知恵の経営

第249回

今も昔も求められる文章力

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
日本漢字能力検定協会が、人事部門の人材育成担当者を対象に、企業における文章力の課題について、今年1月28~30日に550人から回答を得たインターネット調査の結果を公表しているが、その内容は興味深いものであった。

まず、「ビジネスにおいて文章力は必要か」という問いに対し、「はい」は96.4%(530人)であった。その具体的理由としては、「生産性の向上(情報流通のスピード向上、情報流通の質向上)」(67.4%)、「暗黙知の形式知化(マニュアル作成など)」(65.7%)が上位に挙げられていた。

続けて、「あなたの勤務先では、社員の文章力は昇格や昇給に影響すると思いますか」という問いに対し、「昇給と昇格どちらにも影響する」(41.8%)、「昇格に影響する」(20.7%)、「昇給に影響する」(3.8%)となっており、合わせると、66.3%が影響があると回答していた。

では、実際にどの程度、活用されているかを「あなたの勤務先で、昇格時に企画書や論文などの文章提出が課されているのは、どの階層の昇格時ですか」という問いで見ると、社員の昇格時に企画書・論文などの文章提出を課している企業は全体の39.1%あった。さらに具体的に見ると、課長昇格時に文章提出を課している企業が75.3%。係長時で53.5%。部長時で51.2%と、多くの企業で何かしらの文章提出が求められていることが分かった。

しかし、その一方で、「あなたの勤務先では、文章力を高める研修を行っていますか」という回答を見ると、「はい」はわずか26.7%という結果だった。

近年、フェイスブックやツイッターなどのSNS(会員制交流サイト)の活用が進み、長文を書くことなく、短文でのやり取りが中心となり、ある程度まとまった文章を書く機会が少なくなった。また、携帯電話・パソコンの変換機能を頼りすぎることで、正しい漢字を書く・認識することもできなくなり、誤字に気づかないというケースもよく見受けられる。文章力が研修で身につくものかといえば、そういったものではないと思う。ただし、多くの長文の文章を書くことによって、慣れてくることは間違いないだろう。

現在では、パソコンで音声入力が可能な時代にはなっている。しかし、それとて完璧なものでは決してない。また、自分自身に文章力・語彙力がなければ、どんなに性能が高まろうが、それを使いこなすことは難しい。どんなに時代が進もうと、文章力が求められることに変わりはない。そこを意識できるか、できないかが勝負の分かれ道となるはずだ。


アタックス研究員・坂本洋介
2020年7月7日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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