貸し農園を運営するアグリメディアは、日本初の飲食店向けに特化した屋上貸し農園事業に参入した。ビルに入居する飲食店を対象としており、栽培した野菜は店舗で提供する。飲食店は自ら育てた野菜を使ったメニューを店舗で出すことにより、独自性を打ち出して集客につなげられる。大手デベロッパーも関心を示していることから、今後屋上農園事業として推進していく。
飲食店向け屋上貸し農園「テラスファーム」は、東京・神田に先月オープンした地下2階地上17階建ての複合ビル「テラススクエア」の3階屋上に設置された。5区画で合計面積は33.7平方メートル。
1区画は月額4万3200円。資材、種苗、肥料など必要なものはすべて用意されている。スタッフによる水やりなどの栽培委託費も含まれている。また同じ3階屋上のハーブ畑の収穫権も付与される。
無農薬で有機肥料のみを使用した安心・安全な野菜を栽培する。飲食店の要望を聞いた上で作付けする野菜を決め、その種類に合った栽培計画を立てる。忙しい飲食店従業員は農作業をする時間を取りにくいので、“丸投げ”されてもスタッフが収穫まで責任を持つ。
テラスファームの開業はテラススクエアの建設に関わった住友商事から、屋上スペースの活用について相談を受けたことがきっかけとなった。
もともとアグリメディアが首都圏37カ所で展開する貸し農園の顧客に十数社の飲食店があり、栽培した野菜を店舗でのメニューに活用していた。このことから飲食店向けの需要があると予測した。
諸藤貴志社長は「安心安全な食材という付加価値を付けることで、他店との差別化とストーリーづくりに有効」と飲食業にとってのメリットを語る。
ビル事業者にとっては、屋上緑化推進の動きにも対応している。屋上農園は緑化基準を満たしながらも、植栽と比べ維持管理費を抑えることができる。こうしたことから、大手デベロッパーや設計会社などが導入に関心を示しているという。
諸藤社長は「福利厚生の一環として、自社ビルで屋上農園を始めたいという大企業からの相談もある。すでに具体的な話が進んでいる案件もあり、今後広まっていくだろう」と期待を込めている。(佐竹一秀)
◇【会社概要】アグリメディア
▽本社=東京都新宿区西新宿6-15-1 セントラルパークタワー6階
▽設立=2011年4月
▽資本金=6100万円 (資本準備金含む)
▽従業員=125人
▽事業内容=貸し農園の運営など
「フジサンケイビジネスアイ」