イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第17回

上級マネジャーの役割(戦略機能)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「MCSではマネジャーを現場マネジャーと上級マネジャーに分けているということでした。それでぼちぼち、各論を教えてもらいたくなりましてた。」

「各論だって?」

「上級マネジャーの役割とは何か、教えてもらいたいんです。」

「あれ、中川課長は現場マネジメントを検討することになっていたのではなかったか?上級マネジャーの役割を聞いてくるなんて、どういう風の吹き回しだ?」

「仰る通り、現場マネジメントを検討することになっています。だからこちらは後にしっかりお聞きすることにして、先に上級マネジャーについてお聞きしたいのです。そうしないと、こっちを聞きそびれるような気がして。」

「確かにそうだな。現場マネジャーが行うマネジメントを考える上で、上級マネジャーの仕事を知っておくことも非常に大切だ。とても良いことに気が付いたな。」

「お褒め頂いて、恐縮です。」

「おいおい、俺だって褒めることはあるんだ。もうそろそろ慣れても良さそうな頃じゃないか?」


上級マネジャーの5つの仕事

「上級マネジャーには、5つの仕事がある」

「そうなんですか?それは少ない感じがします。」

「これはMCSの観点でのことだ。ドラッカーや『戦略サファリ』や「マネジャーの仕事』などで有名なミンツバーグのような、より包括的な観点からするともっと多くの役割があるだろう。」

「これから言われることは、MCSの観点での話なので『他の本に書いてあったこととは違いますよ』と抗議するなという意味ですね。」

「まあ、そんなところだ。」

「具体的には、何なんですか?」

「基本となるのが、戦略に関わる『戦略創造・ブレークダウン』、『現場マネジャーへのマネジメント』、そして複数の現場部門や経理部門などの管理部門を上手く連携させる『部門間連携』だ。プラスして『マネジメント体制の再構築』を担うことになる。これらの背骨となるのが『財務成果マネジメント』だ。」

「財務成果マネジメントですか?飛び切り難しそうな名前ですね。詳しくは、後でお聞きしますよ。」

「うん。後でじっくり話すよ。」


戦略創造機能

「最初は戦略に関わる機能ですね。」

「そうだ。経営理念、基本的方針、経営戦略(基本戦略)などを決めることだ。」

「要は、会社とはどういう存在であるべきか?何を目指していくべきか?それをどうやって実現していくか?を決めていくということですね。」

「そういうことだ。例えばある家庭用洗剤を製造している中堅製造業者が、『みんなの生活を便利に楽しくする製品を提供する』という経営理念、『模倣的製品による価格競争には巻き込まれない』という基本的方針、そして『以上を実現するために今後は新製品の企画・開発に注力する』という経営戦略を描いているかもしれない。」

「そういう企業、ありそうですね。」


戦略ブレークダウン機能

「ただしこのような戦略は、作れば良いというものではない。」

「文書として存在するだけなら、まさに絵に描いた餅ですね。」

「そうなんだ。だから戦略を創造したら、現場部門が動けるようなものに落とし込んでいかなければならない。」

「マネジメントの上部構造と言っておられたことですね。」

「そうだ。さっき例に挙げた家庭用洗剤製造業者をもとに考えてみよう。新製品の企画・開発に注力するというのが、この会社の戦略だ。しかし実際にはこの会社は、今までは大手の模倣品ばかり作っていた。」

「だからこそ、そういう戦略になるのでしょうね。」

「そうだな。しかし、新製品企画・開発に乗り込むなど、言うは易しだが実行するのは困難だ。」

「本当にそうですね。」

「こういう場合、どうすれば良い?」

「この会社は今まで、新製品企画・開発を担当する部門を持っていなかったでしょう。だから設置しなければなりません。」

「そうだな。しかしこれも、口で言うほど簡単ではない。」

「既存の製造部門に企画・開発を担当する部署を設けるのか、専門に担当する部門を設置するかなどの判断が必要になりますね。」

「そうだ。専門担当部門を置くにしても、製造部門担当執行役員の配下とするか、営業部門担当執行役員の配下とするか、それとも社長直下に置くかなども決めなければならない。」

「それが決まったら、どんなセクションを置き、誰を充てるかも考えなければなりません。」

「プラスして、他の製造部門や製造部門との棲み分けも考えなければならない。大手企業の模倣品の場合には製造部門や製造部門が自分の判断でできたことを、オリジナル製品の場合にはやらせないということだからな。」

「確かに。こうやってみると、この部分に相当するマネジメント、相当大変そうですね。」

「うまくいかないと、どんなトラブルになるかも予想がつくだろう。」

「身震いしたくなる感じです。」

「だからこそ、抽象的な言葉で表現された戦略と、現場が具体的に動けるような働きかけに変えていかなければならないんだ。こちらの役割のことを、『戦略ブレークダウン機能」と呼ぶことにしよう。」

「以上の5つが、上級マネジャーの役割もしくは機能となる訳ですね。」




セミナー告知


本日お届けした記事に関連して、企業の成長段階に応じた危機をMCSの観点から分析し、対処法を考えるセミナーを実施します。


「ベンチャー企業の経営危機に対処する」

<セミナー概要>
日 時:7月23日(土)13:30~16:30(開場:13:00~)
会 場:イオンコンパス東京八重洲会議室 Room B
講 師:落藤伸夫(StrateCutions)

詳しくはStratecusitons のサイトからご確認下さい。


なお、InnovationS-i 会員・支援機関の皆さんは、InnovationS-iホームページ内のご案内ページからご確認下さい。
(ご案内ページへのアクセス方法)
・ InnovationS-iホームページにアクセスして下さい。
・ 上部「セミナー交流会」タブをクリックして下さい。
・ 「開催月で探す」で「7月」をクリックして下さい。
・ 「2016年7月のセミナー開催スケジュール」一覧表にある「7月23日(土)13:30~16:30『ベンチャー企業の経営危機に対処する』支援機関StrateCusitons 」をクリックして下さい。
→ ご案内ページ



 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

同じカテゴリのコラム

イノベーションズアイに掲載しませんか?

  • ビジネスパーソンが集まるSEO効果の高いメディアへの掲載
  • 商品・サービスが掲載できるbizDBでビジネスマッチング
  • 低価格で利用できるプレスリリース
  • 経済ジャーナリストによるインタビュー取材
  • 専門知識、ビジネス経験・考え方などのコラムを執筆

詳しくはこちら

お役立ちコンテンツ

  • 弁理士の著作権情報室

    弁理士の著作権情報室

    著作権など知的財産権の専門家である弁理士が、ビジネスや生活に役立つ、様々な著作権に関する情報をお伝えします。

  • 産学連携情報

    産学連携情報

    企業と大学の連携を推進する支援機関:一般社団法人産学連携推進協会が、産学連携に関する情報をお伝えします。

  • コンサルタント経営ノウハウ

    コンサルタント経営ノウハウ

    コーチ・コンサルタント起業して成功するノウハウのほか、テクニック、マインド、ナレッジなどを、3~5分間程度のTikTok動画でまとめています。

  • 補助金活用Q&A

    補助金活用Q&A

    ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金及び事業承継・引継ぎ補助金に関する内容を前提として回答しています。

  • M&Aに関するQ&A

    M&Aに関するQ&A

    M&Aを専門とする株式会社M&Aコンサルティング(イノベーションズアイ支援機関)が、M&Aについての基本的な内容をQ&A形式でお答えします。

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。