サーキュレーション 執行役員 福田悠
今回は、実際に外部人材を活用して新規事業を軌道に乗せた企業の事例をご紹介したい。長年にわたり通販代行業を展開してきたアイケイ(名古屋市)では、自社で新たに開発したPB(プライベートブランド)商品の販路開拓と拡大に向けて、外部人材が力を発揮した。
創業34年の同社は、大手生活協同組合を取引先に持ち、自社でショッピングカタログも発行。2001年にはJASDAQへの上場も果たした。
将来に向け新たな高収益事業を作るため、数年前からPB化粧品の開発を開始。新しい販路としてドラッグストアへの卸をスタートし、直接的な取引口座を持たない同社はベンダーを通して商品を流通していたが、思うように商品の導入が進まず収益的に厳しい状況が続いていた。販路開拓ができる人材を採用できればベストだが、新規事業のためコストはかけられないという事情もあった。
同社の課題を解決に導いたのは、日本を代表する大手化粧品メーカーに勤務し、著名なスキンケアブランドを立ち上げた経験をお持ちの60代のプロ人材だ。実店舗の販路拡大支援を得意とする。
2年間にわたって断続的に同社を支援し、大手ドラッグストアチェーンへ販路を切り開いていった。大手チェーン各社の経営トップとつながりを持っていた専門家ならではの、人脈力を生かした活躍だった。月に2、3社のペースで大手ドラッグチェーンの役員層とのアポイントを実現し、結果的に大手ドラッグストア6社との販路開拓に成功。数億円規模の売り上げを新たに作ることができた。一挙に新規事業が加速し、近い将来は数十億円の売上規模になるとみられている。同社の新規事業を牽引(けんいん)する執行役員の湯浅誠さんは「専門家と出会っていなければ、この事業をあきらめていたかもしれない」と振り返る。
中小企業が新規事業を成功させるためには、その領域に精通したプロフェッショナル人材の知識や経験、そして人脈を活用することが重要だ。今回のケースはフルタイムでの勤務を必要とせず、プロ人材としても参画しやすく、効率的に大きな成果を生んだ好事例といえるだろう。この方法なら、地方企業にも東京の優秀な人材を呼び込むことができる。
外部人材の力を活用して社内プロジェクトを前進させることは、若手人材の育成にもつながっている。雇用のリスクを背負うことではなく、外部との連携を強化することで事業を加速させる。
そんな成功体験を得た同社では、新たな視点を持つ若手人材の台頭も始まった。
【プロフィル】
福田悠ふくだ・ゆう サーキュレーション執行役員、シニアコンサルタント。1982年生まれ。中央大学理工学部を卒業後、総合人材サービス大手を経て、2014年サーキュレーション創業に参画。現在は、数々の企業とのアライアンスを手がけながら、製造業チームのマネージャーとして、地方を含む中小企業の経営支援に従事。
「フジサンケイビジネスアイ」