オーシャングループ、相続遺言生前対策支援機構の代表理事 黒田泰代表
超高齢化の進展に伴い、遺産相続、遺言、身元保証といった生前対策の重要度は年々増している。ただ、こうした手続きを取り扱う法律家や団体による横領や不正が後を絶たない。高齢者が相続などの悩みを「誰に相談したらいいかわからない」現状を改善する狙いから一般社団法人「相続遺言生前対策支援機構」が5月発足した。代表理事を務める黒田泰オーシャングループ代表に生前対策をめぐる現状と、支援機構設立の狙いを聞いた。
--身寄りのいない高齢者の支援をうたっていた「日本ライフ協会」が昨年、高齢者の預託金を流用したあげくに破綻に追い込まれるなど、生前対策をめぐる法律家や団体の不正問題が多発している
「行政書士や司法書士、弁護士など(生前対策に関わる)国家資格を持っていることと、しっかりとした体制ができているかは全くの別物。弁護士などが高齢者から預かった資金を貸金庫や信託口座で管理せず、自宅や事務所で保管しているケースも少なくないし、相続手続きの手数料などを体系化せず、言い値で取引しているところもある。また、成年後見制度では認知症になった人の資産については後見人に対し家庭裁判所によるチェックが入るが、元気な高齢者が預けた場合は誰もチェックする人がいない」
「身元保証も、法律家が身元保証人になったとしても高齢者と死後手続きや尊厳死の契約書など文書を交わさない、いい加減なケースが多く、結果として報酬をもらいながら手続きできずに行政に丸投げするケースも珍しくない。このように生前対策に関してはブラックボックスのところが実は多い」
--支援機構の役割は
「生前対策を安心して専門家に相談できるようにしていくことが大きな狙い。相続や遺言といった生前対策の業務を第三者の視点でチェックするのがまず1つ目の役割。2つ目の役割は法律家、事業者に相続などの実務を指導し、きちんと業務をしているところに認証を与えること。実務に精通し無料相談をやっているところに対し、『この事務所は安心ですよ』というお墨付きを出す。こうした啓蒙活動を通して良質なサービスを普及させ、社会のお役に立てればと思っている」
--当面の目標は
「現在、行政書士法人、司法書士法人など90余りの事務所が会員になっている。年内に120程度に増やし、全国に広げていければと考えている。一般社団法人として発足したが、2~3年内に公益社団法人に移行し内閣府のチェック受けながら事業を進める組織にしたい」
--代表を務めるオーシャングループは、相続など生前対策を専門サービス業と位置づけ、法律界に新風を吹き込んでいる
「この業界はいろんな可能性があると思うが、国家資格いわゆる士業の方々の多くは職人かたぎの意識が強く縦割りの範疇でしか仕事をしたがらない。しかし、高齢者の生前対策に関するニーズが多様化する中、高齢者の視点に立ったサービスは必要不可欠だし、信託銀行、リース会社などこれまでお付き合いのなかった業種などと手を組めば、良質で安価な付帯サービスがたくさん生み出せるチャンスもある。当グループでは、『リーガルイノベーション』をキャッチコピーにした取り組みをさらに、進めていく」
【プロフィル】 黒田泰 くろだ・ひろし 法政大学卒。大手経営コンサルティング会社を経て2012年にオーシャングループ(株式会社・一般社団法人・司法書士・行政書士)を結成。17年に(社)相続遺言生前対策支援機構の代表理事に就任。38歳。埼玉県出身。
■グループ概要
▽本社=横浜市西区高島2-14-17 クレアトール横浜ビル5階
▽設立=2011年6月
▽従業員=グループ約45人
▽事業内容=遺産相続手続き、遺言書作成、身元保証事業、創業支援、士業に対する経営コンサルティングなど
「フジサンケイビジネスアイ」