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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第26回

現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(後編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーの役割について、いつくかのフィールドに分けてご説明頂いているところです。」

「そうだな。そして今、その1丁目1番地ともいる『現場が高いパフォーマンスをあげられるようマネジメントする』ことについて説明している。現場マネジャーの究極の仕事といえるほど、重要な役割だ。」

「確かに!MCSとか難しいことを言わなくても、この役割が否定されることはないでしょうからね。」

「その通りだな。でも、考えてみてくれ。現場が高いパフォーマンスをあげられるようマネジメントすることが現場マネジャーの究極の仕事であることはみんな認めると思うが、それをどうやって行うんだ?それについて、万人が認める方法論があるのか?」

「いやそれは。でも、なくても仕方がないのではないですか。もともとマネジメントという言葉には『あれやこれや頑張ってみる』というような意味があると言いますから。言葉を変えると『とにかく頑張ってみる』ということでしょうか。」

「せっかくの教養を、あまり褒められないことに使わないほうが良いぞ。老婆心からの忠告だが。」

「スミマセン。では、現場が高いパフォーマンスをあげられるようマネジメントする上での万人が認める方法論があるのですか?」


ドラッカーが提唱する方法論

「万人が認める方法かは分からないけれど、きちんと提示されている。」

「誰が、どんな風に提示しているのですか?」

「ドラッカーが、その名著『マネジメント』で示しているんだよ。」

「えっ、そうなのですか?私、まったく気が付きませんでした。」

「確かに、結構さりげなく書いてあるからな。でも、しっかりと提示されているよ。今度『マネジメント』を紐解くことがあったら改めて確認しておいて欲しい。それは、『長所・短所補完メカニズムを機能させること』と『方向合わせメカニズムを働かせること』だ。」


長所・短所補完メカニズム

「最初に、長所・短所補完メカニズムから説明しよう。」

「言葉の通り、ある人の短所を、別の人の長所で補うということのようですね。最近、よく言われるチームワークも、このことを指しているようです。」

「そうなんだ。ドラッカーは、これを働かせることこそが、マネジメントのポイントだと考えていたのではないかと思う。ドラッカーは組織について、部分の和よりも大きな全体を生み出す、言い換えると投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す仕掛けだと考えていたようだ。それを実現するのが、長所・短所補完メカニズムなんだ。」

「ドラッカーが、組織により部分の和よりも大きな全体を生み出せると言っていたこと、私も覚えています。でも眉唾ではないですか?仕事って、いわば物理法則が働いているのです。1+1が2ではなく、それ以上になるということなど、あるはずがありません。それより少ないことは、例えば浪費などがあれば起こりえますが。」

「そうかな。一人の人が生み出す成果である「1」について考えてみよう。ドラッカーは人間には強み(長所)と弱み(短所)があると言っている。至極当たり前の指摘だよな。」

「それは、そうですね。」

「では、それを単に『1』とだけ書くと、その事情を反映していると言えるか?」

「確かに、言えないかもしれませんね。」

「もしある人に『10』の成果を生む長所があるにもかかわらず、短所や能力的制約などが邪魔をして結果的には『1』の成果しか生み出せないとするならば、その人の短所は『9』だけ長所の成果を打ち消していることになる。つまり『10-9』というメカニズムが発生している訳だ。」

「なるほど。つまり組織の中で2人が働いていることを示す数式は、
1+1=2
ではなく、
(10-9)+(10-9)=2
を想定するのが正しいのですね。」

「そういうことだ。そのような状況のもと、二人の人間がいて組織として機能する場合のことを考えてみよう。Aさんが不得意としている分野があっても、それが得意なBさんがAさんを助けてあげれば、Aさんのマイナスが少なくなるだろう。」

「確かに。例えばAさんがいろいろと試行錯誤してもできなかった表計算の式が、専門家であるBさんの一寸したアドバイスで、たちどころにできてしまうなんてことが、あるかもしれませんね。」

「そうなんだ。このメカニズムが働くと、Aさんの仕事のマイナス要因が『9』から立ちどころに『8』に減ったとする。するとパフォーマンスはどうなる?」

「1+1が3になったという訳ですね。」

「そうなんだ。職場の人々がこの長所・短所補完メカニズムを機能させるように促すとともに、体制を整備したり、職場の雰囲気を誘導したりすることが、現場が高いパフォーマンスをあげられるようマネジメントする方法の第1番目なんだ。」

「わかりました。」


方向合わせメカニズム

「あともう一つは、方向合わせメカニズムを働かせることですね。」

「そうだ。こちらの趣旨も、もう分かるだろう。」

「三上部長のお話は時々罠がありますから油断できませんが。協力して働く人々が同じ目標を目指すということですね。」

「そうだよ。職場の中では、皆、同じ方向を向いているとはいえ、結構、それが乖離している場合がある。」

「本当ですか?」

「例えば、納期が1ヶ月後の仕事について、Aさんが前工程、Bさんが後工程を担当していたとする。Aさんはいつまでに仕事を終わらせれば良い?」

「2週間後ですかね?」

「そうか?Bさんが1週間後から半年間の長期研修に出るとしても?」

「いやいや、そしたらすぐにでも仕上げなければなりませんね。」

「そうなんだ。職場はもちろん、長い目で見れば、大所高所的な見地で見れば、同じ方向を向いている。しかし力を合わせたり、分業して成果を引き継ぐ時などには『その瞬間』に同じ方向を向いていることが大切だ。」

「なるほど。」

「他にも、職場で働く人々の方向性がずれてしまう要因は、日常に様々ある。」

「日常茶飯事ということですね。」

「そうなんだ。それを是正して、関係者を同じ方向を向かせることで、現場のパフォーマンスを上げることができるんだよ。」

「分かりました。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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