【群馬発 輝く】環境浄化研究所 放射線の革新技術、工業規模で実用化

掲載日:2018年4月12日(木)5:00

カテゴリ:[環境・エネルギー・エコ]

 ガンマ線などの放射線を素材に照射して分子をカットし、接ぎ木(グラフト)のように別の物質をつなげ、空気中の悪臭や水中の重金属を吸着できる「放射線グラフト重合技術」。

 この技術を世界で初めて工業規模で実用化するのに成功し、消臭商品から放射性物質の除染材料まで幅広い分野に応用させたのが放射線技術のベンチャー企業、環境浄化研究所(群馬県高崎市)の須郷高信社長だ。

 同社は、国立研究機関である日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の職員のベンチャー設立を支援する制度の第1号認定企業。高崎研究所(現・高崎量子応用研究所)内に、照射利用開発室長を務めていた須藤社長が研究者の立場でありながら1999年に設立した。

 須藤社長は、長寿命電池を実用化し、海水ウラン捕集技術の海洋実証実験を成功させるなどの実績の持ち主。海水からウランを捕集する新素材開発は反響を呼び、人気劇画「ゴルゴ13」の「原子養殖」というストーリーのモデルにもなったほどだ。

 ◆消臭から除染まで

 2001年9月に起きた米中枢同時テロ事件を契機に研究所のセキュリティー管理がより厳しくなったため、自由な環境でビジネスができるよう、同年12月に本社を移転し、完全に独立。それと同時に取り組んだのが、病院のカーテンや布団、おむつなどの消臭商品の開発だった。

 自身の入院経験がきっかけで「病室の悪臭を除くのは私の使命と感じた」と須郷社長。放射線グラフト重合技術を駆使した無臭商品を全国の病院に販売し、家庭用品にも進出した。名前を出せば誰もが知っている消臭剤への材料提供をはじめ、抗菌マスク、高機能衣料品、消臭スプレー、生ごみ処理施設の無臭化-。商品群は広がっていった。

 11年の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発の汚染水処理問題も大きな転機になった。

 米国やフランスの企業の技術に対し、須郷社長は「海水や川の水が入り込んだ汚染水への対処は無理」と直感。この年の8月には、全従業員に指示して汚染水処理の開発に向けた研究開発に着手した。

 「出番は必ず来る。日本人が解決しなければならない」

 そう思い続けながら、16年4月に、放射性セシウムなどの放射性物質を吸着させる繊維を巻いたフィルターで汚染水を浄化するシステムを本格稼働させた。

 除染材料は従来製品の400倍の吸着性能を発揮することが実証されており、同社は16年度の「環境貢献特別賞」(中小企業振興財団主催)を受賞した。

 ◆続々と新規ビジネス

 今年5月に千葉大学の西千葉キャンパスに完成する「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター」を拠点に、ヨウ素の高度利用を目指す産学の共同研究にも間接的に参画。ヨウ素の抽出などに当たる。

 米国の医療品メーカーからは「ヨウ素を使った新製品の開発依頼」も舞い込んだ。「営業活動をしているわけではないのに国内外の10社以上からオファーが寄せられている」という。

 こうした動きとともに、ネオジム磁石切削粉からのネオジム、ジスプロシウム、ホウ素の分離精製▽東南アジアでの銅精製後のカドミウムと六価クロムの採集▽中国の環境対策に絡んだ微小粒子状物質「PM2.5」とウイルス対策マスク原料の提供-など新規事業がめじろ押しだ。

 須郷社長は「チャレンジ精神は社会を変える」と意気込んでいる。(椎名高志)

                  ◇

【会社概要】環境浄化研究所

 ▽本社=群馬県高崎市八島町58-1 ウエスト・ワンビル4階 ((電)027・322・1911)

 ▽設立=1999年7月

 ▽資本金=8800万円

 ▽従業員=7人

 ▽売上高=4億円(2018年3月期)

 ▽事業内容=生活福祉関連材料と地球環境浄化材料の開発、製造および販売

                ■ □ ■

 □須郷高信社長

 ■誰もできないことをやるのが信念

 --環境浄化研究所とは、会社の名前としては珍しい

 「私は『放射線グラフト重合技術を応用した新素材の創製』をライフワークとして38年間過ごした研究者。会社を作っても他に誰もできないことをやるというのが信念であり、だから会社名も研究所とした」

 --ベンチャーとして、どう技術を生かしてきたのか

 「福島原発事故のときもそうだったが、ベンチャーの良さは社長の考え一つで変えられること。私の次の世代では大企業化を狙うのもいいが、今は種を作っている段階。いろいろな分野に手を出しているが、私の中ではみんな化学反応であり、つながっている」

 --独自の工場などは持っていないと聞いている

 「ウチは研究開発型企業。製品製造は『兄弟会社』と呼ぶ協力会社の工場を借りている。製品のレシピや仕様書はこちらが示し、その通りに作ってもらう。下請けということではなく兄弟会社と連帯責任を負うことで品質の安定化にもつながる」

 --兄弟会社は何社あり、どのようなメリットが考えられるのか

 「現在は5社。メリットとしてはよく指摘されるベンチャーにとって負担となる仕入れが不要になることが大きい。品質の安定化と申し上げたが、不良品が出ても受け入れなくて済む。いわゆる黒字倒産も防げるという点も挙げられるだろう」

 --将来へ向け考えていることは

 「今、特許の取得は年間で約20件を数えている。これまでの累計では300件を超えた。これからは一層、特許が世界を制することになると思う。そのためにもチャレンジすることは大切だ。社員を含めて、ずっとチャレンジャーでありたい」

                  ◇

【プロフィル】須郷高信

 すごう・たかのぶ 1965年日本原子力研究所入所、放射線化学の研究に従事。高崎研究所(現・高崎量子応用研究所)の照射利用開発室長だった99年、研究所内に「環境浄化研究所」を設立し、社長に就任。工学博士。これまで「文部科学大臣表彰」科学技術賞などを受賞。75歳。群馬県出身。

                ■ □ ■

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 消臭トリガースプレーや冷蔵庫用消臭剤、ペット用消臭ゲル、消臭アイロンスムーサー、消臭シートなど暮らしに密着した優れた消臭機能を持つ商品をGL(Good Life)消臭製品として販売、好調な売れ行きをみせている。

 従来の消臭剤では、「いい香り」で悪臭を覆いかぶせて悪臭を感じさせない「マスキング」という手法が中心だった。だが、GL製品では「放射線グラフト重合」で臭いの元を無臭の物質に変質させるのが特徴だ。

 「住みよい暮らしと元気な地球」を経営理念に掲げるだけあって、持ち込まれる相談もさまざまだ。汗などにより強い臭気が放たれる剣道の防具用消臭剤、中古車に染みこんだたばこなどの特有の臭いに対応した車専用消臭剤などきめ細かい商品開発も行われている。

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