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第20回

金融機関に伝えたいことを伝える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
金融機関とのコミュニケーションについて、先回は質問への効果的な答え方について考えてみました。コミュニケーションとは双方向での情報交換ですから、こちらから伝えたいことをきちんと伝えることも大切です。

「しかし金融機関と話している時、相手方は自分が話していると、なぜか良い表情をしないのだ。だからやはり、金融機関は我が社のことを聞きたくないのではないかと思ってしまう。」私が観察したところによると、一部の例外を除けば、金融機関の職員は他人の話しをよく聞くよう習慣付けられています。なので、ご感想のような状況は少ないかと思いますが、もしそうお感じなら、話し方を工夫してみる方法があるかもしれません。中小企業の社長さんに今までお話ししてきた内容を、いくつかピックアップしてみました。


1.面談の約束をとり、時間を区切る

最初は意外かもしれませんが、約束を取った上で面談し、時間を区切ることです。金融機関の職員は、中小企業経営者から見ると何をしているのか分かりにくいとは思いますが、意外と忙しくしています。お客様、つまり中小企業経営者とお会いすることは最優先の仕事ですが、突然に訪問されると他に予定していた仕事、特に約束の上でお会いすることになっていた他の経営者に迷惑をかけてしまうかもしれません。約束の上で訪問すれば、その時間はあなたのために確保してくれます。

また、時間を区切ってくれることも、ありがたく思っています。その後の予定が立てられるからです。目安としては、30分や1時間など区切りの良い時間が好まれます。予約時に開始時刻だけでなく時間も指定した上で、面談の最初に「今日は1時間、お時間を頂戴することでよろしいですか」と確認すると、他に気を取られずにあなたの言葉に集中してくれるでしょう。


2.シナリオ作りは相手方に任せる

第二のポイントは話す順序、つまりシナリオ作りは相手に任せるということです。「シナリオなんて渡されていないぞ」と思われるかもしれませんが、相手が投げかけてくる質問が「シナリオ」です。金融機関は、予約時に聞いた面談目的を踏まえて「どのような順序で何を聞いたら、訪問者の意図を十分に汲み取ることができるだろうか」と考え、質問を準備しています。その流れに従って話を進めるのが、相手に最も効果的に話を聞いてもらう方法です。

「相手が自分の言いたいことを質問してこなかったら?」確かに、そういう時もあるかもしれませんね。その場合には最後に、伝えることができます。面談も大詰めになり、金融機関職員としては聞きたいことは概ね聞き終わったと感じたら「何か、他にお話しされたいことはありませんか?」と聞いてくることが多いと思います。その時に、ご自分の伝えたいことを伝えるのです。


2.ワンフレーズは3分以内に終わらせる

金融機関職員は面談時にはシナリオを考え、いくつかの質問でもって漏らすことなく相手方の要望等を聞きたいと考えていると申しました。しかし実際には、金融機関側が幾つの質問を用意しているか、分かりません(質問しても「話の進展次第ということで」とお茶を濁されるでしょう)。このため、金融機関が聞きたいと思っていることを余すことなく質問できるよう、質問の答えは簡潔に行うのが良いと思います。

前回の、質問への返答の仕方でもお話ししましたが、質問にはストレートに、簡潔に答えるというのが基本です。自分としては不都合なことを話さなければならない質問を投げかけられた場合には、言葉数で補ってしまおうという気持ちが起きがちですが、多くの場合、それは自分の意図をきちんと伝えることにはなりません。最初はストレートに、簡潔に応答し、その後でフォローした方が効果的なのです。

「具体的に、どれくらいを目安にすれば良いのか?」私はいつも3分程度、長くても5分とお答えしています。質問に対して答えを返す時間、相手に口を挟ませずに話し続ける時間は3分ないし5分にしましょうということです。3分ないし5分たったら、一呼吸置いて相手に口を挟ませるタイミングを与えます。特段に口を挟まなければ次を続けて良いですが、質問等があったら、そちらに対応しましょう。

なぜ、このような面倒臭い手順にするのか?それは相手をイライラさせないためです。こちらが話したいことを話し続ければ相手は満足するかどうかは、こちらからは分かりません。「その話、もっと聞きたい」と思っているかもしれませんし、「もうそろそろ別の話題に移りたいのだけれどな。そうしないと、次の仕事のために席を辞さなければならなくなる前に、聞きたいことが聞き終えられないかもしれない」と思っているかもしれません。どちらかは、相手をうかがうしかありません。それが、相手が口を挟める一呼吸なのです。


4.要件のアウトラインを伝える(融資のお願いは最後)

企業の側から金融機関に面談を依頼する時は、ほとんどの場合、融資の申し込みが絡んでいることでしょう。今まで「単刀直入に」と言っていたことと少し矛盾するかもしれませんが、その依頼は、最後にしましょう。これは、回りくどく言うようにという意味ではありません。相手が聞ける条件を満たしてから言いましょうという意味です。

例えば今まで1年以上、決算書などの報告もしなかった金融機関と面談する場合を、考えてみましょう。中小企業から電話がかかって面談することになりました。その面談の冒頭で「実は、近々に融資をお願いしたいと思いまして。○○○○万円なのですが、いかがでしょうか?」と言われたら、金融機関はどう感じるでしょうか?半分、予想はしていたこととはいえ「藪から棒」な感じは否めないでしょう。「話を聞かなければ正確には答えられないが、そのような急な話は一般的に言って難しい」と感じるかもしれません。

では、金融機関に「話を聞かなければ正確には答えられないが、時間的な余裕を持って、話し合いベースで事を進められるなら、一般的に言えば難しい話でもなんとかなることが多い」と感じてもらえるにはどうすれば良いでしょうか?ここでもう半分、ヒントを言いましたね。順を追って説明すれば良いのです。

このためまず、話のアウトラインを伝えるのが有効です。「最初に、我が社の現状を説明させてください」、「このため今期は事業計画書を策定して対策を取ることとしました」、「という訳で、計画を円滑に進めるために長期資金を導入したいと思います。導入時期は未定で、金融機関と相談しながらとなりますが、ご検討をお願いします」と伝えるのです。

こういう流れで説明するとすれば、お気付きのように、融資の申し込みは最後になります。それも「今すぐ融資可否を判断して欲しい」というより、「現状を理解してもらい、我が社が進めようとしている事業計画に納得してもらえるなら、融資についても検討して欲しい」というニュアンスです。

このように説明すれば「普通では融資は難しい先かもしれないが、事業改善に尽力しているようだ。金融機関からのアドバイスも可能なら取り入れて、計画をブラッシュアップして取り組む方向性らしい。進捗を確認する中で資金的協力も検討可能かもしれないな」と感じてもらえるかもしれません。


5.資料を準備する

金融機関職員は経営者の話を聞くプロですから、その要望を聞き逃したりすることはほとんどないでしょう。但し、どれくらいの「温度感」でもって聞いてくれるかは保証の限りではありません。特に、融資の希望時期や希望額などについて「計画が固まったところで改めてお話しさせてもらう」とか「金額についても、これから計算する」などと伝えると、こちらとしては予告したつもりになっていたとしても、相手はそうは受け取らないかもしれません。

そういう行き違いを避けるために、資料を準備するという方法があります。上の例で言えば、A4用紙1枚に「現状」、「事業計画概要」などを簡単にまとめた上で、「融資の希望時期や希望額などについては、計画策定時に改めてご相談させて頂く予定」と明記しておくのです。時期や金額について一応の目安を記載しておくのも良いでしょう。当社の意図を的確に記載した資料を手渡すことにより、こちらの期待を十分に理解してもらうことができるでしょう。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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