雑誌の定期購読サイト、返本ゼロに寄与

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富士山マガジンサービス西野伸一郎社長

□富士山マガジンサービス・西野伸一郎社長

出版市場が先細っている。出版科学研究所の調べによると、2014年の出版物の推計販売額は1兆6065億円で、ピークだった1996年の2兆6564億円と比べ、約40%減となっている。なかでも雑誌は8520億円で17年連続の落ち込みだった。苦戦が続く出版業界に対して、雑誌の定期購読による新たなビジネスモデルを提唱しているのが、富士山マガジンサービス。西野伸一郎社長は「多様なライフスタイルをカバーするプラットホームを目指す」と話している。

--事業内容は

「雑誌の定期購読のeコマースサイトを運営している。ファッション、ビジネス、スポーツ、医療、趣味など多種多様な、書店の店頭では見つけにくいニッチな分野も含めて、1万誌以上の雑誌とデジタル誌2700誌以上を取り扱っている。読者には当社から発売日に合わせて発送するほか、法人に対しては、通販会社のアスクルと一部の書店で定期購読の受付をしている。日本で雑誌を発行しているほぼ全ての約1200社を網羅し、定期購読者は70%以上が継続している。店頭での購入だと、購読継続率は10%ほどとされているので、出版社の経営安定化に寄与している」

--利用する側のメリットは

「読者にとっては店頭で一冊一冊買うのとは違い、割安な定期購読価格で購入できる。プレゼントや限定イベント招待などの特典も得られる。法人向けでは、全国で店舗展開している銀行、美容室などに対して、本社で一括管理しやすいよう、請求書をまとめて発行したり、予算に合わせたパッケージ配本サービスなどもあり、業務を合理化しやすい。出版社にとっては、定期購読にすれば返本をゼロにすることができる。国内での返本率は約40%で、大きな負担となっていた。継続率も高いので読者が積み上がっていき、売り上げを伸ばすことができる」

--出版業界をどうやって立て直すか

「出版社はこれまで出版取り次ぎ業者を通じて全国の書店に配本し、売れなければ返本ができる再販制度のもとでビジネスが成り立ってきた。しかし市場縮小と書店数減少、返本率の上昇傾向で、今までのビジネスモデルでは通用しなくなっている。このためeコマース化と定期購読者の拡大による売り方の転換が必要だ」

--成長戦略について

「日本での定期購読率は10%ほどで世界的に見ても低水準だ。米国では80%なので、まだ伸びる余地はある。このため、さらに定期購読者を増やす。アーカイブ提供などデジタル版の展開を強化し、付加価値を向上させる。また読者の趣味、嗜好(しこう)などのビッグデータを、物販や会員サービス、イベント開催などに活用する。これを販売収入、広告収入に次ぐ第3の収益の柱を模索している出版社にプラットホームとして提供する」(佐竹一秀)

                   ◇

【プロフィル】西野伸一郎

にしの・しんいちろう 明大経営卒。1988年4月、日本電信電話入社。ネットエイジグループ(現ユナイテッド)取締役、アマゾン・ジャパンゼネラルマネジャーを経て、2002年7月、富士山マガジンサービスを設立し現職。51歳。東京都出身。

                   ◇

【会社概要】富士山マガジンサービス

▽本社=東京都渋谷区南平台町16-11

▽設立=2002年7月

▽資本金=2億5640万円

▽従業員=50人(15年9月末時点)

▽売上高=23億9300万円(15年12月期予想)

▽事業内容=定期購読誌を中心とした雑誌の販売など

「フジサンケイビジネスアイ」

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