■クラウドファンディングで創業支援
埼玉県秩父市と、隣接する横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町を加えた「秩父郡市」を営業エリアとしている埼玉縣信用金庫秩父支店。事業者数が少なく、企業の資金需要が潤沢とはいえない中で、同店は新井康幸支店長のもとで堅調に融資量を伸ばしているという。「地域貢献」を活動の柱の一つとする新井支店長の取り組みで大きな成果といえるのが、ネットを通じて不特定多数の人から小口資金を調達する「クラウドファンディング」を活用した創業支援だ。
埼玉縣信用金庫は、中小企業の販路開拓・ブランド力向上支援および地域活性化を目的に、クラウドファンディング運営会社のミュージックセキュリティーズ(MS社)と2014年に提携。取引先に対しMS社と本部、営業店が連携してファンド募集開始まで一貫した支援を手掛けており、秩父支店では、新井支店長が中心となって「秩父ルージュワインファンド」の組成をサポートした。
ファンドの組成目的はブドウの苗木の購入代。秩父産のブドウを使ったワイナリーと農家レストランの運営を計画する創業者を支援するもので、組成金額は1500万円として募集を開始し、約1カ月ほどで目標金額を調達した。
この事業支援の始まりは、新井支店長が商工会議所を訪問した際、新たなワイナリー作りの相談で、総務省の「地域経済循環創造事業交付金」の申請に協力してもらえないかと声をかけられたこと。新井支店長は事業性に加え、「地元の若者の雇用を増やし地域を活性化させたい」という思いにも共感し、本部と協議を重ねて融資を決める一方、商工会議所とともに交付金申請をサポート。ちょうどその時期にMS社と提携したことを受け、経営者にクラウドファンディングによる資金調達も提案したのだという。
「MS社の膨大な会員に対し事業をアピールできることは広告宣伝という側面もあり、非常に大きな効果がある」(新井支店長)。交付金のサポートにとどまらず、クラウドファンディングも提案したことで、多くの人から出資金が集まり、地域活性化に向けた、より大きな経営支援につながった。
◇(編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp