非常用電源ユニット「つなぐプラス」の開発メンバー。右からアゴラの柏木太郎営業部長、サンエスオプテックの伴貴雅社長、アゴラの柏木信泰主任
東日本大震災の際、生活必需品が不足し、乾電池が店頭から姿を消したのは記憶に新しい。だが、乾電池よりも大容量の電源が身近に数多くある。それが自動車用バッテリーだ。
中小企業向けコンサルティングなどを手がけるアゴラ(東京都北区)と高効率省エネLED照明「アプラ」シリーズを製造販売しているサンエスオプテック(東京都中央区)が、自動車用バッテリーを利用した非常用電源ユニット「つなぐプラス」=写真=を共同開発した。
コンパクトなボディが同機の大きな特徴で、ケースの中には50㍗のLED照明が格納されている。蓋を持ち上げ、LED照明を取り出し、自動車用バッテリーをセットして蓋をおろせば、持ち運びできるポータブル電源として使用が可能だ。
家庭用の100V電源を供給できる。使用するバッテリーのサイズや消耗の程度にもよるが、LED照明の点灯時間は約7時間。学校、医療機関、老健施設などの公共施設や商業施設のほか、広域避難所や老人ホーム、帰宅者支援ステーション等での活用を想定している。
巨大地震が発生した場合、非常用発電機が設置されている施設でも、エレベーターなどの大きな動力への電源供給が優先され、照明の確保が難しくなることが多い。そのため、非常用の電源を供給しながらLED照明が使える「つなぐプラス」は、災害時の避難所の運営や救助活動などに大きく役立つ。
リチウムイオン小型バッテリ―も市販されているが、非常時に電気を使い切ったら充電する方法がない。だが「つなぐプラス」は国産の12Vバッテリーほぼすべてに対応しており、避難場所における車の台数分だけ電源が取れる。バッテリーが消耗しても車につないで充電することもできるので、長期的な電源確保も可能になる。
アゴラの柏木太郎営業部長によれば、夜間に建物の屋上に「つなぐプラス」を設置し、LED照明を上空に照射すれば、救助ヘリとの連携が取れる。ショルダーストラップも付属しているため、テック・フォース(国土交通省緊急災害対策派遣隊)や警察、消防、自衛隊の救助・捜索活動でも力を発揮するという。普及が進めば、全国のカーディーラーや中古車販売店、カー用品店で取り扱っているカーバッテリーを、災害支援物資として有効利用する道も開けてくる。
「つなぐプラス」は、アゴラが販売し、サンエスオプテックが製造を担当。現在、両社共同で特許出願中だ。
東日本大震災後、各自治体では備蓄品の拡充を始めとする防災対策を推進している。過去の災害の教訓から、停電時の円滑な避難所運営のために、小中学校等に発電機とLED照明を配備するケースもみられる。
両社は2013年3月から共同で防災対策・備蓄用LED照明の製造販売を行っており、ユーザーから非常用のバックアップ電源がない場合の対応を求められた。そのニーズに応えるために、同年6月から「つなぐプラス」の開発がスタートしたという。14年4月にバージョンアップ版の試作機が完成し、5月20日から販売を開始。定価は税抜き35万円(送料別途)で代理店募集も行っている(問い合わせ先:株式会社アゴラ 03-6807-8161)。
首都直下地震や南海トラフ地震を始めとする巨大地震の発生が懸念される中、アゴラとサンエスオプテックでは「1台で完結した装置ではなく、人や機器、地域をつなぐ非常用電源ユニット」というコンセプトを掲げ、「つなぐプラス」の普及を目指す。
■機器仕様■
【本体】寸法:長さ350㍉×幅230㍉×高さ710㍉(LED照明上端まで)▼重量:約10.5㌔㌘(バッテリー含まず) ▼入力電圧:DC12V▼出力電圧:AC100V▼定格出力:400㍗
【LED照明】重量:約0.9㌔㌘▼入力電圧:AC100~242V▼消費電力:50㍗▼LED照明寿命:約5万時間▼URL:http://agora-group.jp/
「フジサンケイビジネスアイ」