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テロ対策機器で日本の安全に貢献

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ナスクインターナショナル・左近美佐子社長

 過激組織「イスラム国」が日本をテロの標的として名指しするなど、安心・安全が脅かされている。2020年には東京五輪・パラリンピックの開催が予定され、多数の外国人が訪れるだけに、セキュリティー対策の強化は喫緊の課題だ。テロに対処するセキュリティー機器の販売、コンサルタント業を手掛けるナスクインターナショナルの左近美佐子社長は「セキュリティー機器は日々進化している。安心して東京五輪を迎える頼もしい味方になってくれるだろう」とテロ対策に自信をみせる。

 震災で状況が一変

 もともと日本の伝統文化や伝統工芸を育成し、プロデュースする会社を運営していた。あるとき取引先の塗装職人が偶然、二酸化チタンの光触媒でウイルスを無力化する抗菌・抗ウイルスコーティング剤を開発した。室内の設備にスプレーで吹き付けるだけでウイルスの活動を抑えることができ、半永久的に効果が持続する。

 世界中で新型インフルエンザの大流行が懸念されている時代背景もあり、09年から全国の空港や市役所、病院やホテルなどに導入され始めた。

 10年12月には普及を加速させるため、販売会社のナスクインターナショナルを設立する。nasc(ナスク)は、National Security Companyの略で、日本の安心・安全を守ることを社是としている。

 順調に実績を伸ばしていたが、会社設立から数カ月後に発生した東日本大震災で状況は一変する。全ての受注がキャンセルになり、全く仕事がない月もあった。会社の存続も危うくなり、人員整理にも手を付けた。この危機を乗り切ろうと、当時オファーがあった海外展開について模索していたところ、思いがけず米国のセキュリティー会社のパスポートシステムから、日本総代理店になってほしいという申し入れがあった。抗菌・抗ウイルスコーティング剤の開発・販売の実績などが評価されてのことだった。

 和の心と組み合わせ

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広い範囲の放射線量をリアルタイムで地図上で把握することができる「放射線即時検知分析器ネットワーク」の画面

 取り扱っている機器のうち、放射線即時検知分析器ネットワークは、スマートフォンほどのサイズの検知器で半径20メートルの放射性物質や種類を知ることができる。ネットワーク化すればリアルタイムで、広い範囲の放射線量などを把握することができる。

 その後、ドイツのコグニテック、米国のディテクタケムとも日本総代理店契約を結ぶ。いずれも世界各国の軍や警察をはじめとした、公的専門機関で導入されている世界最先端のセキュリティー会社だ。

 14年10月に東京ビッグサイトで開かれたテロ対策特殊装備展に出展すると、国内の他社は防災用品の出展がほとんどで、核テロ対策機器を展示している会社は、ナスクインターナショナルしかなかった。防衛省や警察庁のほか、民間警備会社などの大勢の人だかりが一日中途絶えることがなかった。

 日本の空港や公共施設などのセキュリティー機器は、国産が多いので普及はこれからだ。しかし放射線や爆発物の検知機器では、テロ対策が進んでいる米国製に一日の長がある。

 現在、政府機関や自治体、民間セキュリティー会社などに導入を働きかけている。機器を用いたハードだけでなく、ソフトでのテロ対策にも思いを巡らせる。「文化事業による『日本の和の心』の育成を組み合わせることで、世界の安心・安全のために貢献したい」と意欲を語る。(佐竹一秀)

 ≪Q&A≫ 五輪控え文化活動にも注力

 --日本のテロ対策の現状は

 「日本はセキュリティーに対する認識が甘い。政府機関でも『管轄が違うからできない』と、縦割り行政の弊害で対策が進まない。最近は会社などの出入管理が厳しくなっているが、それでも入館カードを見せさえすれば入ることができる。他人が持っていたらどうするのか。テロは自分には無関係なひとごとという意識が強いのだろう。しかし巻き込まれる危険は常にあると考えるべきだ」

 --個人情報保護とのからみは

 「以前、公共施設に顔認証システムを設置しようとしたときに、市民団体の反対で取りやめになったことがある。個人情報保護はもちろん大事だが、テロの危険は現実味を増している。未然に防ぐためにもセキュリティー対策をおろそかにはできない。反対意見もあるだろうが、安心・安全へのニーズが高まり、今後は導入が進んでいくのではないだろうか」

 --文化活動にも取り組んでいる

 「別会社で日本の伝統文化や伝統工芸の職人育成、海外への日本文化の紹介などに取り組んでいる。科学技術は日進月歩だが、人間が平和や安全を求める心は世界中で変わらない。日本は八百万(やおよろず)の神をあがめ、あらゆる思想や価値観を受け入れてきた歴史がある。2020年の東京五輪・パラリンピックは世界に日本の伝統文化を伝える好機だ。文化活動にも力を注ぎたい」

【プロフィル】左近美佐子
 さこん・みさこ 京都外大外国語卒。輸入商社などを経て、1996年4月左近クリエーションを設立し社長就任。2010年12月ナスクインターナショナルを設立し、現職。大阪市出身。

【会社概要】ナスクインターナショナル
 ▽本社=東京都新宿区左門町6-10 渋谷ビル5階
 ▽設立=2010年12月
 ▽資本金=5240万円
 ▽従業員=7人
 ▽事業内容=セキュリティー機器の販売、コンサルタント業務など

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