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ドラッカーから起業を学ぶ

第23回

オペレーションが先か、マーケティングが先か

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「最近、困っていることがあります。」

「どのようなことですか?」

「オペレーションが先か、マーケティングが先かということです。」

「と言われると?」

「私は雑貨の通信販売を始めました。もともと海外の雑貨が大好きで集めたり、調べたりしていたので知識やノウハウがあります。それを生かしたいと思ったのです。」

「なるほど。」

「しかし、いざ始めてみると思ったようにお客様がついてくれる訳ではないですね。魅力ある商品を取り揃えたのに皆さんに関心を持ってもらえないのは、マーケティングが不足しているからだと痛感しています。」

「そうなんですか。」

「その一方で、今のようにあまり注文が来ない状況だから、システマチックに動かなくてもオペレーションが回っているとの自覚があります。お客様が来てくれるようになる前に、オペレーションも固めておかなければなりません。」

「そうかもしれませんね。」

「こう考えると、マーケティングに力を入れるか、それともオペレーションを先に取り掛かるべきか、迷ってしまうのです。」

「ドラッカーは、何と言っていると思いますか?」

「えっ、ドラッカーがマーケティングが先か、オペレーションが先かの問題に答えているのですか?」

「その質問にストレートに答えている訳ではありませんが、ドラッカーの考え方は探れると思います。」


『マネジメント』で論じられている順番・内容

「今回の問題は、マーケティングとオペレーションの順番の問題ですね。」

「そうです。」

「とすると、私は、ドラッカーが関連事項を論じた書物での順番や書き振りが、そのヒントになると思うのです。」

「なるほど。」

「この場合は『マネジメント』が良いのではないかと思います。」

「そうですね。マネジメントなら、マーケティングもオペレーションも両方とも含まれているはずですから。」

「では、調べてみましょう。マーケティングは、最初の方で論じられていますね。但し、意外とあまりスペースは割いてはありませんが。」

「そうですね。」

「一方でオペレーションはと。あれっ!オペレーションという章やセクションはないですよ。」

「そうなんです。それはどういう意味だと思いますか?」

「うーん。オペレーションという章やセクションがないという事実に驚いてしまって、その意味は全く分かりません。」


マネジャーにとっての「課題」を考える

「ドラッカーは、企業でオペレーションは大した問題ではないと考えたのでしょうか?」

「そうではないでしょうね。オペレーションこそ、企業活動の根幹に関わることです。なにしろ、それによって儲けが生まれる訳ですから。」

「仰る通りですね。しかし、そのことを『マネジメント』では論じられていない。それはどうしてなのでしょうか?」

「どうしてなのでしょうか?」

「それは、オペレーションがマネジメントの対象であって、マネジメントの一分野ではないからですよ。つまり、マネジャーにとっての『課題』そのものではないのです。」

「どういう意味ですか?」

「マネジャーにとって、マネジメントは自分自身でやらなければならないことです。一方でマネジメントには、その対象である人がいます。オペレーションはマネジメントの対象になる人たちがやるべき仕事です。言い換えれば、他の人に任せられることなんです。」

「なるほど。とすると、マネジャーはどのようにオペレーションに関わるのですか?」

「オペレーションを行うにあたって意思決定が求められる場合があります。意思決定はマネジャーの仕事です。だからドラッカーは、意思決定などについて『マネジメント』で詳細に説明しているのですよ。」

「確かに。」


オペレーションのマネジメントを行う

「とすると、あなたにとって、オペレーションをマネジメントするとはどういう意味になると思われますか?」

「オペレーションは、他の人に任せることもできる。そして現段階では問題は発生していないが、将来に備えなければならない。そういう状況で必要な意思決定を下しておくということですね。」

「そうですね。例えば?」

「適当な時期が来た時に素早く対応が打てるような意思決定ですね。」

「良い点に気が付かれました。具体的には、どのようなことですか?」

「もしITシステムを導入するなら何がふさわしいか、リサーチしておき、決めておくことができます。」

「そうですね。外注がふさわしいと考えられるなら、外注先を考えておくこともできるかもしれません。」

「システム導入と外注とを決めかねていれば、判断すべき時に必要となる基準を考えておくこともできますね。双方のメリット・デメリットを、自分の状況と照らし合わせて考えてみる訳です。」

「その調子です。そうやってみると、システム導入なり外注なりを判断すべきタイミングについても、考えておくこともできますね。」

「なるほど。1日の受注量が5件を超えたら考えると決めておくのですね。10件を超えたらパンクしそうですから。」


マネジャーとして行うべきことを行う

「こうやって考えてみると、マーケティングとオペレーション、どちらを優先するかの問題が、実は、マネジャーにとっては何が仕事なのかという問題であることに気が付きました。」

「それは良いことに気付かれましたね。マネジャーとして最も考えるべきことを考え、実行していくことが、事業成功のポイントになると、私は考えているほどです。」

「マネジャーとして、行うべき仕事を果たしていきたいと思います。マーケティング策を検討し、実行していきます。一方でオペレーションについては、どうマネジメントするか構想を練っておきます。」

「ぜひ、そうしてみてください。」

 

プロフィール

StrateCutions (ストラテキューションズ)
落藤 伸夫


(StrateCutions代表)ドラッカー学会会員
中小企業診断士を目指していた平成9年にドラッカーに出会って以来、ドラッカーの著書をいつも座右の銘にしてきました。MBAを取得し、コンサルタントとして活動するにあたっても、企業人が考え行動する基本はドラッカーにあると感じています。ドラッカーの教えは、時には哲学的に思えることがありますが、企業が永らく繁榮するとともに、社会にある人々が幸福になることを目指していると思います。お客さま、社会、そして自分自身の「三方良し」の構図を作り上げることにより起業の成功を目指すドラッカーの知恵を、お楽しみ下さい!

<著書>
『ドラッカー「マネジメント」のメッセージを読みとる』


Webサイト:StrateCutions

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