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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第15回

ベンチャー企業の経営危機に対処する(中編)発展段階説

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「一時は我が社期待のベンチャー企業だったモバイルクラフトは、なぜ、行き詰まってしまったのでしょう?」

「モバイルクラフト社は、新しい成長段階に突入したので、それに応じた新しい問題に遭遇したんだよ。」

「南カルフォルニア大学のラリー・グレイナー教授による説とのことですね。」

「そうだ。企業が発展するとは、ただ単に大きくなっていくことだけを意味している訳ではない。段階を踏みながら成長していっているんだ。」

「うーん、よく分かりません。」


発展段階を人間で考えてみる

「ある意味、人間も同じじゃないかと思うんだが。」

「どういう意味ですか?」

「人間は、赤ちゃんから大きくなって大人へと成長していく。頭が一つと胴体が一つ、手足が二本ずつという特徴が変化することはないが、だからと言って大人と同じものを食べさせたら赤ちゃんが成長できるかといういと、そうではない。」

「最初はミルクを飲ませなければなりませんね。」

「そうだ。だからと言って、ずっとミルクを飲ませれば良いという訳でもない。離乳食を食べさせなければならない時期が来る。」

「そして、大人と同じメニューでも大丈夫な時期に差し掛かるという訳ですね。」

「そういうことだ。」

「企業も同じように、段階を踏みながら成長していると仰りたい訳ですね。」

「それがグレイナー教授が示した『組織成長の5段階モデル』なんだよ。」


グレイナーの組織成長5段階モデル

「そう言われてみると、俄然、興味が湧いてきました。」

「急に言われたので俺は資料を持ってきていないが、ネットで調べればその図は出てくるだろう。ちょっとパソコンを貸してくれ。」

「どうぞ。」

「あったあった。丁度、7月23日に行われるセミナーの告知サイトだ。」

「少し地味なサイトですね。」

「仕方ないだろう、真面目なセミナーなんだろうから。」


「これが部長の言われる5段階モデルなんですね。」

「そうなんだ。この図では、左下から右上に向かって、企業は成長することになっている。横軸は『組織の年齢』、縦軸は『組織の規模』だ。」

「そして表が左から5つの場面に分かれていますね。それが5つの成長段階を表しているようですね。」


第1段階

「そうだ。最初は『創造性による成長』の段階だ。」

「立ち上げ時の企業は、人的資源も物的資源も、ついでに言えば資金も不足していますからね。創造的なアイディアだけが成長の原動力だという趣旨でしょうか?」

「そういう意味だと捉えてもらって、間違いないと思うよ。」

「すると『リーダーシップの危機』が訪れるという訳ですか?」

「そうなんだ。この頃はアイディアはあってもマネジメントはない。だから組織が求心力を失ってバラバラになってしまう可能性がある。」


第2段階

「それが解決できると、第2段階になる訳ですね。『指揮による成長』という。」

「そうだ。マネジメントがなかったところに何とかマネジメントを定着させていく、ということかな。」

「すると『自主性の危機』が訪れる訳ですね。」

「みんな、リーダーが『やれ』というなら、それを聞いていれば良いという雰囲気になってしまうのだろうな。それを解決するには、どうすれば良いんだろう?」


第3段階

「何でも上からの指揮があるという形ではなく、自分たちで判断してゆけとなるのでしょうね。」

「そうだ。それが第3段階『権限委譲による成長』だ。」

「この『コントロールの危機』って、何ですか?」

「権限委譲すると、上からのコントロールがしにくくなる。すると、勝手な判断が横行しないとも限らない。」

「そういうことなんですね。」


第4段階

「権限をもった部下が上手く意思決定できるようになるには、どうすれば良いのだろうか?」

「うーん。ここには『調整による成長』とありますね。当事者同士が調整するということですか?」

「そうだ。企業というのは、分業により大きな仕事を成し遂げようとする仕組みだ。お互いが勝手なことばかりをしていたら、パフォーマンスが落ちてしまう。」

「パフォーマンスを高めるために、お互いが、通すべきところは通すが、譲るところは譲る。そういう調整をするという意味ですね。」

「そういう理解で、いいだろう。」

「すると『形式主義の危機』が訪れるという訳ですか。」

「そう。いちいち真剣に議論するより、形式的にものごとを判断した方が、当事者としては楽だからな。」

「でも、それではせっかくのパフォーマンスがまた下がってしまいますね。」


第5段階

「それが克服できたのが、第5段階だ。」

「みんなが真剣に、協調を目指していくということですね。」

「そうなんだ。」

「この、『新たな危機』というのは、どういう危機なんですか?」

「それについては、グレイナー教授は定義していないんだ。グレイナー教授がこの説を作った頃には、協調できる組織に危機は顕在化していなかったのかも知れないな。」

「そういうことですか。一体、どんな危機が訪れるのでしょうね?」

「我が社も第5段階までいけたら、その危機を体感できるかも知れないぞ。」

「まずは第5段階までいけるように頑張れっていう、三上部長ー流の皮肉な励ましという訳ですね。」

「俺は何も、そんなことは言っていないぞ!」





<セミナー告知>


本日お届けした記事に関連して、企業の成長段階に応じた危機をMCSの観点から分析し、対処法を考えるセミナーを実施します。


「ベンチャー企業の経営危機に対処する」

<セミナー概要>
日 時:7月23日(土)13:30~16:30(開場:13:00~)
会 場:イオンコンパス東京八重洲会議室 Room B
講 師:落藤伸夫(StrateCutions)

詳しくはStratecusitons のサイトからご確認下さい。


なお、InnovationS-i 会員・支援機関の皆さんは、InnovationS-iホームページ内のご案内ページからご確認下さい。
(ご案内ページへのアクセス方法)
・ InnovationS-iホームページにアクセスして下さい。
・ 上部「セミナー交流会」タブをクリックして下さい。
・ 「開催月で探す」で「7月」をクリックして下さい。
・ 「2016年7月のセミナー開催スケジュール」一覧表にある「7月23日(土)13:30~16:30『ベンチャー企業の経営危機に対処する』支援機関StrateCusitons 」をクリックして下さい。
→ ご案内ページ

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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