□ルーセントドアーズ社長・黒田真行氏
転職に関する相談を受ける中で、なかなか転職先が決まらない方に共通する一つのパターンがあります。
【Aさん】 「広告業界は顧客がコロコロ変わるのでNGにしています。自社製品の広報職でキャリアを深めていきたいので、形がある製品を作っているメーカーで広報の仕事を探しています。希望年収はこれまでと同水準かそれ以上を希望しています。エリアは渋谷から池袋に絞っています」というケース。「何となくいい求人がないか探している」という方に比べれば、希望条件が自分の中で煮詰まるまで、しっかり検討されておられているので、たとえば求人サイトを使う際にはとても検索しやすいはずです。ただ、その条件が、転職市場で需要や出現率が少ない職域・地域・条件だった場合、この希望条件が極端に選択肢を減らすことがあります。
市場の需給バランスに関係なく、除外する条件や、求める条件(業界・職種・給与・勤務地・休日)が、特定されればされるほど、キャリアの可能性が格段に狭まっていきます。逆に、アドバイザーに、たくさん選択肢を提供できる余地を与えてくれる方に共通する傾向もあります。
【Bさん】 「長く深く人間関係を構築できて、かつプロモーションのスキルを生かせる仕事を希望しています。メーカーとか商社はあまり気にしませんが、お客さまの要望がダイレクトに返ってくる環境かどうかは重視しています。初年度の年収は下がっても、実績によって報酬が上がっていく可能性があれば、頑張っていけると思います」。これくらいまで要件が抽象度化されると、一気に幅広い求人が浮かび上がってきます。
この違いはいったいどこにあるのでしょうか? 検索条件が明確なAさんは、具体的な「モノ軸」で“求人”を探しています。まさに転職サイトで検索している軸を、キャリアアドバイザーに伝えている状態です。除外する項目も明確なため、アドバイザーの力量に関係なく、同じ回答が返ってくる指示方法です。一方で、Bさんは、自分が大切にしている「コト軸」で“可能性”を探していると言ってもいいかもしれません。アドバイザーの客観視点を最大に引き出す相談方法になっています。
どちらの方法がいいかは、その方の置かれている状況や、こだわりの強弱、市場の需給バランスなど、複合的なので、一概には言えませんが、せっかく人材紹介会社のアドバイザーに対面で相談するのであれば、Bさん型のほうが、上手にアドバイザーを活用しているといえるかもしれません。
◇【プロフィル】黒田真行
くろだ・まさゆき 1989年リクルート入社。約30年にわたり転職・中途採用サービスの企画に関わる。2006年から8年間「リクナビNEXT」編集長。14年にルーセントドアーズを設立し、日本初のミドル向け転職サービス「Career Release40」(http://lucentdoors.co.jp/cr40/index.html)を提供している。
「フジサンケイビジネスアイ」