプリや会計ソフトに複数の金融機関の取引情報をまとめて表示するなど、顧客に利便性の高いサービスを提供できる。
銀行の顧客情報をIT企業などが活用しやすくする取り組みは「オープンAPI」と呼ばれ欧米ではフィンテック普及の起爆剤になっている。機密性の高い情報を共有する金融界とIT企業でルールをつくり、協力に向けた環境を整備する。
ただ金融界にはIT企業への情報提供に慎重意見も根強い。相手先が悪意を持っていたり、システムが弱かったりした場合は、顧客情報が脅威にさらされるからだ。
このため、銀行の情報を活用する企業にシステムの堅固さや情報管理体制で一定の基準に達するよう求め、安全性を担保する。金融庁の金融審議会でも今年7月からフィンテックに携わるIT企業への法規制を議論しており、官民で利用者保護の取り組みを進める。
現在、家計簿アプリを手掛けるマネーフォワード(東京)などのベンチャー企業は顧客からIDやパスワードを預かり、銀行から口座残高などの情報を取得している。ただ、ベンチャーがパスワードなどの重要情報を保管することにはサイバー攻撃などで情報が流出する恐れが指摘されていた。
「フジサンケイビジネスアイ」